ミキハウスグループ代表・木村 皓一の「世界の子供に笑顔と安心を!」(第21回)

子供の成長には「靴が必要」との思いで 

 ミキハウスはベビー服・子供服の他に、子供靴やおもちゃ、雑貨類も手掛けている。

 子供靴は子供の成長に欠かせない。子供の成長は速いので、たいてい1シーズンしか利用できない。加えて、まだ骨がやわらかく、つま先が扇状に広がっている赤ちゃんの足や、かかとが傾きやすく、つま先が上がりにくい赤ちゃんの歩行を考え、ミキハウスでは、成長に合わせて4種類のベビーシューズを展開している。

 そうした履き心地、使い勝手を、当の子供たちはもちろん、母親など保護者も高い靴代を支払うのだからと、我が子の成長を注意深く見守っている。

 子供靴も今や、年間100万足を売るほどの規模。しかし、同事業では長年苦労してきた。

「靴は30年間赤字だったんですよ」と木村は語る。

 それほど長い間赤字が続いているのになぜ、靴事業を止めたりしなかったのか?

「いやいや、足は大事ですもの。子供の足が大事なことは分かっているんだけど、これまではビジネスにならなかった。今でこそ年間100万足以上売れるようになっていますが、当初はほとんど損をしながら事業を続けていたんです」

 木村は、ベビー服・子供服と違って、靴では苦労させられたと述懐。

 どれくらいの販売規模になれば利益がとれるようになったのか? との問いに「大体10万足のレベルです」という答えが返ってきた。それ以下だと、生産工場に必要な設備投資などのお金が回らなくなるのだという。

 発注者としてのミキハウス(三起商行)は、「川上(生産)から川下(販売)までを全部見ないといけない」という立場。川上分野から川下分野まで一気通貫で、事業が成り立つように仕立てていかないといけない。

 ミキハウスは靴の製造を福岡、熊本など、九州に定め、生産事業者と事細かく連携しながら、最高品質の靴を求めていった。

 その結果、30年かかって靴事業の黒字化へこぎつけられたという経緯。そこには木村の執念があるからだが、その価格帯はどれくらいなのか?

 普通、都内の一流百貨店で売られているのは1足2千円くらいの水準。ところが、ミキハウスの場合、1足で7千~8千円以上するものがほとんど。

 それくらい高付加価値の靴づくりであるということ。

 ミキハウスの子供靴には、靴の生産事業者と長年、試行錯誤しながら、もっといえば苦楽を共にしながら、今の子供靴をつくりあげたという木村の思いが詰まっている。

ミキハウスグループ代表・木村 皓一の「世界の子供に笑顔と安心を!」(第20回)

子供靴を軌道に乗せるまでの30年間のコスト

 一つの事業を軌道に乗せるのに、「川上から川下まで全体のバランスを見て」事業の仕組みをつくりあげてきた木村。

 だから、こうした事業構造や仕組みをつくりあげてきた歳月やノウハウを考慮せずに話をしてくる人たちに対しては怒りに似た感情を覚えるという。

 こんなことがあった。

「某有名百貨店から『わたしのところにオリジナル商品をつくってくれないか』という話が来たんです。それが、たかだか5枚、10枚の単位。わたしは即座に『それ1枚300万円とかで売るということ?』と聞き返したんです。それくらい、わたしたちの商品はコストがかかっているということなんですよ」

 木村が次のように続ける。

「糸から生地をつくるわけですが、最低ロット(量)は1色6反です。3色つくったら、18反要りますねん。それで5枚つくったり、6枚つくったりしますでしょ。あとは捨てないといけなくなるから、1枚300万円で売らないとコストが合わない」

 やや専門めいた話になってきたが、木村としては、相手方がコスト計算をしないうちに、自分たちの都合でモノを発注してくる”傲慢さ”に我慢がならないといった様子である。

 ものすごい量をつくり、試行錯誤を重ねてきているから、今のミキハウスの商品が存在する。そうしたモノづくりへの執念、使命感があるからこそ、自分たちの事業が成り立つ――という木村の思いである。(敬称略、以下次号)

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