みなさん、こんにちは。科学コミュニケーターの山川です。

10月1日に緊急事態宣言が解除されましたね。約2か月半ぶりの解除に少しホッとしていますが、気が緩みすぎないように気を付けたいと思います。

今回の記事では、9月18日に放送した「わかんないよね新型コロナ ここで一緒に考えよう」の振り返りをします!

2021年9月18日放送「わかんないよね 新型コロナ」

今回のテーマは「学校の感染対策」。番組前半では各校の状況に合わせてそれぞれ工夫されている様子を紹介しました。また、後半では3月まで公立の小学校で教鞭をとられていて、現在はHILLOCK 初等部で新しい学校づくりに取り組んでおられる蓑手章吾先生をゲストにお迎えし、オンライン授業の難しさや可能性、学校での感染対策についてお話を伺いました。この記事では番組後半の内容を中心にご紹介します。

コロナ禍で生まれた多様な授業のカタチ

コロナ対策の一環として昨年度から一斉登校の対面授業以外にも様々なスタイルの授業が生まれました。例えば、対面授業でもクラス内を分けて半分ずつ登校させる分散登校、自宅からパソコンやタブレットで参加するオンライン授業、対面授業とオンライン授業を組み合わせたハイブリッド授業などです。それらは、機材の準備(※)や、保護者の状況、地域における感染者数など、さまざまな状況を踏まえて各地域で方針を決めて行っています。

※昨年度の新型コロナ流行による一斉休校は、政府が掲げるGIGAスクール構想の準備段階で始まってしまいました。このため、パソコンなどの機材の準備状況は地域によって差が大きく、どの学校でもオンラインで授業をできる体制ではない点にはご注意ください。

新しく生まれたいろいろなカタチの授業(山川は回線トラブルが生じたため詫摩に紹介してもらいました。感謝。)

感染対策を徹底したうえで対面授業での2学期を開始した杉並区では、「学校は勉強をするだけでなく、人と人とのかかわりなど社会性を育む重要な機関である」とし、できる限り日常の教育活動を維持すると方針づけました。

一方で西東京市は緊急事態宣言が発令されている期間は、オンラインで授業を行うことを選択しました。そこには、児童生徒と教職員の感染防止を一番に考えることと、休校などの今後の新たな危機に対応できるようにするというねらいがあります。

どちらの学校も「生徒の安全確保」、「学びの継続」、「実現性・継続性」のバランスを取りながら、それぞれの状況に合わせて工夫されています。そこには、先生や関係者の方々の大変な苦労があったかと思います。

難しいよね、オンライン授業。改めて考えさせられた学校の在り方。

番組後半は、今年3月まで小金井市の前原小学校で教鞭をとり、現在は新しい学校「HILLOCK 初等部」のスクールディレクター(校長)を務めている蓑手章吾(みのて・しょうご)さんをゲストにお迎えしました。昨年度に経験されたオンライン授業のお話をお聞きした後、教育現場のプロである蓑手先生と感染症のプロである堀さんに視聴者の皆さんからの質問にお答えいただきました。

3月まで公立の小学校で教鞭をとられていて、現在は新しい学校づくりをしている蓑手章吾先生が今回のゲストです!

蓑手先生が3月まで勤めていた前原小学校では、昨年6月くらいまでの約3か月は一斉休校、その後はクラスを2つに分けた分散登校、さらに感染状況が落ち着いたら対策をしながらの一斉登校というような対応をしていました。一斉休校の3か月間は、先生が担当の6年生ではオンライン授業をなさっていたそうです。オンライン授業のメリット・デメリット、今後の学校の在り方など、たくさんの疑問を蓑手先生にぶつけさせていただきました。

Q. 前原小学校は研究指定校としてGIGAスクール構想前からタブレットが導入されており、休校前から対面授業でタブレットを用いた授業をしていたとお聞きしています。タブレットがあればオンライン授業はできるのでしょうか?

まず、タブレットを手にした子どもたちのスキルや理解ができるようになってようやくスタートラインですが、それ以外にも様々な障害がありました。例えば、オンライン環境に関していえば、すべての家庭にWi-Fi環境があるというのはほとんどありえない。オンライン環境がない生徒がいることは、無視することはできません。

また、情報機器に関してのサポートは学校にもよりますが、小金井市の場合は担当者が全ての学校を回っていたので基本は先生が対応をしていました。なので、教師は通常の授業に加えてそういった業務が追加された状況でした。

Q.さらに、これまでタブレットなどを活用していなかった状況で新たにオンライン授業を始めるとなるとどんな問題が考えられますか?

家庭のICTリテラシーには差があり、まったく教えられない親御さんもいます。ですので、前原小の場合は子どもたちが自分一人でできるところまでICTスキルをあげておく対応をしました。一週間くらい準備期間があればまだよいかもしれませんが、今回の私たちの場合では、休校になるとは思っていなかったところで急遽休校が決まり、1日でできることを全部やったという状況でした。

急遽決まった休校とオンライン授業の準備は大変だったそうです。(たくさんのコメントありがとうございます)

Q.どのような授業をされていたんですか?

オンライン授業の3か月間はいわゆる“授業”という形の授業はしませんでした。理由はいくつかありますが、担当学年だけ実験的にやっていたので、周りはやっていないのに自分たちだけ勉強させられることに生徒が嫌になってしまうと思ったからです。なるべく楽しいことや、思い出になること、主体的にみんなと関わりあうような学びができればと思って、知識を与えるというような授業はやりませんでした。学校では知りえない家の様子、ペット、習い事、特技を見ることができたのは教員を含めて面白かったです。

Q.狭義の学習ではなく、広義の「人が成長するのに必要なこと」を教えていったという感じでしょうか。

勉強するだけだったら今の時代はオンラインでもできてしまうけれども、学校に行く意味はそれだけではなくて。いろんな人がいて交わることで、そこに必ず学びは起こります。そこがなくなってしまうのは、子どもたちのその後のことも心配になるので、そこだけは残してあげたいなと思ってやっていました。

Q.蓑手先生の熱量をもってお子さんに向かってらっしゃる姿が素晴らしいと思いました。では、オンラインを使用したら「やっぱりここは難しかった」というところはありますか?

子どもたちのことでいうと、45~50分ずっと枠の中におさまって参加するというのは教室にいるのよりしんどいですよね。それはほぼ不可能だと思ったほうがいいです。あと、授業は双方向になるんですが、一緒にしゃべれないとか、隣の友達と相談できないという状況では、普通の学習というのは成立しにくい。教師側の話でいうと、通常は学校の教員は空気感とか雰囲気とかをつくったり、そのために場所を変えたりするんです。オンラインだと、子どもたちの顔周辺の部分しか見えないので、そういうワザが一切使えなくなるので難しいというか、ほぼ別物だという感じです。授業はグループでの話し合いとかそういったものを組み合わせながらやっているけど、半分くらいはオンラインではできなくなるんじゃないかなと思います。逆にそれ以外のところでできるようになることもあると思うので、組み合わせの世界だとは思います。

教室で使っていた目配りや雰囲気づくりの技術がオンライン授業では使えないそうです。

Q.先ほど、できるようになることというお話がありましたが、オンラインを使った授業でのメリットがあれば教えてください。

オンラインでいうと、もともと学校に来るのがしんどい子や、病気などでなかなか来られない子もいるし、今でいうとコロナの感染が怖くてというご家庭の考えもあるかと思うんですが、そういった子たちも安心して受けられるようになる。また、集団の中にいると発達の特性などで音が気になるという子などもオンラインでは障害なく受けられるのでそういった可能性もあるなぁと思います。あとは、教室の空間だと前に出る子、声が大きい子、発言権がある子に場がもっていかれやすいんですが、チャットだと普段教室でしゃべらない子がチャットにたくさん書き込んでくれたりしました。文字だと自分を表現できる子とか、絵だと自分を表現できる子もいるので、そういう意味ではこれまでの学校にはない可能性が発掘されたんじゃないかなと思います。

Q.対面とオンラインでの授業を同時に行う、ハイブリット授業もされたとお聞きしています。ハイブリット授業はどうでしたか?

休校が明けた後、学校に来られないお子さんもいたのでハイブリット授業もしていました。ハイブリットは大変だといわれるのですが、それは先生が両方対応しようとするから忙しいんですよね。私のクラスの場合は、教室にいた子たちの中にも本人の希望で何人かオンラインでもつないでいた子がいました。そうすると、画角が合わないときに配信用のパソコンを生徒が先生や黒板のほうに向けてくれたり、その場に応じたサポートをしてくれました。でも、それって普通の環境というか、子どもたちは教室だと助け合っているんですよ。その子の負担になるという人もいるんですけど、全然そんなの関係ないというか、むしろ楽しんでやっていました。だから、音読も普通にやったし、問題出して答えることもできていたし、昼食も給食に合わせて友達と一緒に食べたりしていました。

学校って、一定期間休むと行きにくくなるんですよね。勉強がどうこうということもなくはないけど、一か月休むと教室内でどんなことがあって、どんなことを共有していたというのから置いて行かれる気持ちになるほうが危ないと思っていて。だから、休み時間もそのままオンラインでつないでおきました。友達からの「今日こんなことがあったんだよ」という情報が大事なんだなと改めて思いました。

Q.「先生がすべてを完璧にやらなければ!」というより、生徒にもある程度助けてもらいながら、授業をつくられていたという感じですかね。

そうですね。持続可能な形にしておかないと、大人や教員の無理や無茶は、めぐりめぐって最終的には子どもに被害がいくので、早めに子どもにも手伝ってもらっていました。

もともとクラスは先生だけでなく子どもたちと一緒につくるべきだと思っています。だから、失敗してもいいしトライすることが大事だということや、失敗から学べることもいっぱいあるんだよって言ってきたことの延長線上なんですよね。コロナ禍になって「いままで言ってきたことは何だったんだろう?」って大人のコントロール下に置かれて行ってしまう状況は学びとしてもよろしくないかなとみています。

子どもの適応能力すごいですね!教員も生徒も助け合うクラス作りが成功のカギだったようです。

Q.コロナ禍の状況はいろんな学校の在り方を改めて考えるきっかけになったと思います。ここから、良い方向に改革が進めばと思いますが、蓑手先生が考える今後の教育のビジョンがあれば教えてください。

3月に公立の教員をやめて、いまは小さな学校をつくっています。新しい学校は公立ではないのでいろんな特色を生かしていきたいと思っていますが、今は公立も私立も99%は同じスタイルの学びになっていると思います。一方でそういった学びのカタチに合わない子はいっぱいいて、ほとんどついていけないとか、非行に走ってしまっているとか、不登校になってしまっているとかは、見過ごしてはいけないことだと思っているんですよね。学びはもっと選択肢があって、子どもたちが選んでいってのびのびできればいいなと思っています。なので、オンラインに限らず、選択肢としてもう少し増やさなければいけないなと思っています。

学校ではどうしてる?どうしたらいい?教えて堀さん、蓑手先生

最後に、視聴者の皆さんからいただいた質問や私が事前取材を通して気になったことを、学校現場のプロである蓑手先生と、感染症のプロである堀さんにお答えいただきました。ここでは、少しだけ紹介します。

質問1.修学旅行どうしたらいい?宿泊行事どうしたらいい?

堀さん:いままでもやっているところもあったり、念のためやめて違う形でやっているところもありました。宿泊の距離を日帰りで行うなど。それは、寝る部屋や食事のリスクを心配したんだと思います。宿泊ができた学校に話を聞くと、一般客が旅行を控えたことによって部屋が空き、個室対応をしてもらえたようです。自分の経験のイメージをしてしまいがちですが、できるかできないかはすべて条件次第なんですよね。

蓑手先生:東京は教育委員会が方針を決めていることが多いです。隣と比べられたりもするところもあって。前原小も昨年度は宿泊がいけませんでした。そこで子どもたちとできる範囲でやりたいことを話し合って、宿泊でやる予定だった「肝試し」と「逃走中」をみんなでやることにしました。

堀さん:小さな子でも話し合いには参加してくれるし、結果的に話し合うことで感染対策レベルが短期間的に上がるんですよね。

修学旅行の個室対応は全く思いつかなかった方法でびっくりしました。
質問2.窓の常時開放や歯磨きの禁止は必要な対応ですか?

堀さん:前から休み時間の換気などはあったと思うので、なるべく今までやってきた通りから動かさないのが良いんじゃないかと思っています。コロナだからやるという「コロナ軸」でいくのは人生として良くないので、標準的にやることに「コロナもそれでいけるよね」という話になっていけばいいのかなと思います。(ウイルスの性質がまだよくわからなかった)昨年の時点で“念には念を”ということで始めた対策は見直しすることも必要です。

質問3.保健所には学校からどのような相談が寄せられていますか?

堀さん:これから先の授業や来年の話の細かい相談はあります。しかし、昨年の状態とは異なり、大抵のことは理解していて保健所の「お墨付き」を求めた相談などもきます。また、「子どもたちのためにどうにかして今年はこれをやりたいんですけど…」といった前向きの相談が増えました。できることって何だろうという方向で話が進んでいます。一方で、教員のワクチン接種率の把握などは社会から突き付けられている責任かなと思います。

蓑手先生:堀さんのような方に監修していただけるのは学校としてはすごくありがたいです。ただ、学校で決められることはほとんどなくて、教育委員会が一括で決めてしまったりはします。

堀さん:学校には学校医、学校薬剤師、保健師がいます。それらの職は専門職なので、地域の専門家として活躍してほしいですね。

蓑手先生:なるほど。ただ、メディアの影響を受けたような保護者もいらっしゃるので、保健的に正しいかというより、誰からも責められない方向に力学が働いてしまうのが学校の弱みではあります。ただ、その結果として子どもに不利益が行くのはおかしいと思っています。なので、そこで専門家の意見があると学校も胸張っていけるのかなと思います。

堀さん:そうですね。確かに判断が微妙なものもありますが、「それはできるでしょ」というもので今後はつまづかないようにしたほうがいいかなと思います。迷ったら専門家に聞けばいいし、迷ったら「子どもの軸」でいこうと思えるかだなと思っています。

活発な議論が起こりましたが、どちらも「子どものために」という点は一致していました。

今回のブログも長くなってしまいました。すみません。蓑手先生や堀さんのお話がどれもとても興味深かったので、ついついたくさん紹介してしまいました。

今回のテーマは「学校の感染対策」ではありましたが、私も「新型コロナとの今後の付き合い方」や、「学びとは何か」など、様々なことを考える時間となりました。

今回の放送をもって「わかんないよね 新型コロナ」の定期放送はいったん終了させていただくことになりました。予定はまだ決まっていませんが、今後は臨時回などで放送させていただくかもしれません。長い間お付き合いいただいた視聴者の皆様、ありがとうございました。

おわりに

このブログでは紹介しきれなかった内容もあります。

詳しい内容を知りたい方は、ぜひ放送アーカイブ(無料)をご覧ください!

「わかんないよね 新型コロナ 9月18日放送内容」

https://live.nicovideo.jp/watch/lv333647203

3:00 この1か月を振り返る~発症日別グラフ(東京都)

9:30 この1か月を振り返る~年代別新規陽性者数(東京都)

12:00 この1か月を振り返る~重症者数・死亡者数(東京都)

16:00 この1か月を振り返る~緊急事態宣言区域

19:50 学校の感染対策

24:00 コロナ下の対面授業~杉並区の取り組み

37:30 コロナ下のオンライン授業~西東京市の取り組み

40:00 休憩コンテンツ「ノーベル賞」

53:30 蓑手先生に聞く~オンライン授業って実際どう?

1:15:00 蓑手先生と堀さんに聞く~学校現場と感染対策について



Author
執筆: 山川 栞(日本科学未来館 科学コミュニケーター)
中学生の時に見たテレビ番組をきっかけに体のしくみに興味を持ち始めました。大学院ではDNA複製に関する研究で生命科学の修士号を取得。その後、治験コーディネーターとして新薬の開発に携わりました。様々な立場の人と話す中で、相手の視点に立つことや客観的に考えることで物事の見え方が変わることに重要性と面白さを感じました。分野を広げて科学と社会をつなげたいと思い未来館へ。