angelaが『蒼穹のファフナー THE BEYOND』で貫いた「最後のわがまま」

『蒼穹のファフナー』が現在劇場先行上映中の『THE BEYOND』十〜十二話で、遂に事実上のシリーズ完結を迎えた。17年もの長きにわたってシリーズの楽曲を担当し、文字通り作品の大きな柱を担ってきたangelaにロングインタビューを敢行。前編となる本稿では、『ファフナーTHE BEYOND』最終章での楽曲を中心にお話を伺った。

※記事中に作品の結末に関するネタバレがありますので、作品鑑賞後にお読みください。

――今回の『ファフナー THE BEYOND』十~十二話で『蒼穹のファフナー』が遂に完結を迎えました。

atsuko  私はまだ信用してませんよ(笑)! だって「もう終わりだ」と思って『蒼穹』という曲を作ったのに、「あれ?」みたいなことが何度もありましたから。

KATSU 未だに信じられないという気持ちと「嫌だ!」っていう気持ちが半分ずつありまして……atsukoも言いましたけれど、終わりのはずだった『HEAVEN AND EARTH』からさらに10年以上続きましたからね。まだまだ続けられる何らかの手段があるんじゃないか、とずっと考えているんです。気持ちとしては、終わらせる気はさらさらありません(笑)!

――二人とも諦められないわけですね(笑)。

KATSU そんな中で正気を保っていられるのは、『ファフナー』の楽曲が残されているからです。これで封印ということは当然ありえなくて、これからも僕らは歌い続けていきます。そういう決意で、かろうじてガクガク震える脚を押さえつけている感じです(笑)。

――今回がラストということで、お二人の作業を進めるにあたって何らかのコンセプト、イメージなどはありましたでしょうか。

KATSU 音的に言えば『THE BEYOND』では特に和の要素を強く打ち出しています。それは『EXODUS』で機体にツクヨミ、スサノオ、アマテラスと日本の神様の名前がつけられたり、竜宮島が昭和の日本の文化を大切に残しているところがあるから、日本人のDNAに響く音楽というものを意識し始めたんですね。実は第一期が終わった頃から『竜宮島音頭』を作りたいという野望がありまして(笑)、これが叶うまでは『ファフナー』を終わらせるわけにはいかない理由の一つですね。

――atsukoさんが手がけた詞の部分では?

atsuko 『蒼穹のファフナー THE BEYOND』は話が進むにつれて内容が重く、救いがない展開になっていくじゃないですか。でもエグゼクティブプロデューサーからは「絶望だけではなく、ひとかけら、一筋の光でもいいから希望の部分を必ず入れてほしい」と言われましたね。

――『蒼穹のファフナー THE BEYOND』は今までになく楽曲が多かった印象ですが、その理由は。

atsuko 最初は『THE BEYOND』『何故に..』の2曲だけのオファーだったんです。やっと完成したー! と思ったら、「実は3話ごとにEDを変えたい」という話が来てビックリしまして。実際は3話ごとではなかったのですが、「あと3曲欲しい」と言われて「お、おう……」と(笑)。

――後からそんな発注が(笑)。

KATSU 先に「ED4曲」と言うと、こちらの心が折れちゃうと思ったんじゃないですか(笑)? それで言うと、『Prologue -君の向こう側-』は『ファフナー THE BEYOND』制作決定が決まった時、僕等の方から「作らせてください!」とお願いしたんですよ。その時、向こうからしたら「お、おう……」だったと思うんですけれど(一同笑)。

atsuko シナリオは読ませて頂いていたので、その後の展開を踏まえて『君を許すように』は寝る前の総士がいろんなことを思い返しているようなイメージを、そして『夜明け待ちのバラード』は千鶴さんの悲しい出来事があったけど、辛い戦いの中に見出した勝機――かすかな明るさを表現しました。最後の『今を、生きる為に』は一言で言うと”まとめ”(笑)? 竜宮島を目指す人たちがいろんなものを抱えて最後の決戦に挑む気持ちを込めて作りました。「今度こそ終わったー!」と思ったんですけれど……今度は「十一話の戦闘シーンで流したいので、別の曲をお願いしたい」と。

――「お、おう……」再びですね。

atsuko それに関しては監督から「島唄みたいな曲で」という具体的なオーダーがありまして『過ぎ去りし日よ』という形になって最終的にはそちらがEDになりました。そういう流れでしたので、制作が進む中で楽曲が必要になって、そのオーダーに応えてその都度制作していった感じです。

――では、最終章の曲についてお伺いしたいと思います。まずは『今を、生きる為に』。

atsuko 最終章の曲は3年くらい前にレコーディングしたんですけれど、最近マスタリングで久々に聴いたらKATSUさんは衝撃を受けていたよね?

KATSU いや、曲展開が目まぐるしすぎて。J-POPではありえないですよね、これ(笑)。もう曲の体裁なんか関係なくて『ファフナー』ファンに僕らの思いが伝わるだけでよい、という気持ちで作っているんですよ。これでもか、これでもか、というくらいにいろんなものを詰め込んだものに仕上がってます。この時作った4曲の中で締めの曲だったので、盛り上げていこうという気持ちがありました。

――『過ぎ去りし日よ』は先ほどお話にあったようにザ・島唄という感じですが。

KATSU そうですね、能戸(隆)監督との打ち合わせの際に十一話の説明を受けた上で「angelaの島唄が欲しい」と言われたので、素直に「ハイ!」と(笑)。

――さらにファンにとって最大の驚きが、最終話で『Shangri-La』『Separation』が流れたことです。特に『Shangri-La』はニューバージョン(『Shangri-La~THE BEYOND~』)となりましたが、これはどういった経緯から?

KATSU これは能戸監督と三間(雅文音響監督)さんから使いたい、というお話がありました。しかし『Shangri-La』は言ってしまうと17年前の機材で作った音源なわけです。それをそのまま使うか、それとも最新の技術で音源を改めて作るかを話し合いました。

ファンの皆さん的には昔から馴染みのある音源の方が良いんだろう、とは思うんです。でも、作品が17年の時間をかけて凄い映像を見せてくれているのに音はそのままで良いのか? と。あと、ライブを重ねていく中でatsukoの歌い方や僕の演奏も変わってきているわけです。

atsuko 17年前は粗削りだものね。

KATSU うん、今聴くとドキリとするくらい。だから、最終章は今のangelaの形で送り出したい、という気持ちがあったんです。

atsuko でも誰も正解がわからなくて、最終的にスタジオにエグゼクティブプロデューサーを呼んで、実際に今の『Shangri-La』を歌ってみて、そこで判断しようということになりました。

――それはまた贅沢な!

atsuko で、実際にやってみたところ、「今の歌い方はとても丁寧な印象だった。その歌唱力で粗削りに歌ったバージョンでもう一度聴きたい」と。それでライブで歌うような形でもう一度トライしたら「これは良いかもしれない!」ということになって、その日そのままレコーディングすることになりました。

KATSU 17年前の『Shangri-La』を録った日のことはよく覚えているんですよ。文字通り24時間スタジオにこもりっきりで作った1曲なんですが、その時atsukoが「私、これをライブで歌える気がしない」とまで言っていたんです。

atsuko 当時の私には難しかったですから。

KATSU 当時はサビ前で1回(録音を)止めたりしていましたからね。でも、今はライブを重ねてatsukoさんが100%の力を出せるようになりましたから。

atsuko でも、やっぱりファンの皆さんには違和感があるだろうと思って、17年前の『Shangri-La』の歌い方、自分の声を聴きながら歌い直したんですよ。

――そこまでのことをされたんですか!

atsuko 普通そんなことしませんよね(笑)。

KATSU 島民(『ファフナー』ファン)の皆さんの立場で考えたら、昔の『Shangri-La』を流す方が当然なんだろうとは思うんですよ。でも、これまで17年間応援してくれた皆さんへの感謝の気持ちを伝えるのに昔の音で応えるのは違うんじゃないか、と僕は思うんです。もしかすると賛否でいうと否が多いかもしれないですが、ここはangelaの最後のわがままだと思って許して頂きたいです。

――今のお話で、angelaにとって『Shangri-La』がとても大切な存在であることがよく伝わってきます。

KATSU 正直、デビューしてから現在まで、『Shangri-La』は自分たちにとって良い意味でも悪い意味でも壁になっている存在なんですよ。『Shangri-La』がなければ今こうやって自分たちがインタビューを受けていることはない、と言えるくらいangelaを作り上げてくれた1曲だと思うんです。だからリミックスなどで触るのは正直怖いくらいなんです。

――もはや聖域に入った1曲というか。

KATSU はい、もう自分たちの曲じゃないんですよ。今や『ファフナー』から預かっている、という気持ちの方が大きくて。

>>>『蒼穹のファフナー THE BEYOND』キービジュアル、『Shangri-La ~THE BEYOND~』ジャケットを見る(写真3点)

angela

ヴォーカルのatsuko、ギター&アレンジのKATSUから成るユニット。

2003年、『明日への brilliant road』(『宇宙のステルヴィア』OPテーマ)でメジャーデビュー。以降も『蒼穹のファフナー』『K』『シドニアの騎士』など数々の人気アニメシリーズの主題歌を担当する実力派アーティストである。

12月28日には、11年ぶりに『ファフナー』の曲だけで構成された『蒼穹のファフナーFINAL Fes in パシフィコ横浜』Day2『angela LIVE 蒼穹作戦』を開催。

(C)XEBEC・FAFNER BEYOND PROJECT