梶原岳人が語る自身の音楽~何処かにいるあなたへ贈るカバー集~

TVアニメ『ブラッククローバー』アスタ役、『炎炎ノ消防隊』森羅日下部役、『シャドウバース』竜ケ崎ヒイロ役など多くの主演を務め、2020年には第14回声優アワード新人男優賞を受賞した、声優の梶原岳人さん。2020年11月にはavexよりアーティストデビューを果たした彼の、初となるミニアルバム『何処かの君に』が10月20日にリリースされる。カバー曲5曲と新曲2曲を収録したミニアルバムの内容やこれからの自身の音楽について、梶原さんに伺ったインタビューをお届けする。

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――今回のミニアルバム名が『何処かの君に』というタイトルに至った経緯をお聞かせください。

梶原 まず、考えるのに凄く時間がかかりました。決してスッと出てきたタイトルではなくて、凄く悩んで……。アルバムのコンセプトとして、「君」という言葉を大事にしていきたいとスタッフさんと話していて。普通に「君へ」もアリかなと思ったのですが、ライブと並行してタイトルを成立させたいという想いもあったので、どちらにも通じるような言葉を探していきました。僕にとってアルバムは、不特定多数の色々な方が色々な場所で聴いてくださるという感覚で。そして、その人たちがライブで一つの場所に集まるという流れが作れたらと思って、ミニアルバムは『何処かの君に』、ライブは『此処にいる君に』というタイトルに決めました。「君に」なのは、「君へ」よりはカッコつけてないかなと何となく思ったので(笑)。

――英語タイトルを考えたりは?

梶原 考えはしたんですが、カッコつけずに自分の普段の姿とかけ離れていないものをと考えて、結果、英語は使わずでした。

――最終的にどんなアルバムに仕上がったのでしょうか?

梶原 カバー5曲と新曲2曲という構成なんですが、どれが突出してどうというのはなく、全体として一個芯があるというか。聴いていて一つの作品という統一感があるんじゃないかなと。アレンジや音の雰囲気で、どこかしらでそれぞれが繋がっているような感覚がある気がしています。僕がいつも大事にしている等身大の姿や雰囲気を残していただいた感じですね。

――音の雰囲気というと、どんなところを意識されたのでしょうか?

梶原 キラキラした音は好みではなく、どちらかというとあまり整いすぎていない感じが僕は好きで。ビシッとまとまっているよりかは、箇所箇所にどこか粗っぽさがあっても成立するような音作りが僕としては好きなんです。そういうことをスタッフの方にお伝えして、作っていただいた次第です。

――楽曲それぞれのお話もお聞かせください。まずは新曲『魔法が解けたら』から。作曲がSaucy Dogさんですね。

梶原 Saucy Dogさんは、僕がずっと好きなバンドなんです。今回ダメもとでお願いしたら、まさかのOKをいただいた感じでして(笑)。それでまず、スタッフさんも交えずにボーカルの(石原)慎也くんと二人だけでお会いしたんです。二人なんで気を遣うこともなく、最初から友達みたいにタメ口で、自分のパーソナルな深いところまでお話することができました。この曲の基になった出来事や自分の経験も細かいところまでお話したり、慎也くんのお話も聞かせてもらって。この曲は雑談の中から生まれてきた感じですね。

――曲のメロディーはどうやって作っていったのでしょうか?

梶原 メロディーに関しては、まず慎也くんに好きな曲の雰囲気とか音の感じをお伝えしました。しばらくした後、慎也くんから「軽くギターで弾くから聴いてくれない?」と電話がかかってきて、電話越しに弾き語りで1番くらいまで聴かせてもらいました。ギター1本だけだったんですが、とても良くって。「その感じで」とお願いして、その後も電話で曲を聴かせてもらいながら作曲していただきました。

――好きなメロディーやフレーズは?

梶原 「僕も弾き語りしたいから」って2番くらいまではコードを教えてもらっていたんですが、それ以降は聴いていなかったんです。デモを聴いた時にびっくりしたのが、2番以降のメロディーのノリやリズムが変わった感じになっていたこと。そこの箇所がアクセントになっていて、歌詞も含めてとっても歌いたくなるようなメロディーになっていたので、僕の好きな部分ですね。

――MVはどんなテーマで撮影されたのでしょうか?

梶原 この曲に関しては、自分の姿はあまり出したくないなと思っていて。僕自身に目を向けてほしいんじゃなくて、曲自体の物語を見てほしいなと思っていたので、「ほとんど出なくていいです」とお伝えしていました。それを汲んでいただいて、役者さん二人がメインで話が進み、僕はちょこちょこっとだけ出てくる感じになっています。恋愛の曲ではあるので、僕が曲を作る際にお伝えしたエピソードを演技の中に組み込んでいただいています。二人の姿を見れば、曲の世界をより深く知れるような仕上がりになっているんじゃないかと思いますね。

――今回あまり梶原さんの出番はなかったとのことですが、MV撮影時に何か印象深かった出来事はありますか?

梶原 当日、晴れてほしいなと思っていたのに晴れなくて。土砂降りの時もあったほどだったんですが、それが逆に、雨の中でも楽しめる二人の姿をより印象深く表す形になりました。雨だから海だからと髪型を気にしてテンションが下がるとかもなく、そういうのも気にせず楽しめる二人の感じが、僕の理想というか……。傘をさしながら楽しそうにしている姿がとても良かったですね。

――意外なお天気の作用ですね。もう一つの新曲『君と恋をしたいんです。』も恋愛の曲になっています。

梶原 僕が元々、女性ボーカルの方と一緒に曲を作りたいと話していたんです。(今回作詞・作曲を担当した)上野(優華)さんは作られる曲が繊細なんだけど飾らない感じで、僕が作りたいアルバムの感覚と似ていて凄く良いなと思っていて……。今回の曲に関しては、上野さんが既に作られていた曲への男性目線でのアナザーストーリー的な感じになっていて、とても僕の好きなイメージの曲に仕上がっています。

――デュエットもされていましたが、レコーディングはいかがでしたか? 

梶原 自分で言うのはあれですけど、ハモる部分は声の雰囲気がとてもマッチしていたというか、その場で聴いて凄いなと鳥肌が立つような感覚があって。聴いていて耳が癒やされるなという雰囲気がありましたね。ハモりのバランスとかを考えて、何度か録り直しもしています。

――カバー楽曲についても、オリジナルとの違いや曲の印象などそれぞれお聞かせください。the pillowsの『Funny Bunny』はいかがでしょうか?

梶原 『Funny Bunny』は学生時代にバンドをやっていた頃から結構聴いていて。スタッフさんが僕に合いそうと提示してくださったカバー候補の中から、元々この曲好きだったなと選んだ1曲です。僕がそもそも、バンドで最少人数でもガツンとかっこよく成立しているような曲が好きなんですが、この曲もそんな曲で。原曲に対してアレンジはちゃんと加わっているけど、原曲の良さは残っているような感じになっていて、とても好きな雰囲気になっていますね。

▲MV撮影時のオフショット。

――TRIPLANEの『君ドロップス』は?

梶原 『君ドロップス』は、スタッフさんの一押し楽曲だったんです。歌詞もめちゃめちゃポジティブという訳ではないのですが、最終的に「『幸せ』なんだよ」というフレーズで終わることもあって、凄く心地が良い歌詞で。上手く言葉にできないんですが、何か心地良い感じをもった、いくらでも聴けちゃうような曲なんです。今回、間奏がアレンジとして加えられたんですが、元々原曲にあったかのような素敵な間奏なので、是非注目してほしいです。

――さかいゆうさんの『ジャスミン』はいかがですか?

梶原 『ジャスミン』は、ジャズっぽい雰囲気がある曲なので、アレンジもそんな雰囲気になっています。ブラスとストリングスが足されているんですが、それが僕はめちゃめちゃ好きで! あまりごちゃごちゃした音が好きではないんですが、これは音数が多いのに、ガツッとハマっているアレンジになっているんです。他の曲と違ってリズムの乗り方も違っていて、ミニアルバムの中で良いアクセントになっていると思います。

――椿屋四重奏の『紫陽花』は?

梶原 『紫陽花』は、原曲とはだいぶ違ったアレンジになっています。ギターとカホンとハーモニカとボーカルの4つの音だけで作っているんですが、これだけは一緒に「せーの」で同時に収録しているんです。最初はちゃんとクリックやリズムをとって収録していたのですが、リズムをちょっと変えたい時に自由度がせばまってしまう感覚がありまして。最後、記念にクリックなしで自分達のフィーリングでやったのですが、これがOKテイクになりました。こっちが少しリズムを変えたら、向こうも変えてくれて。目線と呼吸に合わせて変えていく、生きた曲になったなと思います。

――最後はYUIさんの『I remember you』。

梶原 『I remember you』は今回唯一、自分からカバーのオファーをさせていただいた曲です。YUIさんの『CAN'T BUY MY LOVE』というアルバムが小学生の時から好きでよく聴いていたんですが、その中でも好きだった曲を歌いたいと思って。何が好きって具体的にはうまく言えないんですが、いつ聞いてもその時を思い出す懐かしい曲なんです。アレンジも良い具合にしていただいて、自分で言うのもなんですが、僕の声の雰囲気に凄く合っているなと。原曲とはまた違う雰囲気で良かったなと思いますね。

――今後の音楽活動で挑戦していきたいことはありますか?

梶原 より「生」にこだわっていきたいと思っています。今回は時間がなくてできませんでしたが、出来るならば、楽器のレコーディングとかにも関わっていけたらなと思っています。作詞だけでなく作曲も含めて、自分としての表現の幅を広げていければと。音数に関しても、今回よりももっと減らせるんじゃないか、少数精鋭にできるんじゃないかと思っていて。それでも成立するものを作ってみたいなと思いますね。シティポップや90年代っぽい曲も好きなので、挑戦出来れば良いなと思っていて。やりたいことは結構色々あります。

――昨年11月のアーティストデビューから、もう少しで1年。この1年で何か変化を感じることはありましたか?

梶原 そこまで大きな心持ちの変化はないんですが、音楽を聴く時に、この歌詞は良いなとか、この音使ってみたいなと、昔バンドをやっていた時の感覚に戻る部分も出てきました。自分のやっている活動に対して、より感覚を敏感にして捉えていくようになりましたね。アンテナが広がった感じはあります。

――アーティストデビューを果たしたことでの周囲の反響はいかがでしたか?

梶原 友達から「CDショップに行ったら、岳人のCD売っててびっくりした。知らなかったけど、そういう活動もしてたんだね」とか言ってもらったりしましたね。純粋にアニメの活動だけだった時は、CDショップに並ぶこともなかったですし。アニメはもちろん力を入れていますが、歌もあることで、別方向の見られ方ができたというか、色々な人に気付いてもらえるようになったというのは良かった点かなと思っています。

――反響という点ですと、YouTubeなどで公開されているMVに対してのコメントも読んだりされるのですか?

梶原 ちょっと読むのが怖いなと思ってしまうので(笑)。あんまり見ないようにしているんです。今まで音楽活動に対してリアルに声を貰ったことがないから、受け止め方がまだ分からない所もありまして。

――ライブで生の声が聞けたら、また変わるのかもしれないですね。11月28日には、初のワンマンライブも控えています。意気込みをお聞かせください。

梶原 これまでイベントなどで1、2曲は歌ってきましたが、その度に、一人は寂しいなと思っていて。自分がバンドをやっていたこともあって、出来上がった音源を流しながら一人で歌うよりも、実際にその場で一緒に作る音楽が好きなので、今回は実際にバンドを入れていただくことになりました。自分としては理想の形です。ちょっとミスをしたとしても、バンドだと合わせてくれる。心にブースターがかかったら、バンドも付いてきてくれる。その場その場で作っていけるのが何よりの魅力かなと思います。その場でしか届けられないものを皆さんにお届けできたらと思っています。

――ワンマンライブはご自身のお誕生日当日の開催となりますが、新しい1年の抱負についてもお聞かせください。

梶原 気付けば30歳も近いかと思うと怖いですよね……。この間まで高校生だったのにって(笑)。でも、積み重ねたものもたくさんあると思っています。まだまだぺーぺーではありますが、役者の仕事も始めてから5~6年経ちますし、その間、ただのうのうと生きてきた訳ではなく、色々と考えながら生きてきました。そういった積み重ねを絶対に無駄にしたくないので、しっかりと糧にできるように過ごしていきたいと思っています。役者としての表現が広がれば、音楽の表現の幅も一緒に広がると思っているので、まずは役者としての表現の幅を広げていきたいと思います。

――ありがとうございます。最後になりましたが、今回のリリースを心待ちにしているファンの方へ向けてメッセージをお願いします。

梶原 スタッフの方にも尽力していただいて、こだわりはたくさん込めました。それぞれの曲が僕のとても好きな曲です。とにかくたくさん聴いてもらって、皆さんにも好きになってもらえたら嬉しいです。解釈は色々出来ると思いますので、ご自身が思うように好きに聴いてもらえれば。そして、もし良かったらライブにも来ていただけると嬉しいです。

<プロフィール>

梶原岳人(かじわら がくと)

11月28日生まれ。東京俳優生活協同組合所属。主な出演作はアニメ『ブラッククローバー』(アスタ役)、『炎炎ノ消防隊』(森羅日下部役)、『古見さんは、コミュ症です。』(只野仁人役)、『あんさんぶるスターズ!!』(天城一彩役)ほか。2020年、avexよりアーティストデビューを果たす。