[写真]=アシックス

 東京五輪出場を経て、ベルギーのシント・トロインデンへ移籍。リーグ戦25試合7得点1アシストを記録し、3月には追加招集という形ながら初のA代表入り。順風満帆なシーズンを歩んでいるように思えるが、「私生活もサッカーも苦しみましたね」という。“ビースト”林大地に激動のシーズンを振り返ってもらった。

取材・文=土屋雅史
取材協力=アシックス

◆今季7得点は「率直に言えば物足りない」

――久々に日本でゆっくりされている時間はいかがですか?
林 改めて日本は素晴らしい国だなと思います。ご飯も美味しいですし、人も温かいですし、何より今は実家の温かさを感じています。

――先日はルヴァンカップの試合観戦で、かつての本拠地・駅前不動産スタジアムに行かれていましたね。
林 鳥栖は良い街ですし、僕が初めてプロサッカー選手になったのもサガン鳥栖なので、初めてあのスタジアムでプレーした時のことも凄く覚えています。「素晴らしいところだな」と改めて思いましたね。ああやって帰る場所を作ってくれて、温かい拍手で迎え入れてくれたことは、自分にとって凄く嬉しかったです。

――鳥栖のサポーターは林選手のことが大好きですね。
林 そうだと嬉しいですね。自分にとっても、サガン鳥栖は特別で大好きなクラブなので、良い関係でいられたらいいなと思います。

――シント・トロイデンでのお話も聞かせてください。昨季ベルギーで戦ってみての率直な感想を教えてください。
林 1年を通していろいろなことを経験して、僕なりにいろいろな壁にぶつかり、自分なりに解決しようとして、もがき苦しんだシーズンでした。

――リーグ戦では25試合に出場して7ゴールでした。この数字に関してはどう捉えていますか?
林 率直に言えば物足りないですね。プロサッカー選手になってから、まだシーズンを通して二桁得点を取ったことがないので、ベルギーに挑戦した1年目のシーズンでそれが達成できれば自信にもなったでしょうし、もっといろいろな方にも自分を見てもらうこともできたと思うので、そういう面ではまだまだ物足りないです。

――チームメイトの原大智選手は、林選手より1点多い8ゴールを挙げています。そこに対する想いはいかがでしょうか?
林 やはりチーム内では自分が一番点を取りたかったです。ただ、大智とは凄く良い関係でプレーできていたので、助け合いながら、お互いに1年をケガもなくやり切れたのは良かったかなと思います。

――ヨーロッパのクラブで日本人2トップを組むことに関しては、どういう想いがありますか?
林 日本人の2トップだからこそ、共通理解も凄くありましたね。コミュニケーションも他の選手に比べたら何十倍も取れるので、自分も「こうしたい」と言えますし、大智もそういうことを言ってくれて、そういう面ではお互いに助け合いながら、良い意味で点を取り合えたのは、良いモチベーションになっていました。

――先ほど「自分なりに解決しようとして、もがき苦しんだシーズン」とおっしゃっていましたが、一番もがき苦しんだ部分はどういうところでしたか?
林 すべてにおいてですね。生活も苦しみましたし、言葉も通じない、食事も全然違うという面で、今までなかった小さなストレスをいろいろなところで感じました。日本にいればストレスを解消する方法を自分なりに見つけて、いろいろと行動を起こせますが、ベルギーではどこに行けばいいのかもわからないですし、それでもサッカーがうまく行っていればいいのですが、最初の1点を取った後はなかなか結果も出なくて、試合にも出たり出なかったりという状況だったので、そういう面で私生活もサッカーも苦しみましたね。

――そういう環境の中で、人としての幅が広がった感覚はありますか?
林 うーん、自分で言うのもあれですけど、日本に帰った時に会った方々から、ちょっとでも「変わったな」と思ってもらえれば、自分は嬉しいですね。

――先日のルヴァンカップの試合前の挨拶と1年前の移籍直前の挨拶は、良い意味で全然変わっていなくてほんわかしました。
林 「喋らん方がいいね」ってよく言われますね(笑)。鳥栖のサポーターの方々には見抜かれています(笑)。

――そうするとサッカー面より、生活面の難しさの方が大きい1年でしたか?
林 同じくらいだと思います。やっぱりすべてを1人でやらないといけないですし、そういう面では本当に両方苦労したまま終わったなという感じです。

――チームの共用語は英語ですか?
林 英語です。でも、僕の住んでいるところは英語とオランダ語を使う地域ですし、フランス語を使う選手もいますね。

――少し向こうの言葉が喋れるようになったりはしましたか?
林 いえ、もう日本語だけです(笑)。

――そうすると、チームに日本人の選手が多いことはプラスになりましたか?
林 そうですね。わからないことは日本人の選手に聞けば理解できますし、僕はわからないことを全部ダンさん(シュミット・ダニエル選手)に聞いていました。

――地理的にはドイツやオランダに近い地域にお住まいですが、プライベートでの観光は行かれましたか?
林 ドイツとオランダ、フランスにも行きました。電車なら1時間半ぐらいでパリに着きますし、「せっかくこっちにいるなら、行ってみたいな!」と思って、いろいろと行きました。

――電車でパリまで1時間半、というフレーズはなんかカッコいいですね(笑)。
林 新幹線みたいな電車に乗ると、1時間半なんですよね。でも、やっぱり日本が一番いいです(笑)。

◆改めて決意「A代表のピッチに立ちたい」

――先日、日本代表にも追加招集という形で初めて選出されました。率直な感想を教えてください。
林 本当に選ばれるまでは「1つ上の世界の話なんじゃないかな」と思いながらも、どこかで「いつかは自分も」とずっと考えていたので、いろいろなタイミングも重なって、森保監督に「呼びたい」と言っていただけて、追加招集ですけど呼んでいただけたことは凄く嬉しかったのと、チャンスが回ってくるようにどれだけ自分をアピールできるかということを考えていました。

――今回の代表活動で得られた部分はどういうところですか?
林 試合に出られなかったのは実力が足りなかったと素直に受け止めるべきですし、使おうと思われなかったことは事実だと思いますが、その1回で終わっているようでは全然話にならないので、「次も呼んで、試合に使いたいな」と森保監督に思ってもらえるように、自分のチームでも代表活動でも練習からアピールしたいですし、「A代表のピッチに立ちたい」という想いは、改めて強くなりました。W杯出場が決まる瞬間にも立ち会わせてもらえたので、次は自分が中心でやれるようにと思っています。

――ちなみに今のニックネームの“ビースト”はいつ頃から呼ばれ始めたのですか?
林 大学2年ぐらいですかね。相手チームの選手が『ビースト』と言っていて、それが広まっていった感じでした。

――ご自身では気に入っていますか?
林 そうですね。嫌な想いは全然していないです。覚えてもらいやすいので。

――個人的に林選手の高校時代は右ウイングの印象が強いのですが、そこから自分の中でいろいろ考えながら、今のプレースタイルを確立していったイメージですか?
林 高校の時はサイドをやっていましたが、あまり上手い選手というわけではなくて、今みたいにゴリゴリ行くタイプでした。大学生になってセンターFWになり、身体もさらに大きくなったので、より目立つ選手になったのかなと思います。

――Jリーガーになられてから、海外に行って、日本代表に選ばれるまでの時間が短かったので、『シンデレラストーリー』と言われることが多いと思いますが、そのあたりをご自身はどう捉えてらっしゃいますか?
林 良い意味でまったく気にしていないというか、「『シンデレラストーリー』とか、いろいろな言い方で言われているなあ」というぐらいの感じで、自分は好きな仲間とサッカーをしてきただけです。

――林選手のプレーからは常に野心を感じるのですが、同じような野心を持っている中学生や高校生に伝えたいことはありますか?
林 やっぱり一番は、やるのもやらないのも本当に自分次第だと思います。人がどうこう言うことも気にならないぐらいに、自分のことに夢中になって努力している姿を見れば、応援してくれている人はそれが一番嬉しいはずですし、特に中学生や高校生には、ぜひ自分のために一生懸命やってほしいですね。

◆ピンクのような派手なスパイクは好き

――アシックスのスパイクの話も聞かせてください。今、履いてらっしゃる『DS LIGHT ACROS PRO』ですが、海外のグラウンドでの使いやすさはいかがですか?
林 海外のグラウンドは日本に比べたら良くないですが、悪いグラウンド状況の中でも耐久性があるので、激しく潰れてしまうようなことはまったくないですし、凄く自分の足を支えてもらっていますね、これを履いて常に戦っています。

――今度は新色としてピンクが出るとのことですが、それを実際に見た感想はいかがですか?
林 いいと思います。アシックスだとこれまでは白ベースや黒ベースが多かった中で、こういうピンクのような派手なスパイクは自分も好きなので、良いデザインだなと思います。

――高校時代から緑やオレンジのスパイクも履いてらっしゃいましたね。
林 はい。派手なスパイクは好きなので、ピンクも最高です!

――前回サッカーキングのインタビューがあった時に、アシックスの宣伝部長の役割も期待されていましたが、その後は部長としての活動はいかがですか?
林 まだ前の白い『DS LIGHT ACROS』を履いていた時で、凄く大きな箱で送ってもらったのですが、チームメイトも興味津々で見に来ていました(笑)。

――活動は進行中ということでいいですか?
林 まだ買って履いている選手はいないので、次は誰かに買わせます(笑)。