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(C)2020 LA FINE FLEUR - ESTRELLA PRODUCTIONS - FRANCE 3 CINEMA - AUVERGNE-RHONE-ALPES CINEMA

いつもは若手俳優を多く採り上げがちな本コーナーではありますが、今回はフランス映画界が誇るベテラン名優カトリーヌ・フロの主演映画をピックアップしてみたいと思います。

1957年5月1日、フランスのパリで生まれた彼女は1980年にアラン・レネ監督の『アメリカの伯父さん』で映画デビュー。

1985年『C階段』でセザール賞助演女優賞にノミネートされ、1996年『家族の気分』でついに同賞を受賞しました。

どこか穏やかでまろやか、そして包容力に長けた雰囲気や気品高さを保ちつつ、芯の強さも隠すことはないハートウォーミングなキャラクターを演じさせたら、彼女の右に出る者はいないでしょう。

そして21世紀に入ると主演映画が目白押しの大スターとして今に至るも君臨し続けているのです。

主婦と娼婦らが男たちに復讐!
『女はみんな生きている』



21世紀が始まって早々のカトリーヌ・フロの主演映画は、コリーヌ・セロー監督の『女はみんな生きている』(01)でした。

夫から家政婦扱いされ、息子からは鬱陶しい存在とみなされて久しい平凡な主婦エレーヌ(カトリーヌ・フロ)の男たちへリベンジ!……というのは通常パターンではありますが、本作はその域を優に超えて彼女が偶然助けた娼婦たちと共闘し、男どもへの復讐に加担していくという、フランス裏社会の人身売買や組織売春、アラブ問題などある意味社会派とでもいった重いテーマを扱い、時にバイオレンスタッチになることもありつつ、あくまでもブラックコメディとしての基調を揺るがすことのない痛快作に仕上がっています。

特筆すべきは全体的なテンポの良さで、特に冒頭から前半にかけての快調さは、演出や編集を学びたい人にとっての良きテキストになるかもしれません。

女たちがどんどんかっこよく映えていくのに対し、男どもは終始ダメダメ・モードですが、そこもコミカルに処理されているのがせめてもの救いかもしれません(アホアホな主人役のヴァンサン・ランドンがケッサク)。

エレーヌと親交を深めていく娼婦ノエミ役のラシダ・ブラクニは、本作でセザール賞若手有望新人賞を受賞しています。

アガサ・クリスティーの世界!
『奥さまは名探偵』



 御存知ミステリの女王アガサ・クリスティーの小説「トミーとタペンス」シリーズの1篇『親指のうずき」を原作に、舞台をフランスに移して片田舎で悠々自適な生活を送っているベレスフォルド夫妻、その奥さまであるピュルダンス(カトリーヌ・フロ)が老婦人ローズ(ジュヌヴィエーヌ・ビュジョルド)の失踪を機に、思わぬ難事件に挑むことになっていきます。

田舎に住むインテリジェンスに富んだマダムといったまろやかな奥さま像は、カトリーヌ・フロにとってうってつけの役柄。

そしてこの奥さま、事件の予感がすると親指がうずきだすといった症状が起きるのですが、そういった仕草も自然に成されています。

本作は好評だったことで、2008年にはシリーズ第2作『アガサ・クリスティの 奥様は名探偵~パディントン発4時50分』も製作。

こちらは「ミス・マープル」シリーズの「パディントン発4時50分」を原作にしており、この作品でカトリーヌ・フロはセザール賞主演女優賞にノミネートされました。

どちらも監督はパスカル・トマで、他にも彼は2007年に『ゼロ時間の謎』などクリスティ原作ものを監督しています。

男性社会の厨房を変える
『大統領の料理人』



1980年代のフランス大統領フランソワ・ミッテランのプライベートシェフに抜擢され、2年間仕えた史上初の女性料理人ダニエル・デルプシュをモデルに、男性社会の中でひるむことなく我が道を突き進む田舎のレストラン出身のヒロインの姿を気高く描いたクリスチャン・ヴァンサン監督作品。

官邸(エリザ宮殿)の中は男ばかりで球体めいたしきたりや規則に縛られていたところに、田舎からいきなりやってきたオルタンス(カトリーヌ・フロ)は同僚たちから冷たい仕打ちを受けるものの、持ち前の芯の強さでいつしか周囲を取り込んでいくことになります。

「逆境は人生のトウガラシ」と笑う彼女の台詞も秀逸。

このパターンも品格と母性的な要素、そしてまろやかな貫禄を併せ持ちつつ妥協はしないといったカトリーヌ・フロの個性を活かしたもので、この後も幾度か登場していきます。

またグルメ大国たるフランスならではの魅力も多分に備えた作品に仕上がっているのもこういった作品ならではの美味しい要素とおいえるでしょう。

本作でカトリーブ・フロはセザール賞主演女優賞にノミネート。

ふたりのカトリーヌが共演
『ルージュの手紙』



 中年助産師クレール(カトリーヌ・フロ)の前に、30年間も行方不明となっていた継母ベアトリス(カトリーヌ・ドヌーヴ)が突然現れたことから始まる母娘の葛藤を描いたマルタン・プロヴォ監督のヒューマン映画。

フランス映画界を代表する大スター、カトリーヌ・ドヌーヴとカトリーヌ・フロ、カトリーヌ同士の偉大なる共演が話題になった作品でもあります。

生真面目なクレールと自由奔放なベアトリス、対照的にもほどがあるふたり、しかも血の繋がりはなく、ベアトリスの失踪後に父は自殺してしまったこともあり、お互いの関係性がよくなるはずはないものの、それでもどこか惹かれ合っていくさまが二大名優の巧みな演技と、そこを引き出す演出の妙で描出されていきます。

それにしても若い観客などに決して媚びることなく、こうした老境をモチーフにした映画を自然に撮り続けることのできるフランス映画界の映画そのものに対する見識の高さは、正直日本の映画界も見習っていただきたいものですね。

 バラ園の再建を目指す
『ローズメイカー 奇跡のバラ』



2021年に日本公開されたばかりの、カトリーヌ・フロ主演最新作。

父が遺したバラ園が倒産寸前といった状況下で、社会復帰を目指すワケアリ3人組を引き取り、園の再建を目指す園主エヴ(カトリーン・フロ)の奮闘を描いたコミカルなヒューマン映画。

ここでも彼女は『大統領の料理人』さながら、周囲の圧力などにめげることなく、ひとり、またひとりと味方につけていく魅力を備えたヒロインを好演しています。

これが2作目のピエール・ピノー監督は明らかに稀代の名優をリスペクトしつつ、真摯に演出しているのが画面から容易に見て取れることでしょう。

大企業と個人経営の相違といった要素もさりげなく訴えられています。

またバラ園そのものの美しさを捉えた映像の数々も特筆しておきたいところ。

バラとカトリーヌ・フロという組み合わせもまた、実に映画的に映えわたる素敵な要素となっているのでした。

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| 2020年 | フランス | 96分 |THE ROSE MAKER©2020 ESTRELLA PRODUCTIONS-FRANCE 3 CINEMA-AUVERGNE-RHONE-ALPES CINEMA | 監督:ピエール・ピノー | カトリーヌ・フロ/メラン・オメルタ/ファツァー・ブヤメッド/オリヴィア・コート/マリー・プショー/ヴァンサン・ドゥディエンヌ |

(文:増當竜也)

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