「GLAMOROUS SKY」を歌う手越祐也、HYDE、DAIGO。

HYDEによるオーケストラコンサートとハロウィンを融合させた「20th Orchestra Concert HYDE 黑ミサ 2021 Halloween」が、10月30日と31日に千葉・幕張メッセ国際展示場9~11ホールにて行われた。

2018年の「HALLOWEEN PARTY 2018」以来3年ぶりの開催となったハロウィン公演。コロナ禍ということを受けて、着席指定、歓声などの声出しは禁止という制約はあったが、集まったオーディエンスはドレスコードである仮装もしくはスマートカジュアルの装いで、HYDEがオーケストラや仲間たちと織り成すステージを堪能した。この記事ではハロウィン当日に行われた2日目の公演の模様をレポートする。

HYDEがマイキーこと佐野万次郎に、ゲストのDAIGOがドラケンこと龍宮寺堅に扮し、オーケストラの面々もおそろいの特攻服という「東京リベンジャーズ」をテーマにした仮装が話題を集めた初日の「黑ミサ 2021 Halloween」。その興奮が冷めやらぬ中で迎えた2日目は、前日に続きペレ草田とASH DA HEROの2組がオープニングアクトとして出演し、それぞれの持ち味を生かしたパフォーマンスで観客たちを歓迎した。

爆発音と雷鳴が激しく響き、それを合図にコンサートの幕が上がる。するとステージの上手側からゲストである手越祐也が馬車に揺られながら登場し、オルゴールサウンドを取り入れたアレンジの「HALLOWEEN PARTY-サーカスVer.-」を美しく艶のあるハイトーンボイスで歌唱。手越は観客をその美声で魅了すると同時に、金髪にレーシーなゴシック調のドレスという麗しい姿でも惹き付けハロウィンコンサートの世界へと誘った。ステージを覆っていた幕がゆっくり開き、観客の目に飛び込んできたのはシャンデリアが揺れる豪奢なお屋敷の内観。その前にスタンバイする執事やメイドの仮装をしたオーケストラのメンバーが奏で出したのは、軽快なビートが軸となる安室奈美恵「Hide & Seek」だった。続けて演説台を模したセットから「黒執事」の主人公シエル・ファントムハイヴに扮したHYDEが登場し、その姿に会場内の空気は一瞬で高揚していく。彼は挑発的な視線を浮かべつつ、2018年もカバーしたハロウィンにふさわしい1曲を届けた。

「みんなとても美しくドレスアップされて、素晴らしい眺めだ」と満足げに場内を見渡したHYDEは集まったファンを気遣うも次の瞬間には、「もともと人間は2種類しかいない。奪う者と奪われる者。そして今日、お前たちは、僕に未来を奪われる」と冷たく言い放つ。「さて、どうして僕が悪魔と契約したかって? それはこの待ちに待ったハロウィンの夜に、罪深いお前たち全員始末するため。全員死刑!」と宣告し、オーケストラによって迫力を増した「AFTER LIGHT」を鬼気迫るような表情で絶唱。一転してビッグバンド風のアプローチを施した「DEFEAT」ではハンドマイクでステージを動き回り、軽やかな空気を作り出す。さらに未発表曲の新曲「THE ABYSS」では悲哀をにじませた繊細な歌声で会場を包み込むなど、楽曲ごとに異なる世界をその歌声で描き出してオーディエンスを楽しませた。中でも演出も含めて会場を陶酔させたのは、美しくも切ない永遠の愛を歌った「VAMPIRE'S LOVE」。ピアノソロが始まり、ステージ後方に置かれていた棺桶がゆっくりと前進し正面を向くと、そこには敷き詰められたバラを背に目を閉じるドレス姿の手越が。HYDEは手越にゆっくりと近付くと、その唇にそっと自分の唇を寄せる。まるで映画のようにロマンチックなワンシーンを、観客は黄色い歓声の代わりに拍手や持ち込んだ鳴り物で盛り上げていた。

スリリングなアレンジが光った「WHO'S GONNA SAVE US」を歌い終えたあと、HYDEは「今日はL'Arc-en-Cielではなく、シエル・ファントムハイヴでございます。オーケストラで演奏するにあたってこの(『黒執事』の)雰囲気が皆様のお気に召すんじゃないかと」と仮装のテーマを説明する。そしてジャジーにアレンジされた「DEVIL SIDE」をオーケストラのメンバーとアイコンタクトを取ったり、触れ合ったりしながら朗々と歌い上げた。雄大な演奏をバックに前向きなメッセージを観客に伝えた「BELIEVING IN MYSELF」を経て、HYDEは不気味なマネキンに囲まれた玉座に腰をかけ、大胆に不協和音をフィーチャーしたハロウィン仕様の「MAD QUALIA」を貫禄たっぷりに熱唱。牙を剥くようなパフォーマンスで会場を圧倒したのち、会場を支配するおどろおどろしい空気を払拭するように「Red Swan」をエモーショナルに披露した。

曲の爽快な余韻が残る中、ステージに現れたのは「黒執事」のキャラクターであるセバスチャン・ミカエリスに扮したDAIGO。彼は玉座を降りるHYDEの手を取りエスコートをしたのち、HYDEの「せっかく来ていただいたので1曲ご一緒していただけますか」という誘いに「イエス・マイ・ロード」と返し、L'Arc-en-Cielの「flower」を歌うことに。スローテンポにアレンジされたこの曲を、HYDEとDAIGOはときに熱く視線を交わしながら、ときに優しく声を重ねながらパフォーマンス。曲終わりでHYDEはDAIGOを抱き寄せ、ハグをしてそのパフォーマンスを称えた。当のDAIGOは執事姿のおかげで初日より曲の世界に入り込んで歌えたと素直な感想を漏らしつつ、HYDEをエスコートする自分の姿を写真に収めたいとおねだり。HYDEの足元に跪き、その手を取り恭しく口づけをするも、HYDEから「長い!」とツッコミを入れられてしまう。その言葉を受けてDAIGOは「このまま時が止まればいいと思ってました。本当に美しくて」と本音をこぼすと、それに賛同するように観客の拍手や鳴り物の音が響いた。HYDEの「LSH(Let's sing “HONEY”)」のひと言で、今度はスパニッシュギターをフィーチャーしたL'Arc-en-Ciel「HONEY」を歌い始めた2人。曲のクライマックスに差しかかった瞬間、パンキッシュなバンパイアに仮装した手越が颯爽と現れ、HYDEとDAIGOと伸びやかで美しいハーモニーを紡いだ。

旧知の3人がそろったところで「VAMPIRE'S LOVE」の演出時の話になり、手越は「昨日は(口先が)ちょんくらいだったのに、今日は普通のチューでした。最高です」と微笑む。HYDEが「(手越の唇は)柔らかかったよ。しかも温かかった」とその感触を告白しファンを興奮させると、手越は念願だったHYDEのハロウィンコンサート出演にうれしさを隠せない様子で「ずっと憧れでした! 夢は思ってると叶うんだなって」と熱弁した。ここでペレ草田とゲストの分島花音も合流し、HYDEの自由気ままな指揮に従えなかった場合に罰ゲームが課される「Penalty Waltz」のセッションへ。DAIGO曰く「このあとに歌う人のことを考えていない」強烈な味の飲み物が罰ゲームとして用意されるも、彼が2回目に失敗した際にはバンドが突然、BOØWYの「ONLY YOU」の演奏を始めるサプライズが。DAIGOは事態を把握しきれないままながらも見事にワンコーラスを歌い切り、さらには「ライブハウス幕張へようこそ!」というキメ台詞まで放ち、HYDEに「さすがだね」と言わしめていた。HYDEとゲスト陣の仲のよさが伺えるコーナーを挟み、今度は手越のアカペラで「GLAMOROUS SKY」がスタート。オーケストラの開放感のあるアンサンブルに乗せて、HYDE、DAIGO、手越の3人は肩を組みながら歌声を会場いっぱいに轟かせた。その後、手越が「ハロウィンの夜」をテーマにした最新曲「ウインク」を皮切りにスペシャルステージを披露。シリアスなトーンの「DoLLs」では4人のダンサーを従えて激しいパフォーマンスを展開し、「LUV ME, LUV ME」ではステップを踏みながら、甘いボーカルでオーディエンスを魅惑するなど、いちアーティストとして存在感をアピールしていた。

続いてスクリーンに「映画 えんとつ町のプペル」の映像が流れ、物語に登場する船がステージに運び込まれる。そこに登場キャラクターのルビッチに扮したロザリーナとプペルの仮装をしたHYDEが乗り込み、映画のエンディング主題歌である「えんとつ町のプペル」をデュエットする。2人を乗せた船は、観客がスマホのライトを照らす中で浮上していき、ゆっくりサブステージに着陸。HYDEはプペルになりきりながら、ロザリーナとの会話を楽しみ、「とっても素敵な眺めでしたね」「これは素敵なハロウィンになりましたね」と充実感をにじませる。さらにDAIGOと手越が合流したタイミングで彼は「これがないとやめられない!」と叫び「HALLOWEEN PARTY」をタイトルコール。フルオーケストラによるダイナミックな「HALLOWEEN PARTY」をゲストたちと高らかに歌い上げ、「Happy HALLOWEEN! またお会いしましょう」という言葉とともに「HYDE 黑ミサ 2021 Halloween」に幕を下ろした。

なおHYDEはオーケストラコンサートの集大成となる「20th Orchestra Concert HYDE 黑ミサ 2021 Wakayama」を、地元和歌山の和歌山ビッグホエールにて11月23日と24日に開催する。両日の公演はハロウィンコンサートとは異なる内容になるのでファンはお楽しみに。

HYDE「20th Orchestra Concert HYDE 黑ミサ 2021 Halloween」2021年10月31日 幕張メッセ国際展示場9~11ホール セットリスト

ペレ草田(オープニングアクト)

ASH DA HERO(オープニングアクト)

01. Rockstar
02. THIS IS LOVE
03. HELLO NO FUTURE
04. Everything

HYDE

01. HALLOWEEN PARTY-サーカスVer.-(手越祐也)
02. Hide & Seek
03. AFTER LIGHT
04. DEFEAT
05. THE ABYSS
06. VAMPIRE'S LOVE
07. WHO'S GONNA SAVE US
08. DEVIL SIDE
09. BELIEVING IN MYSELF
10. MAD QUALIA
11. Red Swan
12. flower(with DAIGO)
13. HONEY(with DAIGO&手越祐也)
14. GLAMOROUS SKY(with DAIGO&手越祐也)

手越祐也

15. ウインク
16. DoLLs
17. LUV ME, LUV ME

18. えんとつ町のプペル(ロザリーナwith HYDE)
19. HALLOWEEN PARTY-プペルVer.-(with DAIGO&手越祐也&ASH DA HERO&ペレ草田&ロザリーナ&分島花音)

20th Orchestra Concert HYDE 黑ミサ 2021 Wakayama

2021年11月23日(火・祝) 和歌山県 和歌山ビッグホエール
2021年11月24日(水) 和歌山県 和歌山ビッグホエール

撮影:緒車寿一 / 田中和子