前人未到の挑戦を認められ特別表彰を受けた大谷翔平

◆ 最終回:新時代を切り拓いたニューアイコン

 “SHO TIME”の第二幕が始まった。

 現地26日(日本時間27日)、大谷翔平はMLBのマンフレッド・コミッショナーから特別表彰を受けた。

 1998年に創設された同賞は、歴史的な偉業を達成した選手、チームに贈られるもので、定期的な受賞ではなく、特筆すべき活躍が認められる時だけに選出される。大谷の受賞は2014年のデレク・ジーター(ヤンキース)ら以来7年ぶりのこと。日本人としては、2005年のイチロー(マリナーズ)以来となる。

 「最高のレベルで、投打でプレー出来る選手を見つけるというのは凄いこと。2021年に、そういう人間がやってきた」。

 「ショウヘイのような国際的なスターの誕生は、野球の世界的普及を目指す我々にとってパーフェクトなタイミングだった」。

 コミッショナーの言葉に偉業のすべてが込められている。

 ワールドシリーズ終了後には更なる受賞ラッシュが控えている。「ハンク・アーロン賞」に「シルバースラッガー賞」そして、シーズンのMVP。

 すでに米野球専門誌「ベースボールダイジェスト」が選出する野手部門の最優秀選手に選ばれた。同賞受賞者は14年連続シーズンMVPに選ばれるなど信頼性が高く、大谷にも当確ランプが灯った格好だ。

◆ 異例の挑戦を支えた出会い

 国内では26日、今季限りで勇退する日本ハム・栗山英樹監督の退団セレモニーが札幌ドームで行われ、大谷からもビデオメッセージが寄せられた。

 「今、こうして周りの人に(二刀流を)少しずつ受け入れてもらえているのも、栗山監督がいてくれたからです。(中略)暇が出来たらアメリカにでも遊びに来て欲しいなと思います」。恩師には何よりの言葉となった。

 2012年のドラフト1位指名。大谷の本格的な二刀流はここからスタートした。このドラフトでは、メジャー志向の強い大谷を各球団は指名回避する中で唯一、手を上げたのが日本ハムだった。入団交渉は難航が予想されたが、球団の用意した二刀流の育成計画が決め手となったと言われる。

 当時のチームメイトである田中賢介氏(現評論家)らも「どこかで投手か野手に絞るのだろうと思っていた」と二刀流に半信半疑だったが、栗山監督の育成にブレはなかった。

 NHKの特集番組に登場した大谷の父・徹氏は自ら少年時代に野球を指導したが、「一生懸命、声を出す事、投げる事、走る事」だけを口酸っぱく言い続けたと言う。花巻東高の佐々木洋監督も、選手に限界を決めず、大きく育てることに腐心している。そして日本ハムは栗山監督を中心に二刀流へ道をつけた。

 仮に19歳からメジャーの門を叩き、二刀流に挑戦していても現在の大谷の姿は想像しにくい。激しい競争社会の中で埋没したかもしれない。類まれな才能はもちろんだが、進む先々で素晴らしい指導者に巡り合い、何より本人が少年のように夢を追いながら、不断の努力を続けたから現在の怪物がいるのだろう。

◆ 目標であり基準となった『SHO TIME 2021』

 大谷の出現は、今や全世界の野球界の常識すら打ち破ろうとしている。

 メジャーではレッドソックスのアレックス・バードゥーゴ選手が来季以降の二刀流挑戦を明らかにしている。レッズのマイケル・ロレンゼン選手やインディアンスのアンソニー・ゴース選手らも同様だ。レイズのブレンダン・マッケイ選手はこう語っている。

 「野球をやる少年たちは、もう投手か打者かを絞る必要はなくなった。大谷のおかげだ」。

 今連載のタイトルは「100年に1人の男」とした。もちろんベーブ・ルース以来の二刀流を前提にしたものだが、もはや専門家の中には、大谷はルースを超えたとしたうえで「これからの二刀流は大谷が物差しになる」と指摘する。

 日本中、いや世界中を虜にした男は、それでもシーズンを振り返って「今年の数字は最低ライン」と語る。そのうえで「相手の攻め方も変わって来る中で、(今年の)いい経験をつなげられれば、来年はもっと働けると思う」とさらに高みを見つめている。

 日本人メジャーリーガーのパイオニアであり、レジェンドでもあるイチロー氏は今季の大谷の快挙を祝しながら「無理は出来る間にしか出来ない。21年のシーズンを機に、出来る限り無理をしながら翔平にしか描けない時代を築いていってほしい」と激励した。まさに達人の境地である。

 世紀の怪物は、この先どんな真価を遂げるのか?比較対象がないのだから想像もつかない。ただひとつ言えるなら「大谷ワールド」のスケールはまだまだ大きく、人々を魅了し続けるだろう。

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

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