『RIZIN LANDMARK』(10月2日)で朝倉未来に判定完敗を喫した萩原京平(SMOKER GYM)が、再起戦に挑む。舞台は、11月28日、神戸ワールド記念ホール『RIZIN TRIGGER』のメインエベント、対戦相手はベテランファイター昇侍(KIBAマーシャルアーツクラブ)だ。
互いのファイトスタイルから打ち合いとなる可能性が極めて高い一戦。萩原が昇侍を殴り倒し、朝倉未来との再戦に向け一歩前進するのか? それとも? KO決着必至のラジカルファイトの行方を占う─。
■敗北から56日後の再起戦
「前回、不甲斐ない試合をしたにもかかわらず、すぐにチャンスをもらえて嬉しく思っています。しかも地元関西の大会でのメイン、盛り上がる試合をして勝ちます。そこ(朝倉未来との再戦)に辿り着くまで、闘う相手を全員ぶっ殺すつもりなので昇侍(しょうじ)選手にも、その一人になってもらいます」
10月24日、神奈川・ぴあアリーナMM『RIZIN.31』のリングに登場した萩原京平は、対戦カード決定に伴い、そう話した。
「朝倉未来から、すべてを奪い取る!」
派手な宣言をしリングに上がりながらも完敗、さぞかし悔しかったことだろう。それでもフィジカル的なダメージは軽く、早期に再起戦を行えることになった。
萩原は、カリスマ性を秘めたファイターなのだろう。
プロの格闘家としてのキャリアは、特筆すべきものではない(5勝4敗)。にもかかわらず注目度が高いのは、向上心を伴っての太々しいキャラクター、そして卓越した打撃センスの持ち主だからでもある。
総合格闘家としての完成度は、まだ高くはない。それは、グラウンドの展開に持ち込まれた際に弱点を露呈するからだ。朝倉未来戦の敗因は、まさにそこにあった。
この部分をいかに克服するかが萩原の今後の課題である。しかし今回の昇侍戦においては、得意とする打撃を存分に駆使できるのではないか。アンダーグラウンド・エンペラーは、一撃必倒の打撃を披露したくてウズウズしている。
■昇侍は「意外性」の男
対戦相手の昇侍は、11月12日、所属ジムのKIBAマーシャルアーツクラブにおいて公開練習を行なった。
その際に、こう話している。
「皆さんの期待通りの試合をしようと思っています。展開次第で、どうなるか分からないところもありますが、倒しにいくつもりです。熱い闘いの中でも冷静さを保って、チャンスを見逃さずに畳みかけたい。今回は、これまでの自分の格闘技キャリアにおいても最高の舞台。そこで悔いを残さないように、しっかりと準備を整えています」
日本航空高校時代は球児でもあった昇侍の、総合格闘技戦績は18勝(14KO)14敗1分け。
2005年夏にプロデビューして以来、DEEP、パンクラスなどでキャリアを積み、昨年9月にRIZIN初参戦。この時は朝倉海に1ラウンドTKOで敗れるも、今年9月の『RIZIN.30』では、KNOCK OUT-BLACK(キックボクシング)スーパーライト級王者の鈴木千裕にパンチを浴びせ20秒で瞬殺した。ちなみに昇侍は、デビュー4戦目にパンクラスのリングで「4秒KO勝ち」を記録してもいる。
戦績だけを見れば、並のファイターだが「意外性」の持ち主。そして、キャリアも豊富だ。今年38歳になった昇侍は、萩原(25歳)よりもひと回り以上年上である。
「(萩原とは)体格差もあるし、一般的に不利だと言われていることは分かっています。でも自分は経験を積んでいる。(予想を)引っ繰り返して勝つことが求められているのだと思います。ケージ(金網に囲まれた試合場)での闘いには慣れているし、戦略面では自分の方が長けていると思う」
そう、『RIZIN TRIGGER』では、リングではなくケージが用いられる。これは、RIZIN初の試み。世界標準を意識してのことであろう。
また、過去2試合を萩原は、いずれも68キロ契約で闘っている。対して昇侍は、66キロ、61キロ。今回の試合はフェザー級(66キロ)契約だが、体格差があることも確かだ。
マッチメークには、必ず主催者側の意図がある。
萩原が今回の主役。彼が再起戦を飾るのに相応しい相手として選ばれたのが、寝技ではなく打撃での勝負を挑むであろう昇侍だ。ならば、凄絶な打撃戦は必至だろう。
大方の予想は、萩原のKO勝ち。それに私も異論はない。フィジカルの強さ、そして打撃の破壊力で萩原が上回る。
だが面白いのは、昇侍が「意外性」を持つ男であること、尚且つ、勢いもある。相手の隙を突いての一撃で、一気に試合のペースを握ることがあるかもしれない。
萩原が再起のTRIGGER(引き金)を引くのか、それとも、昇侍が遅咲きブレイクを加速させるのか。
この試合を終えると大晦日までは、もう1カ月しかない。それでも、いずれかが多大なダメージを負うことなく勝利したならば、「RIZIN大晦日決戦」に出場するチャンスを得る可能性も残る。萩原が8-2、いや9-1で優位だろう。だが、何が起こるかはわからない─。
文/近藤隆夫