テレビのADさんに聞く。「なぜ今、その仕事を選んだの?」

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テレビがいろいろと言われています。「若者のテレビ離れ」「コンプライアンス」「番組はどれも似たり寄ったり」……。そんな中、今、各局の深夜番組がチャレンジをしています。それらをチェックしてみると、「視聴率だけに縛られない!」「制作者が本当に面白いと思う番組を視聴者に届けよう!」そんな姿勢が見て取れます。テレビが新たな一歩を踏み出そうとしているのかもしれません。



そこで、今回は若いテレビスタッフにアンケートを取ってみました。「今、なぜテレビの仕事を選んだの?」この疑問にAD(アシスタントディレクター)さんたちが答えてくれました。彼らは今のテレビ、未来のテレビをどう思っているのでしょうか?

なぜ今、テレビの仕事を選んだの?

まずはこの質問から。以下のような回答が――。



「自分の人生に影響を与えたのがテレビ。小学校の時、当時流行っていたドラマ『ごくせん』『野ブタ。をプロデュース』ごっこをしていた。テレビが人に与える影響の大きさを感じて、自分でもエンタメを作りたいと思った」(20代・男性)

「もともと映像業界志望で、まず業界のことを学ぶならテレビ業界に入って基礎を学ぼうと思った」(20代・女性)

「芸能人が好きな気持ちだけでテレビの仕事を選んだ。お父さんがテレビ好きで、私も小さい頃から『めちゃイケ』『アメトーーク!』など大好きだった」(20代・女性)




アンケートを取った全員が「テレビが好きだから」という理由で働いていました。ま、当然といえば当然かもしれません。中には将来、映画やドラマをやりたいが今はバラエティーで修行中という人もいましたが、ジャンルにこだわらずテレビの世界に興味があって入ってきたようです。そして、みなさん、子どもの頃からテレビの影響を強く受けていました。

テレビの仕事で面白いと感じるところは?

続いての質問に対しては、こんな回答が――。



「初めて『あの大物芸人が自分のつくったVTRで笑った』と思った時は、収録中にも関わらず鳥肌が止まらなかった」(20代・男性)

「編集が面白い。まだまだ未熟だが、テロップの色や画面の作り方などに自分らしさを入れられるのが面白い」(20代・女性)

「自分の関わった番組が放送され、世間から反響があった時」(20代・男性)

「芸能人やスゴイ人に会えるところ」(20代・女性)

「大きな仕事を乗り越えた時に達成感がある。99のしんどいことがあっても1つの嬉しいことがあれば頑張ろうと思える」(20代・女性)




これに関してはクリエイトする面白さをあげる人が大半でした。それが視聴者に響いて、好評だった時は「やった!」とガッツポーズ。誰かに喜んでもらえる――これはどんな仕事にも共通して言える喜びでしょう。ただ、子どもの頃から憧れていた人と話せて、その人に自分のつくったものを評価してもらえる経験は確かに貴重かも。

ここは改善した方がよいと感じるところは?

主な回答は以下の通り――。



「制作過程でまだまだ昔の気質を感じる部分はある。もっと1年目のスタッフの意見を吸い上げてもいいと思う」(20代・男性)

「よく聞くドロドロした世界を想像していたが、そうでもなかった。ちゃんと休みもとれる」(20代・女性)

「やっぱりコンプライアンスが厳しすぎるというのはある。たまに『これもダメなんだ~』とビックリすることも」(20代・女性)

「テレビは(ネットに比べて)便利さが足りない」(20代・男性)




ひと昔前まではADと言えばキツイ仕事の代表のように言われていましたが、アンケートでは「ちゃんと休みもとれる」という声がありました。とはいえ、ADさんたちは日々忙しく働いているのが現状かと思います。

同時にクリエーションにおける不自由さも感じているようで、近年強く求められている「コンプライアンス(法令遵守や社会的規範を守る)」に細心の注意を払っているのがうかがえます。

YouTubeについてはどう思ってるの? YouTubeの仕事もしてる?

「YouTubeはやってみたい! ここ数年でADの子がYouTubeをやってたりするので気になっている」(20代・女性)

「YouTubeでCМ動画をつくったことがあります」(20代・女性)

「テレビはいろんなルールの中で作らないといけないが、スポーツと同じでルールがあるので面白い。もちろん、面白いYouTubeがあるのは分かっているが、僕は制限の多いテレビで作りたい」(20代・男性)

「テレビとYouTubeを比較して“オワコン”と言われることもあるが、まだまだテレビの影響力は大きいと思う」(20代・男性)




ADスタッフは若い人が多いのでYouTubeに拒否感はない印象でした。が、自分が制作するならテレビを選びたいという声は多かったです。その理由が影響力。影響力が大きい以上、コンプライアンス・放送枠などのルールが多いのも納得という理解のようです。

それとは無関係に、単に趣味のような動画をYouTubeにあげてみたいという人もいて、そのあたりは世代の感覚なんでしょうね。

今、気になる深夜番組はある?

深夜ドラマや根強く『ゴッドタン』などの人気バラエティーがあがる中、ちょっと気になる番組がありました。2021年から放送されている『ここにタイトルを入力』(フジ系)です。この番組に若いスタッフが注目している理由として――



「スタッフが楽しんで番組をつくっている感じが伝わってくる」(20代・男性)

「これ面白くね? みたいな会話から番組にしちゃった安易な番組と思わせて、じつはとても凝ったつくりをしている」(20代・女性)



スタッフが面白がってつくっているか、しっかり練り込んでいるのか、そのあたりに刺激をもらっている様子。「まだまだ考えれば、いくらでも新しい番組はつくれるのだと思った」とも答えています。どうやら深夜帯から新しいテレビの価値が生まれつつあるのはホントかも。

将来こんなテレビ番組をやってみたい! と思ってるものがあれば教えて

「明日この番組の話を友達としたい! と思える番組をつくりたい」

「面白いだけじゃない番組。上手く言えないけど、人の心を動かすような」

「大阪のおばちゃんがMCの情報バラエティー」

「日本中の誰もが知るような長寿番組を立ち上げたい」

「新しい賞レースを立ち上げたい」

「攻めたゴリゴリのお笑い深夜番組」……etc



今回ADのみなさんの回答を集めて感じたのは、「テレビに憧れを持って入ってきている」という点でした。同時に、昨今のテレビに対する厳しい声にも十分に耳を傾けており、決して頑なになっているわけでもない、とも感じました。そもそもネットやスマホに敵対意識などない印象です。テレビの特性を生かして、新しい可能性を見つけたい、といった感じ。



いい意味で気負いのない世代がテレビをつくり始めています。これまた、いい意味で、今の若者はオタク気質なので、放送枠の条件や指標の多様化でとんでもなく創りこんだコンテンツなども誕生しそう――そんな予感もしました。ここへ来てテレビがまた面白くなっています。



【文:鈴木 しげき】



執筆者プロフィール

放送作家として『ダウンタウンDX』『志村けんのバカ殿様』などを担当。また脚本家として映画『ブルーハーツが聴こえる』連ドラ『黒猫、ときどき花屋』などを執筆。放送作家&ライター集団『リーゼント』主宰。