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2021年10月29日よりヒューマントラストシネマ渋谷、シネリーブル梅田にて上映される(その他の地域も順次上映予定)「シッチェス映画祭」ファンタスティック・セレクション2021にラインナップされている台湾映画『ゾンビ・プレジデント』は、政治家たちが国会内で次々とゾンビ化していく様を、なぜかプロレス感覚満載のハイテンション・アクションで描いたナイスな(!?)ホラー映画です。

まあ、日本の国会でもこのようなことが起きないことを祈りつつ(?)、我が国もまもなく衆議院選挙が行われますが、選挙をモチーフにした作品も数多く作られ続けています。

(はい、今回は何とも強引な繋がりでお届けしています!)、

今回はその中から2011年度のアメリカ映画『スーパーチューズデー~正義を売った日~』をご紹介!

大統領予備選挙の内幕を
サスペンスフルに描出



“スーパー・チューズデー”とは、アメリカ合衆国大統領選挙の予備選挙や党員集会が集中する3月第2火曜日を指します。

立候補者は自党大統領候補としての使命を確保するために、この日をいかにうまく乗り切るかがキモともなっています。

映画『スーパー・チューズデー~正義を売った日~』も、スーパー・チューズデーを象徴的に捉えながら大統領予備選挙の内幕をジョージ・クルーニーの監督・主演で描いたもの。

2004年の民主党大統領予備選挙に立候補したハワード・ディーンの選挙スタッフだったボー・ウィリモンが書いた戯曲“FARRAGUT NORTH”が原作になっています。



正義感溢れる野心家のスティーヴン・マイヤーズ(ライアン・ゴズリング)は、民主党の有力候補で清廉潔白なイメージのあるペンシルバニア州知事としての実績があるマイク・モリス(ジョージ・クルーニー)の選挙キャンペーンを牽引する広報官として、ベテラン参謀ポール(フィリップ・シーモア・ホフマン)とともに活動しています。

そんな選挙戦の最大の山場となるオハイオ州予備選のスーパー・チューズデ-が1週間後に迫る中、スティーヴンはライバル陣営の選挙参謀ダフィ(ポール・ジアマッティ)から極秘の面会を求められ、引き抜き工作を仕掛けられます。

一方、スティーヴンは選挙スタッフのインターン、モリー(エヴァン・レイチェル・リッチ)と親密な関係になっていくのですが……。

メッセージ性もさながら
まずはエンタメとして面白く!



本作は正義感と忠誠心に満ち溢れた青年が、やがて政治のダーティな現実に直面し、さらにはその奥でうごめく愛憎とカネと裏切りの欲望に翻弄されていく様を描いたサスペンス映画です。

敵陣営の巧妙な罠や、男女のスキャンダルなどを経て、若き理想家の青年がどんどん変貌していく様は実にスリリングで、ジョージ・クルーニー監督もそういったサスペンス描写を通して政治の闇を訴えようと腐心している節が大いに感じられます。

ハリウッドを代表する名優ジョージ・クルーニーですが、人道的活動に熱心であるとともに、政治的な姿勢を露にした映画制作に関わるのを厭うことも一切ありません。

元中央情報局職員の回想録に基づく『シリアナ』(05)や、戦後の赤狩り論争を巻き起こしたジャーナリストを主人公とする『グッドナイト&グッドラック』(05)、そして監督も兼ねた本作もまた自身の政治的姿勢の表れと見ることは大いに可能です。

ただし彼の場合、メッセージ性よりもまずはエンタテインメントとして作品が面白く出来ているかどうかを第一に考えているところもあり、ひいてはそれがスムーズにメッセージを伝え得るのだと確信しているようでもあります。

また本作に関してはやはり俳優監督の例にもれず、キャストの魅力を抽出するのを怠ることもありません。

主人公のライアン・ゴズリングはもちろんのこと、ここでのフィリップ・シーモア・ホフマンと敵対するポール・ジアマッティの見事な存在感も忘れることはできません。

なお本作の原題は“THE IDES OF MARCH”、これはカエサルが暗殺された紀元前44年3月15日を意味する言葉でもあります。

これが一体どういう意味を持つのか、それは実際に作品を見てお確かめください。

(文:増當竜也)