近作では、業界のタブーに切り込んだ中井貴一との共演作『共演NG』(20)が大いに話題を呼び、このあとも舞台『Home,I'm Darling~愛しのマイホーム~』が控えている鈴木。女優として非常に守備範囲が広い鈴木は、どんな役でも自分色に染め上げてきたが、いつもどんなことを心がけて作品に臨んでいるのか。

「毎回、演じる役が違うので、ただ違う人として演じたいということは、いつも思っていますが、そんなふうに言っていただけるのはとてもうれしいことです。それはきっと、この仕事を始めたばかりの頃に、自分には強烈な個性がないと思っていたからかもしれません。いわゆる得意な球があるピッチャーみたいな感じではいられないと思い、いろんな投げ方をしなきゃいけないと、20代の頃に思いました。でも、個性的でないからこそ、いろんな役が投げられるんだと考えたら、逆にすごくチャンスが広がったような気がします」

そこから鈴木は自分自身を切り替えたそうで「今はいただいた役を、自分には合ってないんじゃないかと、決して考えないようにしています」と言う。

「もちろん、いくらやらせていただきたい役があっても、スケジュール上できなくて、残念だなと思うこともありますが、基本はいただいたタイミングでやるべき役だと思って、どんな役でも物怖じせずにやってみようと常に思っています。私は映画やドラマがずっと好きで、その登場人物が生きてきた軌跡などを想像したりするのが好きなんです。自分に、そういう役の個性を引き寄せたいと常に考えるようになりました」

まさに「鈴木京香は一日にしてならず」で、もともとの謙虚さはもとより、発想の転換や日々の鍛錬により、今の演技派女優のポジションを築き上げたということだ。

ちなみに、朝ドラは『君の名は』、『わろてんか』(17)に続いて『おかえりモネ』が3作目となったが、もしも4回目のオファーが入ったら? と尋ねると「もちろん出たいです」と即答した。

「今度出演させていただけるとしたらおばあちゃん役で出たいですね。『おかえりモネ』で、亜哉子は竹下景子さん演じる雅代さんに憧れるお嫁さんの役だったので、本当にうれしかったです。柔らかいムードを現場に運んで下さる竹下さんは、私自身も憧れていますので、次回はぜひ、おばあちゃん役をやらせてもらえたらうれしいです」

■鈴木京香
1968年5月31日生まれ、宮城県出身。1991年、NHK連続テレビ小説『君の名は』のヒロインに抜擢され一躍脚光を浴びる。その後、『わろてんか』(17)にも出演。そのほか、ドラマの近作は『行列の女神~らーめん才遊記~』(20)、『共演NG』(20)、『死との約束』(21)、『ライオンのおやつ』(21)など。大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(22)にも出演予定。主な映画出演作は『39 刑法第三十九条』(99)、『竜馬の妻とその夫と愛人』(02)、『血と骨』(04)、『清須会議』(13)など。

(C)NHK