【国土交通省】「観光公害」克服も課題に コロナ後の正常化に備え

新型コロナウイルスの感染者減少に伴い、大量の観光客が混雑や騒音、ごみの放置などで近隣住民に迷惑を掛ける「オーバーツーリズム(観光公害)」の解消が課題として浮上してきた。

 観光地の多くがコロナ禍に伴う移動制限で一時の平穏を取り戻しているが、これまでと同じやり方で正常化を進めれば問題が再発しかねない。緊急事態宣言の解除を機に、官民を挙げた改善の機運が高まりつつある。

「世界中の観光地で美しい自然や静かな街が戻ってきた」――。日本旅行業協会(JATA)の菊間潤吾会長は8月の就任会見でこう語り、コロナ禍を受けて地元住民が「無観光客」の快適さに気付いたと強調した。

 その上で「地域の観光資源あっての旅行だ。一方的に消費するだけでは続かない」と話し、観光の経済効果と地域住民の穏やかな生活の両立を実現する必要があると指摘。一定期間に特定の地域に観光客が集中してしまう事態を防ぐため「オフシーズンにもいいものがあることをどう提案するか」が一つのカギになると考えている。

 北陸新幹線の開業を機に多くの外国人観光客であふれかえった金沢市。伝統文化である能や茶道の普及活動に取り組む能楽家の男性は「観光公害による地域文化の崩壊を強く感じる」と危機感を抱いた。

 コロナ禍を機にこれまでの取り組みを見つめ直し、能を学ぶ長期滞在の研修生を受け入れるなど、一過性の体験ではない本格的な文化交流に活動の軸足を置き始めたという。

 政府も「住んでよし、訪れてよしの観光地域づくりが必要だ」(和田浩一・観光庁長官)と観光公害の克服に力を入れる。昨年6月には持続可能な観光に関するガイドラインを作成。デジタル技術を駆使して混雑する場所を表示するシステムや、ごみの蓄積状況をリアルタイムで発信するごみ箱の導入などへの補助金制度も整備した。

 2022年度予算でのさらなる拡充も検討しており、岸田新政権が策定する経済対策のメニューの一つとなりそうだ。

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