アニメや吹替、バラエティなどでも大活躍中の浪川大輔さんが、5月18日に8thシングル『鼓動』をKiramuneレーベルよりリリース!
”鼓動” をテーマにした収録曲3曲の制作秘話のほか、自身が音楽から受けた影響など音楽活動についてじっくりお聞きしました。
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――昨年リリースされたアーティスト活動10周年記念のフルアルバム後、初のシングルとなりますね。
浪川 昨年の10周年のタイミングでは、東京でライブをすることが叶わなかったんです。今回、東京でライブを開催することが決まったので「それを踏まえて曲を作らせてもらえませんか」と提案させていただいたところからスタートしました。
――今作のコンセプトはどんなところから着想を得たのでしょうか?
浪川 僕はもともと、ドキュメンタリーや人が努力しているところを見るのは好きなのですが、自分が苦労している姿を見せるのはなんだか照れくさくて好きじゃなくて。僕の中でのエンターテインメントって楽しければそれでいいものなので、その過程は必要ないと考えているんです。
だけど、ふと「 ”心臓” って、意識がある時も寝ている時も、ずっと一生懸命動いていてすごいな」と思ったんです……いやいや、ここ笑うところじゃないよ(笑)。何か新しいことを始める時、一歩踏み出す勇気が欲しい時、もう何もかもどうでもよくなって自暴自棄な気分の時――どんな時でも心臓は変わらず動いているんですよね。
そんな、人を突き動かす力の源みたいなところを歌ってみたいと思って作ったのが、リード曲の『鼓動』なんです。僕が伝えたいことを書いたメモをお渡しして、宮崎誠さんに作ってもらいました。
――シングルに収録された他の2曲のイメージも伺えますでしょうか。まず、2曲目の『カウンターブロウ』。
浪川 僕自身、否定的なテイストの曲はあまり好きではないので、今まで歌ってこなかったんですけれど、最近の曲って結構強めの歌詞が印象的だったりするので挑戦してみました。
当初は登場人物3人くらいが言い合いしているような曲にできないかと思ったんですけど、歌唱で差をつけるのが難しく、断念しました。
ボクシングになぞらえた歌詞は、ミズノゲンキさんのアイディアなんですけど、「もう何も考えられないし、前にも進めないという状況に陥っても、心臓だけはいつものように動いて前に進もうとしている」ということを歌っています。「自分はもう動けないくらいなのに、心臓だけは、その鼓動だけは、前に進もうとしているって、何かカッコよくない?」とディレクターにお話をしたら、最初は共感してもらえなかったんですけど(笑)。レコーディングは、ギリギリまで歌詞を修正したりして苦戦しました。
――3曲目の『スパイス』は一転スローなテンポの楽曲です。
浪川 ”鼓動” って、常にギュッと張りつめていると苦しくなっちゃうなと思って、リラックスできる曲を佐伯youthKさんに作ってもらいました。ちょっと風が吹いたとか、本当に些細なことでも人生のスパイスにできたら、というイメージです。
――浪川さんは最近、人生のスパイスになるような出来事はありましたか?
浪川 やっぱり、ライブかな? 今回のライブはいろんな挑戦をさせてもらったので、スパイスどころかスパイシーすぎたんですけれど「やっぱり仲間がいるっていいな」とか「観てくれる方がいるからこそ、あの空気感ができるんだな」とか、改めて感じて、そういう意味で刺激的でした。
――レコーディング時に苦労した点などはありましたか。
浪川 実は曲のキーが以前よりちょっとずつ上がっていて、さすがに上げすぎじゃないかと相談して、全体的に半音下げてもらったものもあります。でも、自分の限界のところで歌っていることに変わりはなく……どの曲も大変でした。限界キーを使っているので、とくにファルセットと地声との間が苦労します。頭をクラクラさせながら歌いました(笑)。
――MVは、ノンストレスバンドの皆さんと躍動感あふれる映像になっていますね。撮影中の印象的なエピソードなどがありましたら教えてください。
浪川 ライブが近いこともありましたし、ノンストレスのメンバーと一緒のほうが力強さが出るかなと。あと、オーソドックスなバンドスタイルの撮影って、最近はやってなかったですし。
映像のイメージは、心臓って普通は見えないんですが、いつだってめっちゃ頑張って動いているということを、綺麗には表現したくないなというとことから始まりました。それに、僕も含めてバンドメンバーもみんないい歳ですし、男臭い感じでもいいのかなって。
監督とは、何度も打ち合わせのやり取りをさせていただいて……予算的な問題もあって、なかなか最初にイメージしていたような内容は難しかったんですけれど、ものを作る時ってだいたいそうですからね。最初にこういう風にやりたいなと思っても、いろんな人の意見を聞いたり相談したりして成り立っていくものなので。出来上がった映像には満足していますし、後悔は全くないです。
――7枚目のシングル『wonderful days』の制作のあたりからコロナ禍に突入し、ライブの延期なども経験した上で、ようやく有観客ライブを開催することができるようになってきました。そうした状況下において、音楽にどのような力があるなと感じていますか?
浪川 コロナ禍で世界中の人がいろんなことを変えざるをえなかった中で、やっぱり”音楽は強い”という思いは変わらなかったです。むしろその力は、より強くなったと感じるくらいです。
音楽って大昔から現在までどんな状況になっても廃れない、圧倒的なパワーを持っているんです。僕はほんの少しその力をお借りして、何か伝えることができたらと思っています。
――浪川さんご自身にはどんな影響がありましたか?
浪川 音楽には人を変える力もあるということを、身をもって知りました。きっと音楽活動をしていなかったとしても、リスナーとして音楽を聴いて励まされたり心が柔らかくなったりしながら、今とはまた違う自分がいたと思うんです。
だけど、こうやって自分自身として歌う機会を与えてもらって、音楽活動での経験でずいぶん自分も変わったと思いますし、頑張ることができるエネルギーの源ができたと感じています。
中年を迎えて、こんなに踊ったり歌ったりするとは思ってなかったですもん(笑)。気持ちはともかく、身体はしんどいですから。ライブの後も達成感というよりは、「あの時ああすればよかった」とふと顧みたり。
でもそれは後悔じゃなくて「次に生かそう」という気持ちが大きくて。やっぱり観てくださる方の存在があってこそ頑張れるので、応援してくださる皆さんにはとても感謝しています。
浪川大輔(なみかわ だいすけ)
4月2日生まれ。ステイラック所属。主な出演作は、『LUPIN the Third』シリーズ(石川五ェ門)、『ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン』(ナルシソ・アナスイ)、『A-Studio+』(ナレーション)ほか。また、『スター・ウォーズ』シリーズ(アナキン・スカイウォーカー)など吹替も多数。