【人気エコノミストの提言】消費のDX化とは何か

コロナ禍であっても、小売販売額は増えている。2020年の前年比は1.0%増だった。その背景には、ネット通販の伸びがある。ネット通

販(物販系)は前年比21.7%と大きく伸びている。それを除くと、前年比▲1.4%であった。消費分野でも、対面取引がネットシフトする動きがあり、それがデジタル転換、つまりDigital Transformation(DX)とされる。

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 しかし、小売業界では、DXを歓迎する声よりも、ネット通販に市場を食われて苦境に陥ることを心配する人の方が多いのではないだろうか。ネットシフト効果が、小売業界の淘汰を加速させるとみる人は多い。

 米国では、ショッピング・モールの店舗が虫食いのようになり、大手チェーンストアでさえ破綻している。日本では、人口減少によって消費市場が縮小する傾向も加わる。過去10年間はインバウンド需要が人口減少圧力をかなり緩和させた。20・21年はそれが止まり、22年に入ってもしばらくは訪日外国人の受け入れは難しいだろう。従って、小売業界の人はDXを素直に喜んでいない。

 ネット販売に対抗するため、小売業界は同様にネット事業を拡大させている。単にネットの販売チャネルを新しく設けるだけでなく、店舗で現物をきちんと見てからネットで注文し、商品を宅配できる仕組みを整えている。店舗でも、商品のQRコードを読み取れば、支払ができて、そこでポイントがもらえる工夫もある。店舗でネットのカスタマーレビューを確認できるところもある。ネットと実店舗の利用を融合させる売り方だ。

 消費者がネット利用にどんどんなじんでいくと、情報入手チャネルが変化する。例えば、ネット時代に変化するのは、宣伝・広告の分野にもある。最近の10代・20代は、テレビをあまり見なくなり、その代わりにネットの方を長時間使う。買い物をする時も、SNSであらかじめ評価を情報収集する。

 こうした変化は、テレビなどマスメディアの広告を減らし、広告主がネット広告にシフトさせる背景になっている。電通の広告費調査では、20年は新聞・雑誌・ラジオ・テレビの広告費をネット広告があと僅かで追い抜くところまで来ていた。

 時代の変化は、もっと先を走っていて、商品を効果的に売るには広告よりも、SNSなどの口コミをより重視する流れがある。口コミの評価を高めるには、広告にお金をかけるよりも、消費者の満足度を高めることが有益だ。

 筆者は、小規模の事業主から、「広告より口コミが大切だから、SNSは欠かさずチェックして研究している」と聞いた。すべての小売業に成り立つ訳ではないが、SNSによる情報収集を消費者が重視することは、小売業が基本に立ち返って、顧客満足度を上げることに知恵を絞ることが生き残りの策となる。よくDXの言葉を耳にするが、本当に大切なのはCX、つまりCustomer Experienceの方なのだろう。

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