老後の生活を支える公的年金、いくら受給できるか知っていますか? 共働き世帯と専業主婦世帯では、年金額にどのくらい差があるのか気になる人は多いでしょう。そこで、平均的な年収で、共働きの場合と専業主婦の場合の年金額を比較してみました。さらに、年金が不足する場合の資金作りの方法などもご紹介します。

  • 共働き世帯と専業主婦世帯、もらえる年金額はどれくらい違う?

■共働き世帯と専業主婦世帯の年金額の比較

公的年金は、20歳から60歳までのすべての人が加入する国民年金(基礎年金)と会社員や公務員が加入する厚生年金の二つがあります。厚生年金の加入者は同時に第2号被保険者として国民年金にも加入していることになるので、老後は老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金を受給できます。一方、自営業者や専業主婦などは老齢基礎年金のみとなるので、将来受け取ることができる年金額に差が出ます。

共働き世帯と専業主婦世帯の年金額を比較してみましょう。

●共働き世帯

夫、妻ともに平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43.9 万円)で 40 年間就業

●専業主婦世帯

夫:平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43.9 万円)で 40 年間就業
妻:その期間すべて専業主婦

専業主婦世帯の基準は、厚生労働省「令和4年度の年金額改定について」を参考にしています。

月額で約9万円の差がつきました。年間にするとおよそ108万円の差です。

この例は、専業主婦世帯では妻がずっと専業主婦だった場合、共働き世帯では夫婦ともに平均的な収入で算出しているので、極端な例とも言えます。専業主婦である期間が限られている場合、共働きでも一方の収入が低い場合などは、ここまでの差にはなりません。ただ、加入している年金の種類によって受給額に違いが出てくることがお分かりいただけたと思います。

■老後資金を増やす方法

主に老齢基礎年金しか受給できない人に向けて、老後の資金を増やす方法をご紹介します。

*付加年金で年金額を増やす

付加年金は国民年金の第1号保険者(自営業者など)に認められている老齢基礎年金の上乗せ制度です。国民年金の保険料に月額400円を上乗せして納付すると、老齢基礎年金に「200円×付加保険料を納付した月数」分が上乗せされて支給されます。

20年間付加保険料を払った例を見てみましょう。

<支払った付加保険料> 400円×240月=9万6,000円

<上乗せされる年金額> 200円×240月=4万8,000円

2年で保険料の元がとれます。これに対し、老齢基礎年金に4万8,000円上乗せされた金額が生涯受け取れます。

ただし、専業主婦は国民年金の第3号被保険者であるため、付加保険料を納めることはできません。

*繰り下げ受給で年金額を増やす

年金の受給開始時期を繰り下げると年金額が増額され、その増額は生涯にわたって続きます。 年金制度改正によって、繰り下げられる年齢は75歳まで拡大しました。1ヵ月の繰り下げで0.7%分増額され、最大(75歳まで繰り下げた場合)で84%年金額が増額されます。

繰り下げ受給にはいくつかの注意点があります。老齢厚生年金を繰り下げると「加給年金(扶養している65歳未満の配偶者がいると加算される)」が、年齢要件から外れて受給できなくなる場合があります。他にも、在職老齢年金によって年金が支給停止になっていると、その支給停止となった部分は繰り下げ受給をしても増額の対象にはなりません。そのため支給停止になる金額が多いほど繰り下げによる増額効果は小さくなります。さらに、繰り下げによる損益分岐年齢も考える必要があります。75歳まで繰り下げた場合は86歳以上生きないと損をしてしまいます。

つまり、これらの注意点に当てはまらない専業主婦、また、女性は男性より平均的に長生きをするので、繰り下げ受給をするなら、専業主婦である妻の年金を繰り下げるとよいでしょう。繰り下げている間は夫の年金で生活をして、妻の年金は可能な限り繰り下げておけば、夫が亡くなった後の年金額の減少を軽減できます。

*iDeCo、つみたてNISAで老後資金を作る

iDeCo(個人型確定拠出年金)やつみたてNISAで自分年金を作っておけば、公的年金の不足を補えます。

iDeCoは掛金が全額所得控除、運用益が非課税、受取時の税制優遇と3つのメリットがあります。ただ、所得がない専業主婦などは、所得控除のメリットがないことは留意しておきましょう。つみたてNISAは少額から分散投資ができる投資信託を長期間積み立てることを目的とした非課税制度です。毎年40万円を上限として、最長20年間非課税となります。原則60歳まで引き出せないiDeCoと違って、いつでも解約ができ、また、口座管理手数料もかからないので、気軽に始めるならつみたてNISAがよいでしょう。

■まとめ

会社員などが加入する厚生年金に加入できれば、将来、老齢基礎年金に上乗せして老齢厚生年金が受け取れます。この厚生年金に加入できる要件が緩和され、パートやアルバイトなど、短期で働く人も加入しやすくなります。そのため、年金を増やすためには、厚生年金に加入するのが手っ取り早いとも言えます。

しかし皆が皆、厚生年金に加入できるわけではありません。厚生年金の加入は一つの選択肢であり、それ以外の老後資金を増やす方法を今回ご紹介しました。有利な制度を利用したり、貯蓄や投資で老後資金を作ったり、方法はいろいろあります。老後の資金作りは時間が一番の味方となるので、早めに準備を始めるといいでしょう。