近畿日本鉄道は16日、西信貴ケーブルで車体補修工事を行い、復刻塗装を施したケーブルカー2両を報道関係者らに公開し、信貴山口~高安山間を往復する試乗会を開催した。ケーブルカーのリニューアルは12年ぶりとのこと。9月17日から運行開始する。

  • 近鉄が西信貴ケーブルのケーブルカー2両をリニューアル。報道関係者向け試乗会では、7号車「ずいうん」(コ7形)に貨車「コニ7」を連結した姿も披露された

西信貴ケーブル(西信貴鋼索線)は近鉄信貴線と接続する信貴山口駅から高安山駅まで1.3kmを結び、「寅に縁のある神」として信仰される信貴山朝護孫子寺への足として運行されている。ケーブルカーのリニューアルは2022年の寅年に向けて実施され、車体補修工事にともない、6月16日から7月16日までと、8月17日から9月16日までの2回に分けて運休となっていた。

信貴山へのケーブルカーは、戦時中の1944(昭和19)年にレール供出で信貴鋼索線が撤去された後、1957(昭和32)年に近畿日本鉄道の信貴鋼索線として復活。1964(昭和39)年に西信貴鋼索線へ名称変更したという経歴を持つ。現行車両のコ7形は、ケーブルカーが復活した1957(昭和32)年に登場。7号車は「ずいうん」、8号車は「しょううん」の愛称で活躍している。

  • 赤色とクリーム色の復刻塗装となった7号車「ずいうん」。側面に「寅」のラッピングも

  • ケーブルカーに連結された貨車は高安山駅に水を運ぶ

  • 内装に大きな変更はなく、非冷房となっている

リニューアル前のコ7形は黄色を基調に虎を描いた外装だったが、今回のリニューアルでは、昭和の時代(1957~1987年)に運行された車体カラーを復刻。7号車「ずいうん」は赤色とクリーム色、8号車「しょううん」は青色とクリーム色の配色となった。近鉄は生駒山エリアにおいて、「レトロ」をテーマとした地域ブランディングによる活性化に取り組んでおり、ケーブルカーに復刻塗装を施すことで、利用者に「レトロ」な乗り物の魅力と親しみを感じてほしいと説明する。

レトロな復刻塗装になっても「寅」が消滅したわけでなない。車体の正面に「寅」のヘッドマークが掲げられ、側面に「寅」のラッピングを取り入れている。今回はおもに外装をリニューアルしており、内装に大きな変更はない。非冷房のため、扇風機と屋外からの換気により暑さをしのぐ。天井の下半分(信貴山口方)はガラス張りになっており、蛍光灯にもカバーが取り付けられている。車内外を見渡すと、レトロを感じさせつつも、デビュー当時のケーブルカーに対する敬意が伝わってくる。

西信貴ケーブルでは、全国でも珍しいケースとして、ケーブルカーに貨車が連結される。コ7形の7号車「ずいうん」に連結される貨車は「コニ7」、8号車「しょううん」に連結される貨車は「コニ8」とされ、年1回の交代制で使用されるという。貨車の目的は上水道設備のない高安山駅へ水を運ぶため。試乗会では、7号車「ずいうん」に「コ二7」を連結して走行。「コ二8」は高安山駅付近に留置されていた。

  • 青色とクリーム色の配色となった8号車「しょううん」。ヘッドマークのデザインは7号車と異なる

  • ケーブルカーの下半分(信貴山口方)の天井はガラス張り

  • 西信貴ケーブルの勾配は170~480パーミルにもなる

  • 中間地点で8号車「しょううん」とすれ違う

  • 信貴山口駅から7分で高安山駅に到着

  • 西信貴ケーブルの車体リニューアル記念入場券

  • 全2種類を用意し、9月17~30日の期間限定で発売される

リニューアルしたケーブルカーは2両とも9月17日から運行開始する。これに合わせ、近鉄は9月17~30日、西信貴ケーブルの車体リニューアル記念入場券(第2弾)を全2種類、200セット限定で発売。高安山駅と信貴山口駅の入場券2枚がセットになり、1セット320円。信貴山口駅のみの発売で、期間中に在庫がなくなり次第、販売終了となる。