普通のアパレルOLが女ひとりで世界を周る“怪魚ハンター”になったワケ

世界中に生息する「怪魚」を追い求める怪魚ハンターとして、女一人で世界の怪魚を釣り周るマルコス。公式You Tubeチャンネル登録者数は50万人を超え、初の自叙伝『実録、世界を釣る女』(KADOKAWA)も発売中と大きな注目を集めている。しかし、釣りをはじめたきっかけは、暇つぶしだったとか…。そんな彼女が、怪魚ハンターとして有名になったきっかけや、怪魚釣りの魅力について話を聞いた。(前後編の前編)

【写真】背丈の約2倍!? 巨大怪魚を釣り上げたマルコス【13点】

――釣りを始めるまでの半生をお聞きしたいのですが、『実録、世界を釣る女』に、釣りと出会うまで何かにのめり込んだことがないと書かれていました。学生時代にハマったことはなかったんですか?

マルコス 部活もやったことがないし、釣りを始めるまで趣味と呼べるものもなくて、何かに熱中している人って不思議やなって思っていました。

――高校卒業後はブライダルの専門学校に通っていたそうですけど、将来はブライダル関係の仕事に就こうと考えていたんですか?

マルコス いやいや。午前中で帰れる学校を探したら、そこだったんです(笑)。午後からはお母さんがやっているパン屋の手伝いもあったんですよね。だから卒業後は、家業を継ぐのかなと思っていました。

――専門学校は3か月で辞めて、フリーター期間を経て、アパレル関連の会社に就職します。アパレルに興味があったんですか?

マルコス 全然興味がなかったです。ネット販売を主力にした会社なんですけど、海外での買い付けがあって、いろんな場所に行けるらしいと。その頃、精神的に病んでいた時期だったので、その会社に入れば私も変われるかなと思って入りました。実際、仕事で海外に行くこともありましたし、買い付けに関係なく、2か月間かけて世界一周旅行にも連れて行ってくれました。その経験があったからこそ、怪魚釣りのために、単身海外にも行けるようになったんですよね。

――マルコスさんが入社して2年後、会社の業績が下がり、打開策として「社員でバンドを組んで音楽で会社を立て直す」と社長が言い出します。こんな、ぶっ飛んだ提案を受け入れたのが信じられないのですが……。

マルコス 人が考えもしないことをパッパッと思いつく社長で、むちゃくちゃなことを言ってくるけど、ちゃんと結果も残すので、ついて行ってみようかなという気持ちになるんですよ。だから、ある日突然、音楽で会社を立て直そうと言いはって、私も含めた女性社員4名が「今日からボーカルでやってな」って命じられたんですけど、みんな初心者ですし、「いやいやいや」と思いつつ受け入れていました(笑)。もちろんアパレル部門も並行して続けていたんですけど、社長はDJを担当しました。

――学生がバンドを組むのと同じノリですよね。目立ちたがり屋でもなかったというマルコスさんが、よくボーカルをやろうと思いましたね。

マルコス 最初はめちゃくちゃ苦痛でした。会社の人の前でカラオケを歌うのすら恥ずかしくて、「いやや、いやや」ってなっていたんですけど、やっていくうちに本腰を入れ始めて、いつの間にか「よし、やろう!」って積極的になっていました。

――バンドがブレイクの兆しを見せた頃、マルコスさんはプレッシャーで短期間の失踪を繰り返し、最終的にバンドを脱退して会社も辞めてしまいます。当時のバンドのファンは今の活躍を見てビックリしているんじゃないですか?

マルコス そうですね。釣りを始めたときは、「なんで釣りなんてやるの?」「どうせ、すぐやめるやろう」みたいな反応も多くて(笑)。ただ見守ってくれるファンがいたからこそ、今の活動に移行できたところもありますし、生配信の経験も今に活きています。

――会社を辞めて、どういうきっかけで釣りを始めたのでしょうか?

マルコス もともと魚自体が好きで、中学生の頃から金魚を飼っていたんです。それも普通の飼い方ではなくて、わざわざ奈良県の大和郡山市という金魚で有名なところに買いに行って、繁殖もさせて。

――繁殖は自分用ですか?

マルコス そうです。だから家中、水槽だらけになりました(笑)。ずーっと見ていられるぐらい金魚が好きで、バンド時代も飼っていたんですよ。それで会社を辞めて、時間ができて、心が疲れていたのもあるし、癒されたいなと思って、ふと釣りをしてみようかなと思い始めたんです。

――金魚を飼うだけでは満足できなかったと?

マルコス 野性の魚を見てみたかったんです。それまで一度も釣りはしたことがなかったんですけど、近くに池があったので、ほんまに思い付きで釣具屋さんに行って、店員さんに教えてもらって道具を買って、すぐに釣りに行きました。

最初に始めたのはブラックバス釣りだったんですけど、どんな魚で、どんな見た目で、どんな大きさなのか、生で見てみたいから始めました。

――2018年にクラウドファンディングで資金を募って、マレーシアで初めての怪魚釣りに行ったそうですが、ものすごい行動力です。

マルコス トーマン(雷魚の仲間)という魚を釣るためだったんですけど、釣ってみたい、生で見てみたいって気持ちが強すぎて、立ちはだかっている弊害は全部見えなくなりました。お金もなかったし、当時は釣りのためのクラファンは浸透していなかったんですけど、どうにかなるだろうと。このときも目標は見えてるから、それに向けて走るだけでした。

――しかも見事に現地でトーマンを釣ります。『実録、世界を釣る女』によると、釣れた瞬間「見たこともないような珍しい魚を釣るのは文句なしに楽しい」と確信したそうですね。

マルコス 見た瞬間、手が震えました。

――その体験から、世界中に生息する「怪魚」を釣りに行きたいと、怪魚釣りに目覚めたそうですが、ちなみに怪魚って臭くないんですか?

マルコス 臭いときもありますけど、臭くても匂いたいし、全身で怪魚そのものを感じたいんですよね。とにかく愛おしいんですよ!

――マルコスさんは、いつ頃からYouTuberになろうと思ったのですか?

マルコス 最初は釣りの生配信を中心にやっていたので、基本的に録画した動画をそのままYouTubeに上げていただけでした。その後、「全国バス釣り旅」や怪魚釣りの様子を編集して上げるようになりました。コロナ禍で海外に行けなくなると、なかなか日本では大物を狙うのが難しいので、身近な場所で釣りをするようになったんです。そしたら、けっこう需要があったんですよね。

――コロナ禍になってからも、順調に再生回数も伸びてますよね。

マルコス チャンネル登録者数が増えたのも、身近な釣りをするようになってからです。それまで基礎的なこともやらずに海外に行って、欲望のままに、ぶっ飛んだ釣りばかりしていたので、原点に帰ったというか。1回落ち着いて、釣りってどんなものか、みたいな。アジ釣りすらしたことがなかったので、そこから戻ってやってみようと。実際、自分も釣ってて楽しいし、みんなも見てくれるので良かったです。(後編へ続く)

【後編はこちら】女一人、世界中の怪魚を釣る“怪魚ハンター”マルコスが語る夢「女性の釣り人口を増やしたい」