東証の適時開示情報を基に経営権の異動を伴うM&A案件(グループ内再編を除く)について、ストライク(M&A Online)が集計したところ、IT・ソフトウエア業界の2021年7-9月のM&A発表件数は45 件で、7-9月としては2012年以降の10年間では、2019年(51件)、2018年(49件)に次ぐ3番目となった。

取引金額は約1308億円で、7-9月としては2012年以降の10年間では2014年(約1200億円)を上回り最多となった。400億円台の案件が2件あったため、金額が膨らんだ。

  • IT・ソフトウエア業界の7-9月のM&Aの推移

金額トップはブリヂストン

取引金額のトップはブリヂストンが米国子会社を通じて、運送事業者向けに車両運行管理サービスを展開する現地のアズーガ・ホールディングス(カリフォルニア州)を買収すると発表した案件で、取得価格はアズーガの企業価値約428億円に運転資本などを調整して確定するという。

アズーガは、GPSトラッキング(衛星利用測位システムを用いた追跡)やドライバーの動作モニタリングなどの車両運行管理サービスを、6000を超える北米の運送事業者に提供している。ブリヂストンは同社を傘下に収め、車両運行管理サービスのグローバル展開を加速する。

金額の2番目は、楽天グループが通信ネットワーク用ソフトウエア企業の米アルティオスター・ネットワークス(マサチューセッツ州)の株式を追加取得し、完全子会社化すると発表した案件で、取得価格は約400億円。

楽天グループは傘下の楽天モバイルが展開する携帯電話事業にアルティオスターのソフトを利用している。アルティオスターを取り込み、携帯関連の海外事業を加速する。

金額の3番目はパイプドHDがMBO(経営陣による買収)で株式を非公開化すると発表した案件で、買付代金は最大約143億円。

国内投資ファンドのアドバンテッジパートナーズ(東京都港区)と組んで、TOB(株式公開買い付け)を実施し、64%余りの株式取得を目指す。

パイプドHDはクラウドを活用したデータ管理プラットフォーム「スパイラル」を中心に事業展開しており、今後のDX(デジタルトランスフォーメーション)化の進展でサービスの競争環境が一層激しく変化することが予想される中で、中長期的な観点から成長戦略を推し進めるには非公開化が必要と判断した。

このほかに100億円台が2件、20億円台が1件、10億円台が3件、10億円未満が12件、金額非公表などが24件あった。