JR九州のクルーズトレイン「ななつ星 in 九州」が、2022年10月で運行開始9周年を迎える。これに合わせ、10月から「ななつ星 in 九州」第2章として新たな旅が開始されることとなり、JR九州はその詳細を4月8日に発表した。

  • 「ななつ星 in 九州」第2章の詳細が報道関係者らに説明された

同日、都内で報道関係者向けに新商品発表会も実施。「ななつ星 in 九州」の新クルーズコースや車両リニューアル内容、第2章のテーマについて説明の機会が設けられた。

■「100年をこえる物語をつなぐ」ため、車両を一部リニューアル

発表会の冒頭、JR九州取締役常務執行役員・鉄道事業本部長の福永嘉之氏が挨拶。福永氏によれば、九州の文化・歴史・食を世界に発信するべく、2013年10月から走り続けてきた「ななつ星 in 九州」は、これまでに約1万7,000名の利用があったという。首都圏から訪れる人が多いものの、日本の各地、さらには欧米を含む世界各国から「ななつ星」に乗車する人も。コンデナスト社が発行するトラベルマガジン「コンデナスト・トラベラー」の読者投票において、昨年の列車部門で世界第1位に選ばれたことも紹介された。

とはいえ、「ななつ星」の良さを継承しつつ、さらに進化を続ける必要があるのではないかと福永氏。「そういった考えにもとづき、本日は、『ななつ星』の新しい商品、第2章をご紹介したいと思います」とコメントした。

続いてJR九州クルーズトレイン本部次長の小川聡子氏が、「ななつ星 in 九州」第2章(新商品)について紹介。第2章のテーマは「100年をこえる物語をつなぐ。」とのこと。九州に長年受け継がれてきた物語や、ここから始まる物語を次の世代へつなぐ。豊かな未来を持続させる。次の世代のこどもたちへと乗り継がれ、語り継がれる時代を越えた列車に。そして、利用者や地域の関係者らが長年かけて紡いできた物語を「ななつ星 in 九州」によって汲み、織物のように美しい柄を描いていきたいとの思いが込められた。

  • 「多くの方々と知恵を絞りながら、この列車を作ってまいりました」と福永氏

  • 「ななつ星 in 九州」第2章について発表したクルーズトレイン本部の小川氏

  • 動画による「ななつ星 in 九州」の活躍の紹介も

リニューアルにあたり、クルーズコースを一新。乗車定員は従来の14室30名から10室20名に縮小されるが、利用者1人1人に深く寄り添い、さまざまな出会いを感じられる環境を準備するという。それにともない、車両の一部をリニューアルすることも発表された。車両のリニューアルに関しては、デザインを担当したドーンデザイン研究所代表の水戸岡鋭治氏が説明を行った。

「ななつ星 in 九州」の車両リニューアルとして、サロン、茶室、ギャラリーショップ、バーラウンジの4点が挙げられた。2号車はこれまで、食事など楽しむ場として使用してきたが、リニューアル後の2号車はサロンに生まれ変わる。食事の前後に過ごす場所として、水戸岡氏が知る限りの贅沢な空間をめざし、進めているとのこと。なお、ダイニング空間は1号車に集約される。

  • 水戸岡鋭治氏が車両リニューアルについて説明

  • 2号車サロンのイメージ(Design&Illustration by Eiji Mitooka + Don Design Associates)

2号車には本格的な茶室もつくられる。1,300mm×1,500mmの小さな茶室で、いすを用いた立礼式となる。亭主1人に対し、利用者は最大2~3名入り、クルーや茶師による本格的なお茶を楽しめる。そのために現在、クルーはお茶を勉強しているという。「お茶は非常に難しいので、最後は心で淹れるものですから、技ではない。でも技がちゃんとしていなければ心は表現できません。徹底して技を鍛えて、最後に気持ちを乗せていく。そういう風な形でお茶が出せれば」とのこと。

水戸岡氏いわく、もともとお茶には、クリエイティブにしても良い、誰も考えていないことを持ち込んでも良い世界があったという。「懐かしいお茶の世界と、いまだかつてない新しい世界が組み合わさるようなお茶の世界を演出できたら素晴らしいと思います」とのことだった。

  • 2号車、茶室(画像右)のイメージ(Design&Illustration by Eiji Mitooka + Don Design Associates)

3号車には、新たにギャラリーショップを導入する。列車の中を街並みと見立てたとき、レストランがあればショップもあると水戸岡氏。そのため、車内で本格的に買い物をしたり、商品を展示したりするスペースとして、「ななつ星 in 九州」にふさわしいショップをデザインしたという。今後、展示方法や商品などの検討も進められる。

また、景色を楽しみながら美味しくお酒をいただく場所として、バーラウンジも導入される。一度に着席できるのは4名までだが、その人に合ったお酒を提供するという。列車の走行に合わせて変わりゆく景色を楽しみながら、どのホテルにも負けない上質な時間を過ごせるようにデザインされた。詳細は検討中だが、「楽しくできると良いですね」と水戸岡氏は言葉を添えた。

  • 3号車、ギャラリーショップのイメージ(Design&Illustration by Eiji Mitooka + Don Design Associates)

  • 3号車、バーラウンジのイメージ(Design&Illustration by Eiji Mitooka + Don Design Associates)

いままでの「ななつ星」も十分に豊かな空間・時間を過ごせるように設計していたが、もっと豊かに、もっと楽しく、心地良い空間を作ってほしいとの要望に応え、やってみたと、今回のリニューアル内容を紹介した水戸岡氏。これが100年経っても元気に走っているクルーズトレインになったらうれしいと思いながら、デザインを進めていると話した。最後には、「あとは本物が出て来ますので、本物は絵よりもはるかに素晴らしいので、期待していただきたいと思います」とコメントした。