普段から気をつけていても、ふとしたときに無断欠勤をしてしまったというケースをよく耳にします。もし無断欠勤をしてしまった場合、減給や解雇などどのような処分が下されるのでしょうか。また、無断欠勤してしまう方の原因や無断欠勤の対応方法についても解説していきます。

  • 無断欠勤の定義とよくある原因

    無断欠勤してしまう原因はさまざまです

無断欠勤とは

会社に勤めているとある日何かしらの理由で、無断欠勤をしてしまうことがあるかもしれません。まずは無断欠勤の定義と無断欠勤によくある理由をおさらいして、無断欠勤の予防に努めることが大切です。

無断欠勤の定義

無断欠勤の定義とは「従業員が会社への事前の連絡なしに休むこと」です。しかしこの定義は法律で決まっているわけではありません。

そのため、理由が正当でない場合や同僚に連絡はしたが直属の上司に電話で連絡しなかった場合に無断欠勤として扱われることもあります。ちなみに、会社の規定通りの正当な理由で事前に入れたものは欠勤として扱われ、会社の規定通りの手続きをして取ったものは休暇となります。

もしも1人が無断欠勤してしまうと、会社側は予定していた人数が減ってしまうため、業務のさまざまな部分で遅れや支障が出る可能性が浮上します。無断欠勤は上司や同僚、会社全体だけではなく取引先にまで迷惑がかかってしまう結果につながるのです。

無断欠勤の原因

無断欠勤をしてしまう理由は人によってさまざまですが、特に多い無断欠勤の理由を3つご紹介します。理由によっては無断欠勤に該当しないケースもあるため、しっかり判断できるように原因を把握しておきましょう。

自己管理不足

まず1つ目は寝坊などの自己管理不足が原因に挙げられます。「朝が弱いタイプなのに遅くまで飲んでしまった」「アラームが聞こえず寝過ごしてしまった」などのさまざまなケースがありますが、無断欠勤するのではなくまずは会社に連絡を入れるようにしましょう。

本人のだらしなさが無断欠勤につながっているというケースは多いため、生活を見直し社会人としての責任を持つ意識が大切です。もしも生活を変えられない根源が会社の業務内容や業務量にあるようならば、上司に相談してみるのもおすすめです。

社内のハラスメント

次に挙げられるのが社内のさまざまなハラスメントが原因となるケースです。近年、セクハラをはじめアルコールハラスメント(アルハラ)やマタニティハラスメント(マタハラ)など、さまざまなハラスメント問題が取り上げられています。

ハラスメントとは「人を困らせること、いやがらせ」の意味。周りが大したことじゃないと思っていても、本人が嫌がったり嫌な気持ちになったりするようならばハラスメントの対象となります。

ハラスメントによる無断欠勤者があった際の会社側の対応としては、まずはハラスメントが実際にあったのかを調査しましょう。ハラスメントが事実だった場合は、無断欠勤ではなくやむをえない欠勤として扱うこともあります。反対に「欠勤をするほどのハラスメントではない」と会社が判断した場合には、無断欠勤した社員に出勤命令を出す処置を取ります。

ハラスメントによる無断欠勤を未然に防ぐためには、会社での徹底したハラスメント研修と匿名でも相談できる窓口を設けることが大切です。

けがや病気などの体調不良

3つ目の原因は、けがや病気をはじめとする体調不良です。

例えば「職場に向かう途中に交通事故にあってしまい、そのまま病院に運ばれたため会社への連絡をすることができなかった」「急な腹痛のため救急車を呼んで病院に向かったため連絡できなかった」など、即時に会社への連絡をすることができないケースもあります。

その場合は無断欠勤ではなく「正当な」と取り扱ってくれる可能性があります。体調不良とはいえ、よほど連絡が取れない事態以外は会社にすぐ伝えるようにしましょう。

  • 無断欠勤の定義とよくある原因

    会社は無断欠勤者にどのような対応が求められるのでしょうか

無断欠勤が起きた際の対応方法

無断欠勤がその日だけで次の日に出社してくるのであれば対処しやすいですが、もしも何日も連絡もないまま会社に来ない場合、どのような対処をするのが適切なのでしょうか。

ここからは無断欠勤者に対する対処方法を詳しくご紹介します。

無断欠勤が続くときに法的紛争を回避した対応手順

無断欠勤が何日も続くようなら最悪、社員の解雇も考えなくてはいけません。しかし、会社側は法律上相当な理由が無ければ解雇できず、解雇するとしても適切な手段をとる必要があります。訴訟や労働審判などで解雇が無効とならないためにも対応の仕方を覚えておきましょう。

無断欠勤して連絡が来ない社員に連絡する

まずは本人に連絡をして、電話に出るかどうかや身の安全を確認しましょう。この際、連絡をした履歴は残しておくようにしてください。

指導や教育を行う

連絡が取れて安否や欠勤理由を聞いて、「そもそも無断欠勤となるのか」「会社の規則上、処分の対象となるのか」を検討します。処分の重さは欠勤理由などによって変わりますが、始末書を懲戒処分として規定している会社が多いため、厳重注意や顛末書で済むケースもあります。

その後も無断欠勤が何度も続き解雇を検討する場合は、このときの欠勤理由を明確にすることと、注意や指導を行ったという事実が解雇できるかの鍵となっていきます。

連絡しても欠勤が続くならば出社命令を出す

社員と連絡が何日か取れなかったり、連絡が取れても出社して来なかったりするようならば、会社側から出社命令を出す措置が取られます。

メンタル面で無断欠勤が続いてしまう人への対応

会社の対処法として押さえておきたいのが「社員がメンタル面で無断欠勤を続けてしまうケース」の対処法です。

自己管理不足などの無断欠勤とは違い、デリケートな問題となるため病院などの力を借りながら慎重に対処しましょう。

診断書を提出してもらう

まずは社員に心療内科などの病院に行ってもらい、診断書を提出してもらいましょう。診断書があることでメンタル面での問題で欠勤していることが明確になります。

今後の労働環境を本人と話し合う

今後会社で働いていけるかどうかや、本人がこのまま会社で働いていきたいかという意思を確認するために、会社側は話し合う場を設けるようにしましょう。

業務内容や業務量が原因となっているならば、会社側が改善することも検討して下さい。適切な処理をせずに解雇した場合は、起訴されてしまう可能性もあります。

  • 無断欠勤における会社の対応方法

    無断欠勤を続けると重い処分に合う可能性も

無断欠勤で下される可能性のある処分

もし無断欠勤してしまった場合にはどのような処分が下るのでしょうか。無断欠勤してしまった理由や無断欠勤後の本人の態度などによって処分の重さは変わりますが、ここでは可能性のある3つの処分をご紹介します。

譴責

一般的な無断欠勤に対する処分としては、譴責(けんせき)が妥当でしょう。譴責は法令上、戒告とも呼ばれ、「しかり責めること」「不正や過失などを厳しくとがめること」という意味です。

懲戒処分において最も軽い処分で、上司から「社会人として恥ずかしい行為だし、会社にも迷惑がかかるからもう二度としないように」といった注意を受けて終わり、といったケースがほとんどでしょう。

解雇

無断欠勤が続き連絡も取れない場合、会社側は解雇するという手段を取らざるをえないときもあります。しかし社員を解雇するにはさまざまな取り決めがあるため、それらの条件を満たす必要があるのです。

労働基準法によると解雇予告は解雇の30日以上前にしなければいけないため、30日前に解雇予告をしたり、解雇予告手当を支払ったりするようにしましょう。あるいは、解雇予告をしなくても従業員を即時解雇できる解雇予告除外認定を受けるという選択肢もあります。

損害賠償

社員の無断欠勤により会社が損害を被ったケースでは、無断欠勤者に対して損害賠償が発生する可能性もあります。

「どうせ損害賠償を払うことはないだろう」と欠勤者が高を括っていたとしても、支払う可能性はゼロではありません。損害を立証することは難しいため会社側が勝訴する可能性は高いわけではないですが、高額な賠償金を払うリスクを踏まえれば、無断欠勤はしないほうが賢明なのは明白です。

  • 無断欠勤で下される可能性のある処分

    会社側は従業員をすぐに解雇するのは相当な理由が必要です

無断欠勤で解雇する際の注意点

社員の無断欠勤が続いたりその後の態度に改善が見られなかったりする場合、会社側は解雇という手段を取ることもあります。

それでも、社員を簡単に解雇できるわけではありません。ここからは解雇に際し、注意をしなければいけないポイントを紹介していきます。

労働契約法の「解雇権濫用の法理」とは

会社が社員を解雇する際に注意したいのが「解雇権濫用の法理」です。解雇権濫用の法理とは、客観的に見て解雇に関する合理的な理由がなく、解雇の措置をとることが社会一般的に相当だと認められない場合は、権利濫用とみなされることを指します。

第三者から見ても解雇しかないと思われる状況や理由がないと、権利濫用ととらえられるため解雇するのは難しいということを覚えておきましょう。

  • 無断欠勤で解雇する場合の注意点

    会社側が無断欠勤を防ぐためにはどのような対策が必要になるでしょうか

無断欠勤を未然に防ぐ対策をしましょう

無断欠勤には何かしらの原因があることが多いため、社内の環境を見直してみるのも一つの対策になります。例えば「寝過ごした」などの自己管理不足による無断欠勤は残業が多いからかもしれません。定期的に上司による面談や社内アンケートを取ることで、よりよい環境作りを意識することも大切です。