今や出演作の途切れない、声優界のトップランナーとなった梶。声優としてあらゆる役柄に挑戦するだけでなく、実写ドラマやミュージカルにも出演するなど活躍の場を広げている。梶は「新しいことに挑戦できる場所をいただけるだけでもありがたい」としみじみ。なぜ新しい挑戦を続けるのか、その理由をこう語る。

「僕は声優という仕事に、誇りと責任を持って取り組ませていただいています。だからこそ、もっと魅力的でおもしろい役者になりたい。そのためにも、いろいろな場所でたくさんの経験をして、役者力を磨いていきたいんです。ドラマやバラエティなど慣れない場所でお仕事をさせていただくと、当たり前ですが、どこに行っても“ド新人”になりますし、そのたびにたくさん緊張もします。でも…やっぱりそこでしか感じられない感覚って絶対にあるんですよね。だからこそ、どんなに怖くても挑戦させていただいています。そこで改めて、自分の求めているもの、好きなものや苦手なものがわかったりもしますし」

コロナ禍においては、本作の公開も繰り返し延期になるなど、エンタメ業界もあらゆる影響を受けてきた。梶はコロナ禍で「嫌気が差すほどの絶望、同時に、たくさんの希望も感じた」そうで、仕事について熟考する機会にもなったという。

そこで強く心に湧き上がってきたのは、「自分は、本当に声優という仕事が好きなんだ」だということ。「僕は中学生の頃からずっと『声優になりたい。声優になるためにはどうしたらいいのか』ということばかりを考えて生きてきました。常に"声優とは?"ということで頭がいっぱいだったんです。まあ、それは今でも同じなんですが…(笑)。そんな自分でも、約18年間声優を続けてきた今、“仕事”というのは、好きという気持ちだけではできないし、苦しい時間も必ずあるものだなと実感しているところです」と語る。「それでも、やっぱりどうしたって、結局は声優という仕事が好きなんですよね。なので、お芝居をさせていただく機会があるならば、いつでも自分のベストパフォーマンスができる準備と覚悟をしておかなければいけないんです。それが責任というものかと」と力を込めた。

声優業に臨む上でのモットーは「自分が演じさせていただく役に、誰よりも深い愛情と熱意を持って寄り添うこと」だと話す。「その役が何を考え、どうやって生きているのかを、誰よりもわかってあげられる存在でありたいと思っています。そこからさらに、制作陣の方々が作りたいものは何なのか、自分が求められているものは何なのかを把握し、それを形にする努力ができる人でありたいですね。チーム一丸となって『この作品をいいものにしたい』と感じられる場所にいられることが、僕にとって一番の幸せです」とひたむきで、熱い思いを明かした。

■梶裕貴
1985年9月3日生まれ、東京都出身。2004年、声優デビュー。2007年にテレビアニメ初主演を務める。2013年と2014年には声優アワード主演男優賞を史上初の2年連続で受賞。『進撃の巨人』のエレン・イェーガーや、『僕のヒーローアカデミア』の轟焦凍役、『ワールドトリガー 』のメリオダス役など、話題作の人気キャラクターを数多く演じている。2020年には、WOWOWオリジナルドラマ『ぴぷる~AIと結婚生活はじめました~』では実写連続ドラマ初主演を飾った。