重厚なライトセーバー戦に注目!『スター・ウォーズ:ビジョンズ』『The Elder』大塚雅彦監督インタビュー

日本を代表する 7 つのアニメスタジオが、「スター・ウォーズ」の世界を舞台に独自の”ビジョン”で9つの新しい物語を描くビッグプロジェクト『スター・ウォーズ:ビジョンズ』。

9月22日よりディズニー公式動画配信サービス Disney+ (ディズニープラス)で独占配信が開始されており、「スター・ウォーズ」の世界をさらに広げ、より深く掘り下げる最新作として大きな話題となっている。

いずれも見応えのある9本の短編のなかから、今回はスタジオTRIGGER制作の『The Elder』を紹介、大塚雅彦監督のインタビューをお届けしよう。

『The Elder』は『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』より前の時代を舞台に、謎の剣豪とジェダイ師弟の戦いを描く活劇だ。

主人公は経験豊富なジェダイマスターのタジンと若いパダワンのダン。

訪れる者も少ない辺境宙域をパトロールしていた二人は、怪しい気配を感じ惑星ハボに降り立つ。

星の住人から数日前に一人の老人が小型のスターシップで飛来したことを聞き、調査を開始する二人だが、老人が乗って来たスターシップを目にした時、タジンの脳裏に不吉な予感が漂い始める……。

「スター・ウォーズ」をきっかけに映像の道を目指したという大塚監督が描いたのは、「スター・ウォーズ」のルーツのひとつである日本の時代劇の雰囲気を取り入れた剣戟アクション。

作品の見どころや、貴重な制作の裏話を語ってもらった。

>>>【画像】『The Elder』の場面カットほか(写真5点)

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「スター・ウォーズ」の監督になった気持ちは?

ーーご自身の監督作が「スター・ウォーズ(以下「SW」)」の世界にラインナップされ、「SW」の監督としてお名前がクレジットされたお気持ちはいかがですか。

大塚 自分自身、「SW」みたいなものを作りたいと思って仕事をはじめたところはあるのですが、アニメというジャンルの違いもあって自分が「SW」を作るとは妄想さえしたこともなかった。だから、信じられない、夢のような気持ちです。クレジットに「原作:ジョージ・ルーカス」と出て、その後に自分の名前が出る。ギャグかと思うくらいに、現実味がなかったです(笑)。でも、本当に嬉しかったですね。

ーーでは、お仕事の話を受けられた時も半信半疑というか。

大塚 海外の知り合いのスタジオが「SW」の仕事をしていたので、羨ましいなという話はしていたんです。まさか、本当に自分たちにオファーをいただけるとは思っていなかったので、お話をいただいた時はもう「やるしかない」という気持ちでした。

ーーしかも今回は、公言なさっているようにご自身のクリエイターとしてのキャリアはひと区切りと。

大塚 確かに、そう言ったとは思うのですが……その件がやたらとクローズアップされてしまって驚いています。もともとTRIGGERを作った時に「僕は演出としてはここで引退だ」くらいのつもりでいたのですが、なかなか現場が大変なので何だかんだ10年くらい手伝ってきました。でも、そろそろいいでしょうと思っていたところに今回の話がきたので、いいタイミングかなと感じて周囲にも「この作品で最後」と言ったのですが、それが外にも広まって「最後の作品」ということになっています……でも、それほどのニュースではないと思うのですが(笑)。

ーーいえいえ(笑)。さて、今回は短編のオファーだったと思いますが、スタートとしては「何を作ろう」という発想があったのでしょうか。

大塚 尺が短い中でちゃんとキャラクターを立てたいと思ったので、アクションとエピソードのバランスが取れたものにしなければ、というのがまずありました。正直、短編ってアニメとしてはそれほどコストパフォーマンスがよくないと思うんですよ。短いフィルムのためにデザインから起こさなければいけないので。自分としては経営者の立場もあるので、膨大な赤字を出すわけにもいかないと計算もした上で、やれる範囲で作ろうということですね。それから僕は、実は高校生の頃に「SW」をモチーフにした時代劇の人形アニメを作っていたことがあるんです。その記憶もあって、ぱっと思い付いたのが「SW」で時代劇をということ。ジョージ・ルーカスも好きだった黒澤明監督の時代劇のような雰囲気を持った「SW」になればいいかな、と。それを実現しようというのがひとつのコンセプトでした。

ーーおっしゃるとおりで、ルーカスが日本の時代劇に大きな影響を受けているというのはよく知られた話ですね。今回の『The Elder』は特に時代劇の雰囲気が強く出ていると感じました。ジェダイの服装なども、もちろんオリジナルの設定通りではあるのですが、どことなくより和風になっている感じで。

大塚 そうですね、もともと日本の文化が「SW」に影響を与えているということは広く言われていたので、時代劇的な雰囲気に合うだろうという部分を活かしながら、もう少し時代劇の雰囲気がより出るようにしたいなと思いました。そこは、作品の中に色濃く出ているとは思います。

ーーストーリー、映像、キャラクターといった部分では、短い尺の中で何を見せたいと考えましたか。

大塚 短いとはいえ、キャラクターにお客さんが興味を惹かれないのはおもしろくないので、登場人物がどういう人かちゃんとわかってもらうというのがまずひとつ。そして、やはり「SW」で最初に誰もが真似するのがライトセーバーのチャンバラ。それは外せないし、元々はルーカスもそこを目指したんじゃないかなと思うので。日本の殺陣の雰囲気で、誰もが好きなライトセーバーの戦いを描くというのは演出上の大きなテーマでした。

ーー謎の剣豪とジェダイとの戦い。その謎の剣豪は二刀流の使い手で、60〜70年代の時代劇のような外連味がありました。

大塚 そうですね、僕も時代劇は好きだったし。昨今は時代劇の映画自体が下火になってしまいましたが、日本映画が全盛だった頃の時代劇は今観てもとても刺激的です。役者さんが持っているオーラのようなものも含めて、今観ても魅力がある作品が多い。そういう、今の日本映画では観られなくなってしまったものを「SW」という舞台を使って再現する、これも、アニメーションならではだと思ったので。自分自身、作っていてとても楽しかったです。

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あえてクラシカルな殺陣にこだわった

ーー「SW」シリーズ自体も、アクションは時代を追うごとに派手になっていきましたが、今回のライトセーバーアクションは第1作である『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』のオビ=ワンなどを彷彿とさせるような、どっしりとした動きでした。何となく昔に戻ったような感覚もありました。

大塚 今作は、時系列自体は『エピソード1』よりも過去というのもありました。実際の映画としては旧3部作が先ですが。その、時代の深さのようなものも感じてほしかったので。あまりアクロバティックにしないほうが、古の時代の戦いの雰囲気が出るのかなと。だから、あえてクラシカルな雰囲気を連想させるような殺陣をチョイスしたというのはありますね。

ーーライトセーバーの剣戟を描くにあたって、たとえばライトセーバーの扱い方、描写の仕方といったものに関して、ルーカス・フィルムから「こうしてくれ」とか「こういうルールがある」といったサジェッションなどはあったのでしょうか?

大塚 細かい設定の部分に関してはシナリオの時点からいろいろ監修を受けましたが、殺陣に関してはあまりなかったです。わりと、こちらのアイデアをそのまま活かす形でやらせてもらいました。

ーーちなみに、制作者だけに公開される公式設定資料などがあったりするのでしょうか?

大塚 うーん。意外となかったですね。最初のアイデアは基本的にこちらから出して、それに対してサジェッションがあるという感じです。

ーーではある意味、皆さんが持っている「SW」に対する思い入れや知識が公式にジャッジされる、というような?

大塚 そうですね。もちろん、企画自体が通らないと作らせてもらえないので。それから、今回の企画には何社かのスタジオが参加されるということも事前に聞いていたので、「他所は何をやるんだろう?」というのも気になりました。ネタ被りはしたくはないし、かといってそんなに斬新にしすぎても……というのもありました。「SW」であるというポイントを外さないように、なおかつ他所と被らないようにというのは気にしましたね。そこで若干思ったのは、時代劇っぽいスタンスというのはリスキーかもな、と。「SW」が好きな人なら、黒澤さんや時代劇からの影響はぱっと思い付くだろうなと思ったので。

ーー先ほども話に出ましたが、自分が「SW」を作れるとなったら、やはり誰でもライトセーバーの剣戟はやってみたいですからね(笑)。

大塚 やってみたいですよね(笑)。そこは、多くの人が共通して考えることかなと思ったんですけれど。でも、何より自分がやりたいことをやらないとダメだなと思ったので、そこは被ってもいいやと開き直りました。

ーーそれから「音」なのですが。作中に登場するライトセーバー独特の音は、もちろん公式の素材ですよね。

大塚 そうですね、まさに。今作は、ダビングを日本で一度落とし込んでから、最終的なミックスを「スカイウォーカー・サウンド」でやるという段取りだったのですが、僕はあえて日本でたたき台を作らずに、音をつけずにアメリカに映像を送って、最初からそちらでやってくださいとお願いしたんです。ですから、音は100%公式というか、本物ですね。

ーーでは監督自身も、音が付いたものはアメリカから戻ってくるまで観ていなかった。

大塚 そうです、最終のタビングの会場ではじめて聴いて「おお!」と。

ーー本物がついた! という感動が。

大塚 実は、コロナがなければ僕らもアメリカのスタジオにいってミックスに立ち会えるということになっていたんです。個人的には、そのために今回の企画に参加したと言っても過言ではないくらいなのですが(笑)。残念ながらコロナでそれが叶わず、リモートの作業になってしまいました。「最後の作品」と言っておきながら心残りがあるとすれば、そこですね。

ーーちょっともったいなかったですね。「スカイウォーカー・サウンド」はなかなか訪問できる場所ではないですから。

大塚 痛恨ですね。コロナくたばれ! という感じです(笑)。

ーーでは最後に。できあがった作品に対する手応えはいかがですか。

大塚 やりたいことはやれたのかなと思います。今は「SW」シリーズ自体が膨大になりすぎて、「今まで観てこなかった」という人が尻込みしてしまう部分もあるのかなと思うのですが、今回の作品がそういう人たちの入り口になるといいのかなと思っています。「SW」をほとんど知らないという人が観ても大丈夫なように作ってあるので。そして、僕自身も「SW」が好きですから、細かいところにこだわって作っている部分もあるので、もちろん「SW」のファンの人にも観ていただきたいです。初めて観る人、長年のファンの人、どちらも楽しめるものになっていると思うので、気になったらぜひ観てください。

『スター・ウォーズ:ビジョンズ』はディズニープラスにて独占配信中。

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