育児休暇を取得し復職する際には、男女問わず育児と仕事の両立への不安が生じる。近年では従業員の復職をサポートすべく、ユニークな取り組みを実施する企業も増えてきた。 食材宅配サービスを手掛けるオイシックス・ラ・大地(以下、オイシックス)もその1つだ。同社は5月18日、「2022年度 復職式」を開催した。式には12名の復職者が参加。代表や復職経験のある社員からのメッセージに感化される場面もみられた。

  • 復職式の様子

大切なのは、事業へのフィードバックと、仕事と生活との両立

式冒頭では、同社 代表取締役 髙島宏平氏より祝辞が贈られた。髙島氏は「復職してくれてありがとう」と復職者へ感謝の意を表したうえで、復職にあたって大切にしてほしい2つの考え方について紹介した。

  • オイシックス・ラ・大地 代表取締役 髙島宏平氏

1つめは、「自身の経験を事業にフィードバックすること」。髙島氏は、復職者に対し「皆さんと同じような経験をされているお客さまも多い。(顧客にフィードバックするうえでは)皆さんが今感じている、つらかったこと、うれしかったことが重要。記憶はものすごい勢いで上書きされていくので、その都度感じたことをメモしておくとよい」と、育児経験が顧客理解にもつながると激励した。また、「これから育児に携わる後輩のことも考え、どのような環境をつくれば仕事がしやすいのか、その人たちならではの悩みや気まずさを忘れずに、業務に反映していただきたい」と、自身の経験を職場環境づくりにも役立ててほしいとした。

2つめは、「まずは仕事と生活の両立に注力すること」。髙島氏は気負わずに自分のペースで取り組んでいくことの重要性を訴えた。

「皆さんにやってほしいことは、仕事で早く結果を出すことではなく、生活と仕事を両立できるバランスをできるだけ身につけること。これまでの自分と復職後の自分を比較して、『あの頃のほうがバリューを出せていた』と思ってしまうこともあるかもしれないが、皆さんは立場もバリューの出し方も従来とは異なる。『100点ではなくとも、合格点であればまぁいいや』と自己肯定感を高めることが大事」(髙島氏)

続いて、同社 取締役 小﨑宏行氏より復職者1人1人に対して復職証書が授与された。証書には、復職者が所属する部署のメンバーからのメッセージも盛り込まれており、レシピ付き献立ミールキット「KitOisix(キットオイシックス)」と共に手渡された。

  • オイシックス・ラ・大地 取締役 小﨑宏行氏

経験者だからこそわかる、復職者が感じる悩み

オイシックスでは、これまでにも育児休暇を経験した多くの社員が復職してきた。育児において先輩となるパパ・ママ社員からは、復職者への激励と育児でのしくじりエピソード、好きな言葉を紹介する動画メッセージが送られた。

メッセージでは、「仕事と子育てを両立させようと気負いすぎて、常備菜のつくりおきなどに力を入れることにつかれてしまった。すべてやめると良い循環が生まれ始めた」「頑張りすぎないことを頑張る」など、“なんとかなる精神”で肩の力を抜いて取り組んでいくことの大切さを表した言葉が多くみられた。

式の最後では、復職者たちが挨拶するとともに復職への気持ちを表した漢字一文字を披露した。優先順位の「順」という漢字をあげた復職者は、約1年9カ月ぶりの仕事復帰になるという。「育休中は、優先順位を間違えないようにすることをテーマにしていたが、仕事においてもそうしたい。復職してからは、周りの社員を見て『もっとがんばらなきゃ』と思ってしまっていた。今回の復職式で代表や先輩パパ・ママの話を聞いて、ペースを見直したいと感じた」と話していた。

また、2回目の復職式だという社員は、「社歴が長くなり、過去の経験に頼ることが多くなっていたが、休んでいるあいだに会社や社会、お客様は大きく変化している。頭を真っ白にして、まずは変化を受け入れたい」と「白」という漢字をあげたうえで、「1回目の復職の際には、“仕事ハイ”になってしまい、仕事も家庭もまわらなくなってしまった。2回目は、『頑張らないことを頑張る』ことを意識していきたい」とした。