「商品力がないので売り上げが上げられない」「雑務が多すぎて本来の業務ができない」など……結果が出せずに言い訳ばかりしてしまう社員にはなりたくないですよね。

成果を出せる「できる」社員と、言い訳ばかりしてしまう「できない」社員。いったいどこが違うのでしょうか。

思考のクセを紐解き、生産性の高い組織のマネジメント理論を提供している「識学」の代表取締役社長で、書籍『数値化の鬼』(ダイヤモンド社)を先ごろ出版した安藤広大氏に、「できる社員」の思考法や、そこに近づくための考え方について伺いました。

  • 仕事で「言い訳」ばかりする人の特徴は?

「できない」社員に欠けている唯一の意識とは

――成績が上がらない理由を、商品・市場などの外的環境や上司などの人のせいにして言い訳をする社員がいると思います。常に成果を上げられる「できる社員」とは何が異なるのでしょうか?

大きな違いがあるとすれば、「評価は人がする」ということを理解しているかどうかだと思います。すべての人は他者の評価によって、自分の糧を得ている。これは、組織に属していないフリーランスやアーティストにも当てはまります。

すぐに言い訳をしてしまう「できない」社員は、そのことをあまり理解していないですが、成果を上げている「できる」社員は、そのことを理解してアクションにつなげているのです。

――「できる」社員になるのはどうすればいいのでしょうか?

端的に言えば、目指すべき目標を掲げ、その達成に向けて、常に考え取り組んでいる人です。例えば、成果を出せなかった時には、できなかった事実に向き合って、足りない部分を埋めるために、積極的に行動を変えています。

一方、「できない」社員は、「成果が出せない」事実に対して行動を変えるのではなく、言い訳で補おうとします。しかし、行動の変革がなければ目標達成には近づけません。

そこで大事になってくるのが「数値化」です。自分が向き合う事実を明確にするためには、この「数値化」が欠かせません。数値化することで、評価者と自分との認識のズレが無くなり、目標をクリアするための自身の行動もマネジメントしやすくなります。

「意味」は遅れて理解できる

――「事実と向き合う」ことが、できる社員になるための第一歩だと思いますが、頭では分かっていても、気持ちがついてこない人もいると思います。

そうですね。行動に移せない理由として多いのが「行動(アクション)プランが漠然としている」です。何から始めてよいか分からないので動けないのです。

これを解消するには、例えば「1年以内に商品化を1つ実現させる」という目標に対して、「月に企画書を4つ提出する」「毎週末に新たな企画書を1つ仕上げる」など「目標のための目標」をつくることが重要。

こうした目標の手前で、目標達成に必要な行動管理を高めるための目標を「KPI(Key Performance Indicator)といいます。

また、どんなことにも意味を求めてしまうのもよくない。結論から言えば、多くの場合、意味は遅れてから理解できます。ですから、まずは与えられたことを素直にやって、身体に覚えさせること。そのほうが仕事は上達しますし、成長も早いです。

  • 株式会社識学 代表取締役社長 安藤広大氏

「仲が良い」よりも「緊張感」のある組織が成長できる

――組織として考えた場合、メンバー全員が成長できる強いチームにはどんな特徴があるのでしょうか?

一人ひとりが個としての責任を果たし、その結果、チームの目標が達成できる。こうしたチームが成長できます。

例えば、この人は個人としての売り上げ目標を達成していないが、職場の雰囲気を良くしているから評価しようといった「個人」の責任よりも「チームプレー」を優先する組織では、個々の責任があいまいになってくるため、一人ひとりの成長は期待できないでしょう。

個人やチームが競争しあって、ある程度のセクショナリズムが生まれる「いい緊張感のある組織」こそが、個人一人ひとりが自律でき、強いチームになると思います。

実際、スポーツでも、強いチームは選手同士が馴れ合っていません。やはり、それぞれの責務を果たした結果、信頼し合ったり、仲良くなったりしています。生ぬるい組織は、先に仲良くなりたがり、仲良くなることが目的になってしまっていると思います。

「危機感」を認識して初めて、人は変われる

――それでも目標に対しておじけづいたり、事実に向き合うのが怖いと思ったりする人へ、最後にアドバイスをいただけますか?

例えば、体重を減らしたいと思っている人がいたとします。暴飲暴食をしすぎて見るからに太ってきているのに、その現実を受け入れられずに、今の体重から目を逸らしていれば、いつまで経っても改善できませんよね。

言い訳をして結果がなかなか出せない社員は、それと同じです。いつまでも現実(事実)から目を背けていては、何も変わりません。

変化の激しいこの世の中では、自分が成長しなければ、自分の価値は下がり続けるだけです。世の中は事実通りにしか進んでいかないので、それと向き合わない人は将来必ず損をするでしょう。

あえて厳しく言うのには、理由があります。それは「人は自分の身に『危機感』を認識して初めて、変わる(成長する)ことができる」からです。識学では、その「危機感」を「恐怖」と呼んでいますが、自分の身に迫っている危機を、自身の行動を変える契機にすることが大切です。

もう一つ、本書でも紹介している「時間軸」は成長を目指す上で大切な考え方です。「今の延長上」だけを見るのではなく、「さまざまな可能性」があることを認識すること。

具体例を挙げると、営業職なら「ビッグクライアントに依存しすぎていないだろうか」という危機感を持ち、小さなクライアントへのフォローにも労力を割き、万が一、ビッグクライアントからの発注が得られなくても、他のクライアントで受注を増やせるような対策をとっておくことです。

人間の脳は、短期的な利益を優先し、長期的なトクを見過ごしてしまう傾向があります。しかし、長期的な視点を意識して持つことで、短期的には価値が低いと思っていたことも、将来利益をもたらす可能性があります。

「事実(数字)と向き合うこと」と「時間軸を持つこと」。この2つの考え方を持てば、あなたもきっと未来の利益を獲得できるでしょう。

取材協力:安藤広大(あんどう・こうだい)

株式会社識学 代表取締役社長。1979年大阪府生まれ。早稲田大学卒業。2013年に「識学」という考え方に出会い独立。2015年に会社を設立し、3年11カ月でマザーズ上場を果たす。2022年3月現在、識学の導入企業は2,700社以上。人と会社を成長させるマネジメント方法として、口コミで広がっている。