プロジェクトごとに外部戦力を調達 【サーキュレーション】の“プロ人材”サービス戦略

コロナ禍を受けて自社のビジネスモデルの変革やデジタル化などを進める企業は多い。だが、それを実行する専門人材がいないのも事実。そんなニーズに応える企業がある。7月27日に東証マザーズに上場したサーキュレーションだ。同社は企業向けに特定の業務に精通したプロ人材のシェアリングサービスを提供する。プロ人材を複数の企業で共有する同社の新たな人材サービスとは。

プロ人材を複数企業でシェア

 トヨタグループのジェイテクト。ステアリング、自動車用駆動部品、軸受などを製造する同社が新規事業を始めた。2020年から始めた大手企業や研究機関などと中小の加工業者、町工場などのサプライヤーを「マッチング」させるサービスだ。

 実はこの新規事業を始めるに当たり同社は課題に直面していた。社内でデジタルの知見のある人材が少ない上に、業務過多で次のステップへの移行にも時間がかかっていたからだ。ビジネス目線でプロダクト開発ができているかどうかも分からない中で、同社が注目したのがサーキュレーションの展開するプロ人材のシェアリングだった。

 サーキュレーション社長の久保田雅俊氏は語る。「新規事業を始めようとしても、ゼロからプロ人材を採用することは大手企業でも難しい。自社でプロ人材を育成しようとしても時間がかかる。そうであるならば、日本全国にいる各分野のプロ人材の経験や知見を複数の企業でシェアし、あらゆる経営課題を解決した方が生産性は上がる」

 2014年に久保田氏が創業したサーキュレーションは企業向けに特定の業務に精通したプロ人材のシェアリングサービスを提供する。ただ、単なるシェアリングではない。企業の経営課題の解決に向けたプロ人材に特化している。また、同社が手掛けるのは「事業改革コンサルティング」だ。事業の成長や改革のために「経験」「知見」を求めている企業と、そのニーズを満たすプロ人材を結び付ける。

 同社には様々な分野のプロ人材が登録。その数は1万7千人以上に上る。フリーランスはもちろん、副業や兼業を許された大手企業やベンチャー企業の部長や取締役、CTO(最高技術責任者)、さらには経営者もいる。例えば、大手企業の人事や財務、M&A、海外進出、広報・IRのスペシャリストなどだ。

 一方で、企業からは「新規事業を開発したい」「ポスト・コロナを見据えてデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めたい」「コストを削減したい」「海外展開を支援して欲しい」といった要望が次々と舞い込む。

 久保田氏は「海外ではプロ人材が3社を掛け持ちする動きも現れ始めている。当社は日本でもプロ人材が活躍できるようにするための間口を広げると共に、職能を絞ったプロジェクト単位での課題を解決する。その結果、日本企業が世界で戦える生産性を誇れるようにする」と語る。

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累計8千件のプロジェクト実績

 サーキュレーションは各企業のニーズに応じてプロジェクトを組み、登録人材の中から適任者を選定して企業側とチームを組成させる。登録人材は期間限定でミッションを遂行する「業務委託」という形態で従事。そのため「同時に複数プロジェクトへ参画することもある」(同)。

 同社の強みは手掛けたプロジェクトの成否やプロ人材のスキルなどのデータを蓄積している点だ。データを基に顧客に最適なプロ人材を紹介できるようになっている。「どのような領域で外部のプロ人材を活用するか。その要件定義からしっかり行うため、プロ人材の評価を把握することが肝になる。そのため当社は事前のインタビューや累計8千件のプロジェクトを通じて細分化されたスキルチェックを

 プロ人材の働き方も多様だ。週1日から週3日、1日当たり2時間から6時間、6カ月から12カ月の割り当てと、プロジェクト単位での稼働が基本。「経験・知見を持ったプロ人材が1つの会社に縛られているのはもったいない。1人のプロ人材が複数の会社で力を発揮すれば、生産性が上がり、労働力不足の解消にもつながる」と久保田氏。

 同社のサービスが活用された事例としては、大企業はもちろん、創業200年の飴屋や畳屋、引っ越しなどの中小企業が多い。大企業ではアサヒビールがAIを用いたビールのパッケージデザインのシステムを開発。そこでサーキュレーションが200社以上へのAI導入の実績を持つプロ人材を紹介。1年半で世界初のシステムを開発した。

 なぜ、このような仕組みを構築しようとしたのか。そこには久保田氏の原体験がある。学生時代に塾を経営していた父が倒れ、11年間にわたり父を介護。だが、経営情報は父しか分からず、21歳で会社の清算を経験。「経営に明るい人が側にいれば……」。地方の中小企業が持つ弱点や経営に関する経験・知見の重要性を痛感し、総合人材サービス企業・インテリジェンス(現パーソルキャリア)で働いた後、サーキュレーションの創業へとつながっていく。

 日本の将来推計人口は65年で8808万人。そのうち15~64歳の生産年齢人口は4529万人。15年比で約4割減だ。しかも、日本の企業の9割超は中小企業。その経営者たちは先行き不透明感やコロナ禍でのDXの進展、後継者不足にどう対応するかといった悩みを抱える。

 そこで外部のプロ人材の経験や知見を複数の企業でシェアすることで「経営者はもちろん、社員の成長にもつながる」(同)。その結果、世界と伍していける生産性を実現できる。自らの体験と照らし合わせて日本の産業界の課題の解決を図る久保田氏。

 いかに企業が求めるプロ人材を集めていけるか。その”目利き”が同社に求められてくる。

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