日本科学未来館では今年もノーベル賞イベントを行います!

科学コミュニケーターと発表の瞬間を迎えよう! ノーベル○○賞
https://www.miraikan.jst.go.jp/events/202110062125.html

今年のノーベル賞はどのような研究に贈られるのでしょうか。
生理学・医学賞チームメンバーの片岡が考える、今年の推し研究について聞いてみました!

生理学・医学賞チーム 片岡万柚子

カラダの中には不思議がいっぱい!

私たちのお腹の中には数百兆個もの細菌がすんでいると言われています。こうした細菌の集まりを腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)と呼びます。腸活という言葉をよく聞くようになった昨今、私たちとどのような関わりがあるのか気になります。

片岡:この話題が注目されるきっかけをつくった方に、ジェフェリー・ゴードン氏がいます。ゴードン氏はまず、肥満マウスと通常マウスの腸内細菌叢を比較しました。すると、ある種類の細菌の構成比が大きく異なることを発見しました。次に、細菌叢の変化が体質に影響を与えるかを調べました。まず、無菌マウス(体内に菌を持たない、または極端に菌が少ない特殊なマウス)を用意します。そして、肥満マウスの細菌叢と通常マウスの細菌叢をそれぞれ別の無菌マウスに移植します。そうすると、肥満マウスの細菌叢を移植されたマウスでは体脂肪の増加量が大きかった、という結果が得られました。

腸内細菌叢と肥満に関係がある可能性が示されたのですね。マウスレベルでの研究ではありますが、とても興味深いです。

片岡:ちなみに、ゴードン氏の研究以前、腸内細菌叢の研究は難しいとされていました。そもそも腸内細菌叢には膨大な種類の細菌がいます。さらに、人工的な環境で培養できる細菌の種類は限られており、どのような細菌が何をしているか調べる方法がありませんでした。そこでゴードン氏は、当時登場し始めていたメタゲノム解析という手法を応用し、ブレークスルーとなりました。この手法では、DNA配列をそれまでの技術よりも格段にすばやく解読できる技術、次世代シーケンサーを使います。細菌そのものを調べるのではなく、腸内に残った細菌の痕跡、つまり細菌たちが持っていたDNAを解析したのです。腸内細菌が腸や粘液に影響して、いわゆる“お腹の調子”に関係するとは考えられていましたが、体質(肥満)にまで影響を与えているという発見は驚きの結果だったようです。

腸内細菌叢が少しずつ解明されているのですね。それにしても、私たちの体の中にここまでのブラックボックスがあったとは、不思議です。

片岡:自分の身体なのに、別の生物の影響を受けている。体という、私たちにとって身近なところで、まだ知らないことがたくさん起こっている…。そう考えると、とても興味深いなと思いました。

片岡は他にも、遠藤章氏によるスタチン(血中コレステロール低下薬)の研究も話題として気になるとのことでした。今年のノーベル賞はどんな研究が受賞するのか、10月4日(月)17:30からの放送でぜひ私たちと一緒にノーベル賞を楽しみましょう!

<関連リンク>
●ニコニコ生放送
10月4日(月)17:30~19:00
【生理学・医学賞】ノーベル賞発表の瞬間をみんなで迎えよう@日本科学未来館
https://live.nicovideo.jp/watch/lv333364180
※登録等無しで即視聴可能

●腸内細菌に関する過去のブログ記事はこちら
科学コミュニケーター山川栞
2018年ノーベル生理学・医学賞を予想する~②腸内細菌が医療を変える!?
https://blog.miraikan.jst.go.jp/articles/20180913post-17.html

●遠藤章氏とスタチンに関する過去のブログ記事はこちら
科学コミュニケーター浜口友加里の記事
https://blog.miraikan.jst.go.jp/articles/201709112017-3002.html

科学コミュニケーター西岡真由美の記事
https://blog.miraikan.jst.go.jp/articles/20170331post-220.html

●Yahoo! THE PAGEの竹下の記事

「新型コロナ「mRNAワクチン」生んだ2つの発見 30年来の研究がつながる」
https://news.yahoo.co.jp/articles/1df271e9eeda3e3e5edbb2066d94ffa0393dbf78



Author
執筆: 綾塚 達郎(日本科学未来館 科学コミュニケーター)
大学では牛と稲を育てる研究をしていました(修士卒)。民間の教育会社で働いたのち未来館へ。ファシリテーション、執筆、ご来館者との展示前対話といった科学コミュニケーション活動を日々行っています。農業に関するテーマをよく扱っています。また、科学コミュニケーションの手法として演劇や五感を刺激するワークショップなど新しい伝え方へのチャレンジも行っています。