■「芝居が好き」という思いは誰にも邪魔できない

「誰に何を言われても、芝居への思いが微動だにしなかったことが大きいかもしれません。『芸能界は厳しいよ』と言われることはあっても、『あなたは芝居なんて好きじゃないよ』と茶々を入れられることはないじゃないですか。『芝居が好き』という気持ちだけは守ることができたから、そこを基準に『どうすればいいか』を考えて、ならば『遊んでいられない』、『レッスンしなくちゃいけない』、『踊りも頑張らなきゃいけない』と」。

実際にかけられた周囲からの声も冗談まじりに教えてくれた。「『ちゃんとお金を稼いだほうがいい』とか『結婚したほうがいい』とか……『誰かと付き合って有名になったほうがいい』とか『応援してくれるプロデューサーをつけたほうがいい』とか(笑)」。現実、甘い誘惑、近道……松本はすべて排除。「それじゃなりたい自分にはなれない。『売れる』ということより、自分の芝居が良いものになることを考えて、淡々と続けてきました」。

たゆまぬ努力の甲斐あってようやくたどり着いた世界。しかし「こんなに努力を続けてきて素晴らしい」と美談にされることは望んでいない。「私がこれくらい時間をかけないとできない人間だっただけ。“若い人”に伝えられるなら、私のように時間をかけず、賢くやって早めに夢を叶えてほしい」と力強くメッセージを送った。

■偽りの自分で他人に接するのは気持ち悪いしかっこ悪い

ドラマ『教場II』から幕を開けた2021年、今作で主演ドラマは3本目。元旦にはインスタグラムに決意の言葉が投稿されていた。「誰も見ていないところでこそ最高にカッコよく美しく」。“誰も見ていない18年”を抜け出したいま、どんな思いでこの言葉を綴ったのか。真意を聞くと「私もなかなかできないですよ。でも、戒めのためにも言いました。誰も見てないところでかっこいいことをするのは、一番自分の実になるんです」と微笑む。

「こういう取材の場でも『ちゃんとしなきゃ』、『かっこいいこと言わなきゃ』って思わないこと。考えてもいい言葉は出てこないし疲れてしまうから。自然体で話してもちゃんといい言葉が出てくるような人間になりたい。芸能界で私がかっこいいと思うのは皆そんな方たち。ナチュラルな言葉で人を惹きつけられたら、その人自身が素晴らしいという証拠」。そのために必要なのが「見えないところでどう生きるかの積み重ね」だという。

「飾らなくても素敵な言葉が出てくる人間になれば、仕事でかかわる方々に対しても本物の愛情が生まれる。偽りの自分で他人に接するのは気持ち悪いし、かっこ悪い。相手に対して心から『こうしてあげたい』と思って行動することが一番」。どんな職業、どんな人生にも当てはまるロジックだが、松本は女優として自分自身を磨くことを強く意識しているようだ。「人前に立つ仕事だから、人前に立てる人間にならないといけない。人間力を磨くことによって、役者も主演も続けていける人間になれるんじゃないかな」と。“主演を続けていく女優に”――ブレない松本の、次のステージが垣間見えた。

新ドラマ『それでも愛を誓いますか?』について語るインタビュー後編は9日に公開。
■松本まりか
1984年9月12日生まれ、東京都出身。00年に『六番目の小夜子』(NHK)で連続ドラマデビューし、18年『ホリデイラブ』(テレ朝)の井筒里奈役で注目を集める。20年は『パレートの誤算~ケースワーカー殺人事件』(WOWOW)、『竜の道 二つの顔の復讐者』(カンテレ)、『妖怪シェアハウス』(テレ朝)、『先生を消す方程式。』(同)と4本の連ドラにレギュラー出演。21年もドラマ『教場II』(フジ)、『最高のオバハン 中島ハルコ』(東海テレビ)に出演し、『向こうの果て』(WOWOW)、『東京、愛だの、恋だの』(Paravi)、『それでも愛を誓いますか?』(ABCテレビ)と3本の連続ドラマで主演を務める。
■ABC制作ドラマ『それでも愛を誓いますか?』
(ABCテレビ毎週日曜23:25~、テレビ朝日毎週土曜26:30~※TELASAで全話配信)
原作は、電子コミックサイト「めちゃコミック」で1,500万ダウンロードを突破し、2020年上半期総合1位&年間総合2位を獲得した同名漫画(萩原ケイク氏)。結婚8年目、セックスレス5年目、子どもなし――“愛する夫から女として求められない妻”35歳の純須純(松本)は、結婚を機に仕事を辞め専業主婦として生活中。夫・武頼(池内博之)は真面目で仕事熱心だが、「子どもが欲しい」と伝えても交わされてばかり。鬱々とした生活を変えるため、純は契約社員として働き始めることを決意。約8年ぶりの会社生活に戸惑いつつも、10歳年下の若手社員・真山(藤原季節)の素直さに癒されながら、仕事にも慣れていく。一方武頼は、高校時代の元カノ・沙織(酒井若菜)と再会。思い合っているのに、セックスだけがない夫婦――そんな2人に、少しずつ変化が訪れる。

ヘアメイク/板垣美和 スタイリスト/柾木愛乃
衣装協力=SHIROMA、ドーラ/ロードス、ダイアナ/ダイアナ 銀座本店
【協力店】SHIROMA/ダイアナ銀座本店/ロードス