全上場企業に義務づけられた東証適時開示情報のうち、経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A仲介のストライク(M&A Online)が集計したところ、IT・ソフトウエア業界の2021年9月のM&A発表件数は17件で、9月としては2012年以降の10年間では、2018年(23件)に次ぐ2番目(2019年と同数)となった。

取引金額は181億円で、9月としては2012年以降の10年間で2014年(1093億円)、2015年(456億円)に次ぐ3番目となった。100億円を超える大型案件が取引額全体を押し上げた。

  • IT・ソフトウエア業界 M&Aの推移(9月)

取引金額のトップはパイプドHDの143億円

取引金額のトップは、パイプドHDがMBO(経営陣による買収)で株式を非公開化すると発表した案件で、買付代金は最大約143億円。

国内投資ファンドのアドバンテッジパートナーズ(東京都港区)と組んで、TOB(株式公開買い付け)を実施し、64%余りの株式取得を目指す。

パイプドHDはクラウドを活用したデータ管理プラットフォーム「スパイラル」を中心に事業展開しており、今後のDX(デジタルトランスフォーメーション)化の進展でサービスの競争環境が一層激しく変化することが予想される中で、中長期的な観点から成長戦略を推し進めるには非公開化が必要と判断した。

金額の2番目は、メディアドゥがDeNA傘下で小説投稿サイトの運営や投稿された作品の出版などを手がけるエブリスタ(東京都渋谷区)の株式70%を取得し子会社化することを決めた案件で、取得価格は20億6500万円。

エブリスタの投稿コミュニティーサイトとしての機能を強化し、読者・ユーザーとのダイレクトコミュニケーションによって多様な作品が生み出される環境、サイクルの構築につなげる。

金額の3番目は、Sun Asteriskがゲーム開発やデジタルコンテンツの制作を手がけるTrys(東京都港区)の全株式を取得し子会社化することを決めた案件で、取得価格は5億7300万円。エンターテインメント領域の事業を拡大するのが狙い。

このほかに4億円が1件、2億円台が3件、1億円以下が1件、金額非公表と未確定が合わせて9件あった。