天才子役から演技派女優へと、理想的にシフトしてきた鈴木梨央(16)。主演を務めるNHKのドキュメンタリードラマ『命のバトン』(BS1 11月18日20:00~)では、思いがけない妊娠をする女子高生役というセンシティブな役柄に挑んだ。初めて挑戦した出産シーンでは、立ち合った助産師からもお墨付きをもらったという鈴木にインタビューし、本作での役作りや女優業のやりがいについて話を聞いた。

  • NHKのドキュメンタリードラマ『命のバトン』で主演を務める鈴木梨央

鈴木が演じたのは、同級生の男の子との子どもを身ごもり、動揺する高校2年生の桜田結役。将来の夢は看護師になることで、他人を思いやれる優しい性格の結だが、シングルマザーの母親になかなか妊娠したことを言い出せずにいた。ある日、児童相談所の職員、成瀬千春(倉科カナ)と出会い、悩みを相談するなかで、選択肢の1つとして“赤ちゃん縁組” (新生児特別養子縁組)を紹介される。

鈴木は脚本を読んだ感想を「読み始めた時は不安な気持ちがすごくありましたが、読んでいくうちに、役に寄り添いたいという気持ちがどんどん強くなっていきました」と述べ、「結役を演じるにあたり、赤ちゃん縁組について調べましたが、初めて知ることも多かったです。それで、自分で産んだ赤ちゃんを育てたくても育てられない状況にいる方が少なくないことを知り、その人たちの悩みも改めて知るきっかけになったし、結としてその思いも届けられたらいいなと思いました」と語る。

大河ドラマ『八重の桜』(13)や朝ドラ『あさが来た』(15)などでヒロインの幼少期を演じ、子役として頭角を現した鈴木は、その後も順調にキャリアを重ねてきた。千春役を演じた倉科カナは、8年前に鈴木とフジテレビ系ドラマ『よろず占い処 陰陽屋へようこそ』(13)で鈴木と共演していたが、当時からポテンシャルが高かったと、別のインタビューで絶賛していた。

鈴木も倉科について「倉科さんと久々にお会いした時、以前共演したことを覚えていてくださっていて、すごくうれしかったです。今回、倉科さんとご一緒するシーンが多かったのですが、千春さんのポジティブな言葉を聞くと、気分が明るくなれました」と笑顔を見せる。

鈴木や倉科が出演したドラマパートと、実際に赤ちゃん縁組で結ばれた複数の家族のドキュメンタリー映像を織り交ぜた本作。

鈴木は「ドラマでは、自分が演じた結という“生みの親の目線”から物語を観ていましたが、ドキュメンタリーを観たら、養子縁組で育ての親に託された“赤ちゃんの目線”も入っていて、その子が成長するにつれて抱えるの複雑な気持ちまで知れたことが、とても良かったです。また、これまでは、自分が演じる役を客観視して演じることが多かったのですが、ドキュメンタリードラマということもあってか、今まで以上に役に寄り添って、自分とも照らし合わせながら演じられたことが大きかった気がします」と語る。

演じた結は鈴木と1つ違いの17歳なので、なおさら役に感情移入できたのかもしれない。「同世代の私から見て、もしも結のような立場に置かれたら、その現実をどう受け止めればいいのかと、すごく悩むと思うんです。きっとこの作品は、私のように結と同世代の人たちからお年寄りの方まで、幅広い層の方々に観ていただけると思うので、それぞれに感じた気持ちや思いを共有していただいて、命についても改めて考えていただけたらいいなあとも思いました」