「買うなと勧められて」41年…奇跡のワンオーナー「ランクル40系」愛車物語

1980年式ランドクルーザー40系のオーナー、筬島(おさじま)孝一さんの愛車レポートをご紹介。趣味にも災害にも活躍する一方、「過保護すぎて笑われた」なんてエピソードも。長く付き合ってわかるクルマのホントがここにある。

車両:トヨタ ランドクルーザー BJ41V-KCY

年式:1980年式

オーナー:筬島孝一さん(67歳)

【画像】奇跡のワンオーナー。美しすぎるランクル40系を写真で見る

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■「買うな」と勧められた

1980年3月31日登録、トヨタ ランドクルーザーBJ41V-KCY(バンタイプ・リヤ観音扉)が私の相棒です。

40年以上前というと、まだ四駆が流行していなかった時代。確かランクル以外は、三菱ジープ、スズキ ジムニー、日産パトロールの時代でした。当時、私の愛車は大分トヨタの竹田営業所・所長が担当してくれました。

所長:筬島さん、ランクルなんか買って、何に使うんですか? 仕事は?…土建業しているんでしょう?

私 :PTO(パワーテイクオフ=動力をエンジンから取り出す装置)ウインチを付けてください。

所長:わかった、林業しているんでしょ?

私 :いや違います。遊びで買うんです。

所長:ランクルを遊びで買う人なんか、聞いたことがないよ。あなた、それで購入したら絶対に後悔しますよ! 今なら契約破棄してあげてもいいですよ!

このように言われる始末。売買の立場が逆になっていましたが、自分の気持ちを押し通し、やっとの思いで手中にしました。

■雪道を思うように走れる

乗ってみて最初の印象は、

①エンジン音が大きい 

②フロントガラスの天地幅が狭い

③後部に荷物が想像以上に載らない、でした。

私は写真家の端くれですが、当時はアマチュア写真家で、風景写真をメインに撮っていました。大分県から熊本県を結ぶ、通称「九州横断道路」のなかの大分県別府市から熊本県阿蘇市一の宮町の間には、写真の絶景ポイントが多数あります。特に秋から冬にかけては九州なのにけっこう雪が積もる場所でもあります。

土・日にかけて雪が舞い始めると、ワクワクして眠れません。夜中の2時くらいから準備を始めて、純正チェーンを4輪に装着。時間は2時間以上かかりました。朝方の写真を撮りたくて、撮影ポイントまで積雪なしの場合で約1時間半くらい、積雪があればその倍の時間がかかるので午前4時ごろに家を出発します。

インパネにあるノブを引っ張って、高速の4駆(4H)に切り替えても、さすがに4輪にチェーンを装着して走るとスピードは出ず、ギヤはほとんど3速、やや上りになると2速に変速。この当時、トヨタのディーゼルエンジンはあまり評判がよくなかったのか、この“ランクル41”にはダイハツが開発した2B型エンジンを搭載。エンジン音はかなり高いが、“まだまだ行けますよ”的な感じの音です。

家から離れて、だんだんと標高が高くなると下界では見られない景色が広がってきます。ひざの高さを超すような積雪でも、さすが四駆で4輪チェーン装着と来れば、思うところを思うように走ってくれます。

すれ違うクルマはほとんどなかったのですが、前方から1台、ライトの位置がかなり高いクルマが近づいてきます。いったいどんなクルマがこんな朝方に?といぶかしんでいると、日本道路公団のランドクルーザーFJ55でした。前面に装着した排土板の上にライトが付いていて、すれ違うときにはこちらの目線の高さがライトの高さになります。どうりで高いはずです。ちなみにタイヤは4輪ともスパイクでした。

■雨の日は乗らない!

納車から41年が過ぎたわがランクル。恥ずかしいですが新車購入後、実走距離は8万2600㎞あまり。ただし、購入4〜5年で4〜5万㎞まで走っています。あるとき、私の41より新しいタイプのBJ44を見たところ、4輪のタイヤハウスの上側がサビで穴が開いているのを見てショックを受けました。それ以来、四駆なのに悪路をできるだけ避けるという、およそ四駆オーナーらしくない、ちょっと恥ずかしい所有スタイルに変わりました。

ここ数十年は年間の走行距離が1000〜2000㎞といったところです。大げさでもないのですが、私は日ごろ、湿度60%以上、降水確率が30%以上の予報が出れば、まず車庫から愛車を外に出すことはありません。

ですが、以前に1度だけ、その読みが甘かったことがありました。途中で雨に降られてしまい、あわてて帰宅したのです。そのときは車庫のなかでタオルを使ってボディを拭き上げ、アンダーボディの部分には扇風機で強制的に風を当てて乾かしていましたが、それを友人に目撃され、「過保護すぎ!」と笑われたことを思い出します。

天気を見て「よし今日は乗ろう!」と発起し、車庫から出すときはいつも、恋人とデートするような、家族以上の“何か”があります。

■主治医がいる安心感

十数年前に新車当時と同じ色でボディを塗装(クリア塗装も追加)しました。購入から40年を過ぎるとパーツが製造中止になり、在庫がだんだんと底をつき始めてきています。

2年ほど前にはヘッドライトの片方が切れました。当時のヘッドライトはライト全体にガスが入っていて、切れたときにはライト全体を交換するものだったのですが、最近はバルブ本体の交換になっているようでディーラーではその代用パーツしか手配できないとのこと。

そのことを近くの民間修理工場に行って話したところ、「インターネットで探してあげますよ!」と。1カ月ほど待って、やっと品物が入荷して、一難を乗り越えホッとひと安心。その後は夜の出動も億劫になっています。

そして、先日は晴天時にドライブしていると、車内にいつもと違うにおいが…。メーター関係には異常はないようでしたが、何かおかしいと思い、駐車場に入り、ボンネットを開けて目を凝らして見回しました。すると、ラジエターの冷却水が通る小さなホースから、冷却水(不凍液)が漏れてにおいを発していたのでした。あわてて水温計を見ながら30分ほど自走してディーラーに緊急入院。

直径3㎝、長さ10㎝ほどのラバーホース1本を全国のディーラーから探してもらうも、指定の純正部品は在庫ゼロ。今の大分トヨタにはランクル40系には特に詳しい若手のメカニックがいます。彼は全国にランクルのネットワークがあり、パーツの融通し合いや指定の部品番号とは異なるものの、多少の加工で装着できるといった情報を持っています。小生のランクルにとって、なくてはならない貴重な“ランクル主治医”なのです。

その彼が大分トヨタに入社する数十年前の、車検時の会話を思い出しました。「筬島さん、車検は完了したのですが、何で後部座席の間にヒーターを付けたんですか? じゃまで荷物も載らないでしょう?」と当時の社員さんに言われたのです。「私もそう思いますが、これは新車当時からですよ」と。「え〜!! 新車からこんな所にヒーターが付いているんですか? 知らなかった〜」という当時の懐かしい思い出です。

■台風でウインチが役に立つ

わが家は市内から外れた山の中で、“ポツンと一軒家”に等しい場所にあります。風呂は薪と“天日ヒーター(集熱湯沸かしシステム)”。晴天時は冬でも朝に屋根上に水を上げておけば、夕方には熱くて入れないくらいの温度になります。水は家の中に井戸、すぐ近くに地下40mのボーリングからの水と、年間を通して一定量の湧水があります。ぜいたくこそありませんが、ふだんから半自給自足の生活です。

2020年の秋に大型の台風がやってきたときのこと。パートで勤めている職場で、都会育ちの若い人たちに、わが家のスローライフの話をしていたところ、街なかの便利な所に住んでいる2人が「停電か断水したらアウトだから、筬島さん家に避難させてください!」と言ってきました。

今まで台風など自然災害を受けたことは一度もありませんでしたが、夜にかけて一段と風雨が強くなりました。車庫でジビエバーベキューをしていましたが、気がつけば背中は巻き込む風雨でびっしょり。「じゃあ、背中も濡れてきたから上がって寝ようか」と床につきました。

翌日、台風一過の太陽の光で目が覚めました。女房が私たちの朝食を作ってくれている間、家のまわりに被害がないか見回っている最中のこと。泊まっていた2人のうちの1人が「筬島さん、あれを見て!」と。家の庭先で直径40㎝、長さ15mのクヌギの木が道路に直角に倒れて、通行不能になっていました。これでは外に出られません。

あわてる2人を横目に見ながら、ニヤリ。「心配するな! 脱出できるから手伝ってくれ!」。わが誇るランクルの出番です。PTOウインチとチェーンソーを使って、約3時間かけて倒木処理を行いました。そして、“脱出成功!”。朝食は昼食になってしまいましたが、満足の時間でした。

あと何年乗れるかなあ〜。ランクルのほうが長生きしたりして…。

〈まとめ=ドライバーWeb編集部〉※driver2021年10月「ぞっこん!愛車物語」より