グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン代表理事が語る「次代を担う人材育成」

CSRは本業そのもの

 ―― 有馬さんは今後、日本のリーダー層にどんなことを期待しますか。

 有馬 わたしは2008年に富士ゼロックスの取締役を退いてから、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンを今の体制につくり替えたんですよね。その時に始めたのが「明日の経営を考える会」といって、執行役員クラスを対象にした勉強会です。

 これは明日の経営者を育てようということで、企業経営とSDGsとか、企業経営とCSR(企業の社会的責任)とはどういうことなのか? 経営者とはどういう哲学を持つべきなのか? そういうことを明日の会社を担う人たちに考えてもらおうと、1年間のプログラムを組んで勉強してもらっています。

 例えば、CSRというと、寄付だとか、スポンサー活動のように考える人が多いのですが、そんな単純な話ではないよと。CSRはもっと広い意味でサプライチェーン(供給網)やバリューチェーン(価値連鎖)も含めて、自分たちの事業にかかわっている。ですから、本業そのものの問題なんだという意識を持ってほしいと思いますね。

 ―― 受講生は30代、40代が中心ですか。

 有馬 いや、もう少し上で、40代以上で50歳前後の人たちが多いです。これが今13年目に入って、中には社長になった人材もいます。

別にわれわれが育てたから社長になったとは言いませんが、その意味では優秀な人材が育っていると思いますし、われわれにも手応えがありますね。

 ―― 中堅の幹部クラスというのは飲み込みも早いですか。

 有馬 ええ。ただ、将来を担う有望な人材を推薦して下さいと、各社のトップにお願いしているので、もともとレベルが高い人材だというのもありますね。

 わたしもたまに話をしますが、講師は基本的に企業トップや各分野の専門家です。特にわれわれグローバル・コンパクトが掲げている専門分野が人権、労働、腐敗防止、それから環境ですね。そういう専門家や経営者の経験談など、専門知識と経営の両方を学んでもらう。

 そして、最後の3カ月くらいは、参加している皆さんが自分たちでテーマを決めて、チームごとに議論してもらう。その成果を最後は発表してもらい、1年間のプログラムが終了するわけです。すでに卒業生は240~250名くらい、社長やトップ層の経営者になった人も数多くいます。彼らは、期ごとや仲間で連携を続けています。

 レベルが高いので、こちらも真剣に向き合わないといけないので大変です(笑)。

 ―― 有馬さんはこのような若い世代に対しては、どのような言葉を投げかけていますか。

 有馬 あまり格好いいことは思い浮かびませんが、わたしが彼らに期待したいのは自分の頭で考え抜くということですね。

 特にこのコロナ禍において、多くの人たちが自分は何のために働いているのか、企業なら何のために存在しているのか、学生たちなら何のために大学に通っているのかを考えたと思うんですよ。

 今の世の中というのは、なかなか答えの見つけ出しにくい時代になっていますが、わたしは一人ひとりが、自らの頭で考え抜くことが大事だと思います。

【いまさら聞けない】SDGsはどのようにして生まれたのか? 答える人・有馬利男 元富士ゼロックス社長