俳優のムロツヨシが主演するフジテレビのドラマ『全っっっっっ然知らない街を歩いてみたもののSeason2』(毎週日曜25:25~)。清野とおる原作の同名漫画を実写化した同作は、ムロ演じる主人公の漫画家・セイノが、「知らない街を知らないまま死んでいくのは…何か嫌だ!!」という曖昧な動機のもと、タイトルの通り “全然知らない街を”“歩いてみたものの”…そこに物語は待ち受けているのか!?という、予測不能の新感覚“街ブラアドベンチャー”ドラマとなっている。

昨年3月に続き、早くも第2弾として放送されているが、このドラマの魅力はどこにあるのか――。

  • 『全っっっっっ然知らない街を歩いてみたものの Season2』に主演するムロツヨシ (C)フジテレビ

    『全っっっっっ然知らない街を歩いてみたものの Season2』に主演するムロツヨシ (C)フジテレビ

■ただただ自由に探索していく心地良さ

この作品の特徴は、全然知らない街を歩いてはみるけれど、決してその街の魅力を発見したり発信したりするわけではなく、ましてやドラマチックな出来事が待ち受けているわけでもないということだ。それはこれまで訪れてきた街からも明白。第1弾の第1話が「上中里」で、第2弾の第1話も「南行徳」と、決してメジャーではない街ばかりを訪れ、かつ何か確固たる名所があるわけでもない、まさに“未知数”の場所なのだ。そこでセイノは何を見つけ出すのか?がこのドラマの見どころとなっており、“未知数”だからこそスリリングな展開が楽しめる。

また、たどり着いた街のおすすめを聞けば、「バーミヤン」をしきりに勧めてくる住人が現れたり、主人公は喉が渇くあまりつい「ガスト」でビールを飲んでしまったり、はたまたせっかくの観光スポットに遭遇しても、自分だけの街の魅力を探す!と息巻いて去っていく…という“街ブラモノ”とは思えない展開もしばしば。

そのためセイノは、訪れた街の趣に感銘を受けるでもなく、知られざる歴史に触れるわけでもなく、独自のローカルグルメを雄弁に語るでもなく、ましてやそこで“人情”に出会うわけでもない。せっかく訪れた街だからといって一切媚びることはなく、ただただ自由に探索していく…。けれど、それこそがおかしく、そして心地良いのだ。

その心地良さの源となっているのは、やはり自由にはじけるムロのおかげだろう。ムロと言えば、どこまでが演技でどこまでがアドリブなのか分からない塩梅が絶妙な俳優。しかもその自由さが、決してコントの空気感にならず、しっかりとドラマの世界へ没入させてしまう。

今作でもその才能がいかんなく発揮されており、一人語りのモノローグを中心とした構成は小気味よいテンポで飽きさせず、視聴者を楽しませてくれる。地元グルメに出会っても、基本的に「うま!」の一言で片づけてしまうし、何ならたまに“なぜここでこのグルメ”とツッコみ、街のイタい部分を“ディスる”場面も多々あるが、不思議とそれが反発を買わず、“おかしい”の塩梅のまま成立してしまうのは、ムロだからこその愛嬌があるからだろう。

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■連ドラとして見どころを持たせるヨーロッパ企画の手腕

しかし、いくら愛嬌たっぷりのムロとは言え、全然知らない街で、決して何かが起こるわけではない…という中でドラマは成立するか?と問われたら、そう簡単ではないはずだ。何もないと見せかけながらしっかりとその街の特徴を捉え、しかもドラマとして、全話通して楽しめるような工夫が様々施されているのは、今作を手掛けるヨーロッパ企画の手腕によるものだろう。

ヨーロッパ企画は、今作の脚本監修を務める上田誠が主宰するコメディを主体とした演劇集団で、そのメンバーが脚本、演出ともに加わっている。一見、自由なアドリブ劇のように見えても、笑いながら見進めていくと、実は見事なオチが待ち受け、ふと深みを感じてしまうような物語が完成している…そんな作風が特徴だ。

前作の「Season1」でも、物語に関係あるのか終盤まで不明だった、訪問先で必ず現れる謎の男・ナカタ(中川大志)が、ただ全話を横断するアクセントとしての存在ではなく、実は“その街を知ったような気でいる”ことを主人公と対比させ、皮肉って見せる…そんなキャラクターだったことが判明する構成に仕上げていた。 “行き当たりばったり”を、ムロの力技だけで、面白おかしく進行させる…そんな作品ではなく、連続ドラマとして大きな見どころを持たせることにも成功しているのだ。