BREIMENの高木祥太が語る、私小説的な歌の世界と音楽ルーツ

音楽、文芸、映画。長年にわたって芸術の分野で表現し続ける者たち。本業も趣味も自分流のスタイルで楽しむ、そんな彼らの「大人のこだわり」にフォーカスしたRolling Stone Japanの連載。著名人やアーティストから注目を集めるミクスチャーファンクバンド、BREIMEN。中心人物の高木祥太が表現する私小説的な歌詞の世界、ソウルやファンクなどの音楽ルーツ。2ndアルバム『Play time isnt over』に深く刻まれたパーソナリティを探る。

Coffee & Cigarettes 30 | 高木祥太

CHARAやTempalay、TENDREなどのサポート・ベーシストを務める高木祥太を中心に結成された、5人組バンドBREIMEN。他のメンバーたちも、eill、フィロソフィーのダンスなど、様々なアーティストのサポート・アクトとして引っ張りだこの「セッション・ミュージシャン集団」ともいえる彼らは今、多くの著名人やアーティストから熱い支持を集める注目の存在だ。

今年5月にリリースされた2ndアルバム『Play time isnt over』では、高木のルーツであるソウルやファンクはもちろん、ロックやエレクトロ、ディズニー音楽などあらゆるジャンルを取り込みながら、カテゴライズ不能なサウンドスケープを展開。いっぽう高木の書く歌詞世界は、長引くコロナ禍によって疲弊した世界に対し「こんな時だからこそ、クリエイティブを忘れずに生きていれば、きっと自分自身を癒すことができる」と歌う表題曲をはじめ、自身の実体験に基づくドキュメンタリー的な内容になっている。

「僕はこれまでサッカーと音楽しかやってこなくて。ある意味それがコンプレックスでもあるんですよね。映画や本などに深くのめり込んだことがないから、歌詞も自分の中にあるものや、自分の身の回りの人とかから広げたり、そのまま歌ったりしている感じなんです。例えば僕は今、共同生活を営んでいるんですけど、『赤裸々』という曲はまさにそこで起きた出来事……ソリの合わない2人が夜通し語り合っていたことをモチーフにしているんです。前作『TITY』では、お付き合いなどさせていただいたり、させていただかなかったりした女性のことを歌ったりしますし(笑)、確かに友人にも『お前の曲はドキュメンタリー映画を見ているようだ』と言われたことはありますね」

まるで太宰治のような、私小説的な歌詞の世界。それはある意味、自分の人生や魂を切り売りするようなもので、精神的にもつらいことが多いのではないだろうか。単刀直入にそう尋ねると、苦笑しながらもざっくばらんに話してくれた。

「『TITY』では女の子について歌い過ぎてしまって、もうエピソードのストックは残っていないし……このままだと自分の人生を狂わせながら曲を作っていくしかないのかなあって(笑)。どうしよう?と悩んでいた矢先にコロナになって。そのことはもう避けて通れなくなっていますよね。今作の歌詞は、コロナになっていなかったらきっと全然違うものになったと思います。いずれにしてもハードモードな生き方ですよね。以前、槇原敬之さんが『雨の水滴が、ガラス窓についているのを見ているうちに1曲できた』とおっしゃっているのをどこかで聞いて。自分も早くその境地にいきたいと思いました(笑)」

Photo = Mitsuru Nishimura

コロナ禍で外出が難しくなり、外からのインスピレーションを得られなくなる日々が続いたことで、自分自身の内面と向き合う時間も増えたという。「音楽家と資本主義社会って本当に相性が悪いというか、この世界で生きていくのはなかなか大変ですよ」と高木は打ち明ける。

「そのことは以前からずっと考えていたのですが、コロナになってより強く思いますね。例えば、『なるべくコストを抑えて売れるものを作る』ということが、資本主義社会では『よし』とされているじゃないですか。でも音楽や芸術って、本来コストを気にしながら作るものではないと思うんです。出来ることならいくらだってお金はかけたい。ただし、そうしたことで聴く人が増えるか?といえば必ずしもそうとは限らなくて」

そんなジレンマを抱えつつも、「僕はそれでもいいと思っているんです」と高木。「のたれ死ぬのを覚悟でやっているというか。それは、自分が音楽を選んだ時点でミュージシャンの両親からも言われていたことなんですよね。『音楽家は食えないから大変だよ?』って。”市民権”なんて得られなくて当然というか。モーツァルトですら食えていなかったわけだし。ただ、そこにカッコよさというか、ロマンを感じる自分もどこかにいたりもしますしね」

そう言って、笑いながらタバコに火をつける。

「俺はたぶん、一生吸っているだろうなというくらいタバコを愛していますね。これは自論なんですが、本質的に、タバコとコーヒーとビールって美味しくないと思うんですよ(笑)。初めて口にした時、どれも『美味い』とは思わないじゃないですか。嗜んでいるうちに、少しずつその味がわかってくるというか。タバコだったら”苦味”の先の”甘み”だったり、ビールだったら”爽快感”だったり。そうするともう、やめられない(笑)。あと、僕はジブリ映画の喫煙シーンが大好きなんですよ。『風立ちぬ』とかひっきりなしに吸っているし、それが絵になる。ジブリってゴハンを食べるシーンもいいし、体に何かを摂取している時の描写が上手いんですよね。それに憧れて吸っているところもありますね」

それにしても、私小説的な歌詞の書き方といい、音楽家としての覚悟といい、タバコに対する独特の見解といい、高木祥太という男にはどこか「昔ながらのアーティスト」と形容したくなるような雰囲気が漂っている。それは、フラメンコギタリストの父親と、フルート奏者の母親のもとで育ったことも影響しているのだろうか。

「それはあると思いますね。親父は毎晩、ジャズライブハウスに出て取っ払いのギャラで生活していたわけで。固定給ではもちろんない、”その日暮らし”の親をめちゃめちゃかっこいいと思っていました。そんな父と母の周りに集まってくる、食えないノイズミュージシャンとかをずっと見てきたし、『好きなことやらなきゃ意味がないでしょ』という考えはきっと小さい時からあったのだと思います」

Photo = Mitsuru Nishimura

現在は映像作家の2025や、BREIMENのマネージャーらと共同生活を営む高木。そうしたライフスタイルも、両親からの影響は大きいという。

「そもそも今作『Play time isnt over』も、2025と遊びで作ったスパイアクション映画『Play time is over』がモチーフになって生まれたものですし。シェアハウスと言うよりは、行き場がなくなった人たちが行き着く場所というか(笑)。常に人が入れ替わっているし、ここから何か新しいクリエイティブが生まれるような、トキワ荘のような空間になったらいいなと思っています」

こうして話を聞いていると、あらゆるジャンルを取り込みながら進化を続けていくBREIMENの音楽性と、様々な人との出会いの中で形成されていった高木祥太の人間性は、密接に結びついていることがよく分かる。

「結局、人が好きなんですよね。音楽も、その人の人間性が出ているものが好きだし。例えばTempalayやTENDREも、それを奏でている奴らが好きだから音楽を好きになったのか、音楽そのものが好きだから彼らのことを好きになったのか、もはやわからないという(笑)。BREIMENを始める前は、『いろんな人とやりたい』と思っていたんですよ。ジャズミュージシャンも、固定バンドを作らずいろんな人とセッションするじゃないですか。親父のそういう姿を見て、どこかで憧れていたのかもしれないですね、今気づいたけど(笑)。そうやって流動していく中で、変わらない自分のスタンスを大事にしたいと思っているんです」

自ら「飽きっぽい」と認める高木が、それでも今は固定メンバーとともにBREIMENとして活動しているのは、メンバー全員がサポートメンバーとして常に刺激を受けアップデートを続けているからだという。

「だからこそ今回、『TITY』とはまた全然違うアルバムができたわけですから。それと、前作は今まで作りためていた曲の寄せ集めだったのに対し、『Play time isnt over』は一から書き下ろした曲で構成されているんですよ。アルバム1枚、通して聴いたときに気づくような仕掛けを散りばめる楽しさなどを覚えたので、次もやっぱり”アルバム”を作りたい。曲の作り方みたいなものは、今作でなんとなく掴んだつもりでいるので期待していてほしいです。ただ、しばらくは『Play time isnt over』を作った余韻に浸らせてもらおうかな、タバコを吸いながら(笑)」

高木祥太

2014年にBREIMENを結成。メンバー・チェンジを経て2018年7月より現体制の5人組となる(高木はヴォーカル・ベースを担当)。メンバーそれぞれが数多くのアーティストのサポートアクトを勤め、高木自身もCHARA、Tempalay、TENDREなどに参加。2020年2月にリリースしたBREIMENの1stアルバム『TITY』は、J WAVEのSONAR TRAXやTuneCoreの independentAFに選出された。2021年5月には2ndアルバム『Play time isnt over』をリリース。

https://brei.men/

『Play time isnt over』

BREIMEN

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