【東京電力】処理水放出計画発表 漁業関係者の不安は根強く

風評被害が生じた場合 農林水産品を買い取る案も

 

 東京電力ホールディングス(小早川智明社長)は、福島第一原子力発電所の処理水を海洋放出する計画を公表。原発から出る放射性物質トリチウムを含んだ処理水を、海底トンネルを通じて1㌔㍍程度沖合に流すという。これを受け、国際原子力機関(IAEA)は12月に調査団を派遣する方針だ。

 原子力規制委員会に工事計画を申請し、2023年春頃までの完成を目指すが、実現性には疑問点も残っている。漁業関係者の不安は根強く、東電だけではなく、東電を監督すべき政府も説明責任が問われる。

 東電の計画では、海底トンネルは直径2.5㍍程度となり、今年度中にも工事を始める。処理水は国の基準の40分の1まで海水で希釈することになっているが、海岸近くで取水した場合、処理水が循環する可能性があるため、トンネル設置計画が策定された。トンネルの放出先は沖合1㌔㍍となり、漁業が日常的に行われていない海域にする方針。水深は12㍍ほどになる見通しだという。

 とはいえ、処理水の放出が始まれば、農林水産品の風評被害につながる恐れが大きい。東電は風評被害が生じた場合、産品価格の推移や取引量などを分析し、賠償額を算定すると表明。東電は「関係者の意見を聞き、賠償の枠組みを具体化していく」(幹部)と語っている。

 政府も風評で冷凍水産物が売れなくなった場合、産品を買い取る基金を創設する方針。基金の規模や財源は調整する。東電が漁業者に支払う損害賠償を国が肩代わりし、再建を支えることになる。

 公表された海洋放出計画については、全国漁業協同組合連合会(全漁連)が「断固反対であることはいささかも変わるものではない」と表明するなど、農林水産業には不安がくすぶる。

 梶山弘志経済産業相は風評被害対策について「一度決めて終わりではない。より良い方法を考えていく」と強調。買い取り基金が国民負担につながる可能性なども指摘されるだけに、国は処理水対応、風評被害、財源を含めて幅広い視点から、様々な関係者に説明していくことが必要になる。

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