最強のホットハッチ!? 日本で大ブームを巻き起こしたランチア・デルタ

”ランチア・デルタ”

その7文字の響きでさえ、聞いただけで胸の奥がザワザワする・・・という方もいるのではないだろうか。一度掴んだ心は離さない、といわんばかりにデルタは不思議な魅力を持っている車だ。はっきり言って、特別速くもなければ、ずば抜けて高性能なわけでもない。しかし、3900 x 1770 x 1330mmというサイズ感で4ドア&ハッチバックという点では、実用性に長けていえるといえよう。子供のお迎え車、休日のファミリーカーとしても出動できる。フルタイム4WDなのでスタッドレスタイヤ、ルーフラックを装備すれば楽しいスキーにだって出かけられる。

それでも、ひとたびシャキッとリアスポイラーを立てれば、ファミリーカーとは思えないスポーティーな雰囲気が醸し出る。肝心の乗り心地といえば、言葉では妙に表しづらい、ランチアエッセンスが五感で感じられる。生真面目な要素はなく、イタリアらしい無邪気さがシフトフィールからも伝わってくる。そんなデルタは近年、ネオクラシックカーブームの影響もあり再び注目を集めている。価格の高騰も国内外問わず顕著だ。この10年で3倍ほど値上がりをしており、新車価格より優に高いものもある。この状況を受け入れられるか否かは人それぞれだが・・・。

デルタが新車として販売されていた当時、WRCで大活躍していたことがあり日本での人気は凄まじいものだった。正規輸入元であったガレーヂ伊太利屋によると、「朝来たら会社の前に列が出来ているほど」である。今となっては、車を買うために並ぶというのも想像し難い光景であるが、実際に起きていたことなのだ。ミニ・デ・トマゾブームの火付け役ともなっていたガレーヂ伊太利屋は、1983年からランチアの正規輸入元となった。プリズマ、テーマ、ストラトス、037ラリーなどを経て、大ヒットとなったデルタの販売をスタート。

グループA競技用車両の市販車バージョンであるHF 4WDは、年間150台程販売されている。数字だけでいうと国産車のヒットモデルに比べたら足元にも及ばないが、ランチアというマニアックなブランドであることを考えると一定の人気があったといえる。そして、ある日WRCがテレビで放送されると、上述したようにガレーヂ伊太利屋の外にはオープン前から長蛇の列ができるようになった。デルタブームに熱い炎がついた瞬間だ。8vはHF 4WDの3倍近く、16vは販売台数では5倍以上となり、デルタがインテグラーレ8v,16v,EvoⅠ,EvoⅡと次々進化していくように、販売台数もあれよあれよと伸びていった。さらにはジアラやブルーラゴスといった限定車も出てくるのだから、ファンの熱が冷めることはない。

最終的にはガレーヂ伊太利屋が考案した限定車”コレツィオーネ”(でデルタのフィナーレが飾られた。ヨーロッパではディーラーズコレクションとしてまた少し違った仕様で販売されている。コレツィオーネは即完売、今ではコレクターズカーとして、世界中で高値が付けられるようになった。物によっては2000万円を超えてきている。

【画像】歴代デルタを見る(写真28点)

そんなホットなデルタについて少し話を伺うべく(上述の内容)、ガレーヂ伊太利屋を訪ねてみた。現在はデルタを販売していた時代とは違う場所、お台場にショールームがあり、ショールームに販売中のデルタがある状態でもなかったが、代わりに以前販売されていた車両の写真を使い変遷を少しお見せしたいと思う(16vから)。どの一台が好きかじっくりご覧いただきたい。

デルタ インテグラーレ 16v

16vになり、ボンネットに3cmほどのバルジが設けられ、8vより筋肉質な雰囲気が醸し出されている。最高出力は200ps(8vより15ps向上)。ビニールレザーは16vの途中からオプション選択できた。

デルタ インテグラーレ EVO1

EVOになるとメカニズムにおける様々な改良が加えられ、ボディ剛性が向上し、操縦安定性も確保された。パワーはファインチューニングで最高出力が210psとなっている。エアインテークも増え、強気な見た目である。

デルタ インテグラーレ EVO2

ホイールは16インチに変更。メカニズム面でもおいてさまざまな改良が加えられ、215psまで最高出力が向上した。8vに比べると30psもパワーアップしている。

"インテグラーレ5"

EVO1ベースの世界限定400台限定車。WRCにおけるランチアの成功を称えて作られたものだ。日本は並行輸入のみ。ボディ全体をドレスアップするマルティニカラーが眩しい。

フィナーレを飾った"コレツィオーネ"

ガレーヂ伊太利屋の発案により、EVO2ベースに250台限定で作られた限定車。専用カラーやプラーク、バッヂ、スターターボタンなど様々な特別装備を身にまとっている。ヨーロッパでは少しディテールが異なっている姿で、"ディーラーズコレクション"として販売されている。

コレツィオーネを発案したガレーヂ伊太利屋ではやはりデルタという存在を今でも大切にしているようで、デルタのイラストを描いたオリジナルグッズ、デルタのミニカー、デルタカレンダーといったアイテムの販売、壁にはデルタの大きな写真が飾られている。やはり今でも、デルタ好きの聖地であることには変わりなさそうだ。

また、日本でのデルタブームを支えた立場として、再びデルタに関わる何か新しいことができればと考えているとか。そのファーストステップとしてアウトモビリ・アモスが発表したデルタのレストモッド"futurista"を注文しており、完成車がもうすぐ日本にやってくる。この車両に関しては、気になっている方も多いだろう。

さらに、ミキ・ビアシオンが発表した"EVO MARTINI"も発注している。これはEVO2の進化系がさらにあったら・・・という空想から生まれた車である。その名の通り、マルティニカラーを身にまとっている。いずれはショールームに2台を並べるプランも構想中とのこと。昔デルタに憧れた人も、今デルタに乗っている人も、真新しいデルタを見る機会になるはずだ。レストモッドという新たなかたちで、デルタの進化をまだまだ見ていくことができるというのも嬉しい。今後の価格変動にも注目だが、次世代につないでいくという意味でもデルタを取り巻くカルチャーやプロジェクトから目が離せない。