俳優の吉沢亮が日本経済の父・渋沢栄一を演じている大河ドラマ『青天を衝け』(NHK総合 毎週日曜20:00~ほか)。10月10日放送の第30回「渋沢栄一の父」では、栄一の父・渋沢市郎右衛門があの世へと旅立った。懐の深い父親で、遠く離れた血洗島から、栄一を陰ながら見守り続けた父に、何も親孝行ができなかったと悔いて涙する栄一。吉沢はインタビューで、渋沢にとって「家族の存在は特別なもの」と語っていた。

  • 『青天を衝け』第30回の場面写真

第30回では、新政府の首脳会議で、突然、西郷隆盛(博多華丸)が「まだ戦が足らん」と声を上げるという事態に。また、栄一は井上馨(福士誠治)から、廃藩置県を断行するという極秘任務が託され、大奮闘していく。そんな冬のある日、父・市郎右衛門の危篤の知らせを受け取った栄一は、実家に駆けつけるが、渋沢家は栄一を身分の高い人の作法で迎えることとなった。

市郎右衛門役の小林薫は、栄一の商才は父譲りのものだと捉えていたようだ。公式インタビューでは「市郎右衛門は、非常に現実主義者だということ。どうしたら『人に喜ばれるだろう』『商品価値の高い藍玉が作れるだろう』とずっと研究しながら渋沢家を支えてきた。さらに、頑張った人のことは気持ちよく褒めてあげるような優しさも持っている人。当時には珍しい、時代の先をいくなかなかすごい人だと感じながら演じています。そういうところが、のちの栄一に結びついていることも強く感じます。“この父あって、この子あり”だなと思うことがたびたびありますね」と語っていたが大いに納得。

明治政府の大蔵省に勤めて以降、様々な試練に立ち向かっている栄一。それだけに、栄一にとって家族の存在はオアシスとなっていたようで、吉沢は「とっさまや家族と会っている時の栄一と、明治政府で働いている時の栄一のギャップみたいなものは、けっこう意識したかもしれないです。ずっと難しい顔をして働いている時とは違い、家族と会っている時は、どちらかというと、本当に昔の少年の時のように、純粋な気持ちで向き合っている気がします」と語る。

共に暮らすようになった妻の千代(橋本愛)が、内助の功を発揮してきたのは言うまでもない。吉沢は「お千代は偉大です。栄一がどんなことをしても絶対に味方でいてくれます。家に帰ったらお千代が『お前様』と言って迎えてくれるし、お千代がいなかったらここまでやれなかったんじゃないかなという気がします」と感謝する。

そして、千代役の橋本によって温かい感情が引き出されたという。「一緒にお芝居をしていて、すごく母性というか、安心させてくれる何かを感じます。基本的に栄一とお千代のシーンって、栄一がバーッとしゃべっていることが多いのですが、それを聞いている時のお千代の表情がすごく素敵で、話をしているとリラックスしてきます」。

また、新政府に入ってからの栄一について、「栄一としては、どんどん才覚を発揮していくわけですが、駿府で商いに携わっていた時の栄一風に言う“胸がぐるぐる”するような、“おかしれえ”という感情がどうしても新政府の仕事の中ではなかなか生まれてこない。栄一はただ正しいことをやっているはずなのに、どこかで面白くないという感じがずっと続いています」と解説した。