日立製作所(日立)は10月8日、同社の研究開発拠点「協創の森」(東京都国分寺市)に発電・蓄電・設備保守などの技術を結集させたエネルギーマネジメントシステムの実証環境を構築し、運用を開始したと発表した。

  • 直流型分散グリッドを用いたエネルギーマネジメントシステムの実証環境

今回、同社は「協創の森」の中に、街区・工場・ビル・データセンターなどのエネルギー消費設備を有する多様な業界を想定した直流型の分散グリッドと、同社が半導体や情報通信分野で培ってきた制御技術を生かしたエネルギーマネジメントシステムを組み合わせた、実証環境を構築した。

分散グリッドというのは、大規模発電所の電力供給に頼らず、コミュニティでエネルギー供給源と消費施設を持ち地産地消をめざす、小規模なエネルギーネットワークのこと。直流のエネルギー供給源である太陽光や蓄電池からの出力を交流に変換せず、直流のまま送電する仕組みだという。

具体的に同環境では、太陽光発電システム、蓄電池、ガスを燃料として、必要な場所で電気をつくり、同時に発生する熱を冷房・暖房・給湯・蒸気などに利用できるガスコジェネレーションシステム、EV(電気自動車)、 急速充電器などを接続した直流型分散グリッドに、同社の電力需給調整システムや発電設備の故障・寿命予測技術、AI(人工知能)を活用した電力取引システムなどのエネルギーマネジメントシステムを組み合わせた。

実際の設備やシステムを自由に組み合わせることで、再生可能エネルギーの安定的・効率的・経済的な運用やゼロエミッション化をめざす顧客向けに実証実験の場を提供する。また同社によると、同エネルギーマネジメントシステムの効果を2020年に検証した結果、2018年度との比較で、CO2排出量を20%削減しながら、エネルギーコストを30%削減できることを確認したという。

さらに、電力量インバランスの抑制精度は一般的に10~20%の水準だが、同システムでは2%以下であり、電力制御の指令に対してもエネルギーマネジメントシステムが約30分での応答を可能としている。

同社は今後、同環境を活用して環境分野での顧客協創を推進し、新たなエネルギーソリューションの創出を目指す。