「持ち家派」or「賃貸派」? 生涯支出はどちらが多い? それぞれのメリット・デメリットは? 以前から、たびたび話題に上がるテーマです。今回は「ゆくゆくは実家を引き継ぐから今は賃貸派」の方が考えておくべき事柄をまとめてみます。

状況によって異なる準備項目

「備えるべきこと」と言っても、状況によって大きく違ってくるでしょう。例えば……

  • 引き継ぐ理由は? 「相続財産」「親と同居する」「親の仕事を引き継ぐ」「Uターン(転職)」等
  • 引き継ぐのは? 「戸建住居」「マンション」「親の所有土地」等
  • 引き継ぐ実家の立地は? 「都会」「田舎」等
  • 引き継ぐ次期は? 「相続時」「具体的に想定している時期」等
  • 引き継ぐ実家建物の状況は? 「そのまま居住可能」「大幅な手直しが必要」等

その他、自分たちの状況を改めて再確認して、具体的に備えるべきことなどを、思いついた折々に書き出しておくとよいと思います。以下は一般的に考えられる問題をあげてみます。それをヒントに自分たちのケースを考えてみて下さい。

初期費用と維持費用を想定しておこう

親の住まいを引き継ぐ際は、リフォーム費用は相当かかる

「親の住まいを引き継ぐのでラッキー」と考えていると、いざ住む時になると、「間取りが使いづらい」「設備が古い」「そこかしこが傷んでいる」等、引き継ぐ家族に対応した暮らしを確保するためには、リフォームが必要なことが普通ではないでしょうか。

場合によっては、リノベーション費用として、新築価格の半分近い費用が掛かるケースもあります。引き継ぐまでの期間で、リフォーム費用を準備していきましょう。少なくとも耐震補強、バリアフリー対策は必須でしょう。

住まいのメンテナンス費用は意外とかかる、それを想定して生活設計を

戸建住宅のメンテナンス費用は想像以上にかかります。引き継いだ建物の築年数が古いとメンテナンス費用も増します。マンションでも管理費と修繕積立金として、毎月相当額を支払っているでしょう。その他に入居時に修繕積立金を一時金として支払うケースもあります。それでもマンションは集合住宅としてのマスメリットが働き、一住戸当たりのメンテナンス費用は通常戸建住宅よりは少なくて済みます。

戸建住宅を引き継いだらメンテナンス費用はかなり必要であることを想定して生活設計を行ってください。親が年を取ると、メンテナンスもおろそかになったり、年金暮らしで費用を捻出できなかったりするケースも普通に考えられます。住まいを引き継いだ途端に雨漏りしたりして大幅な修繕を余儀なくされないとも限りません。リフォームが不要なケースでも、引き継ぐ際に相応の修繕準備金を用意しておいた方がよいでしょう。

万一の場合のリスクと資産としての活用効果を考えよう

持ち家と賃貸、生涯支出金額の算定は話題に登場するたびに行われていますが、いずれの検証も生涯支出に大差ないようです。ただし、いったん不測の事態が起きた場合は、大きな差が出ます。「災害で建物が損傷」「働き手が働けなくなった、亡くなった」などの際はそれぞれにリスクの違いが生じます。実家の不動産が不測の事態に対応できるかどうかを考えておくことが大切です。

実家を引き継ぐまでの賃貸住まいの期間のリスク、引き継いだ後のリスクなどについて、十分に検証して必要な対策は用意しておきましょう。

老後はどうする?

仮に親が亡くなり、戸建住宅の実家を相続し、そこに住むことを想定してみましょう。一般的に考えれば、親が亡くなる時は、本人も定年前後の年齢になっているはずです。維持管理に労力と費用の掛かる戸建住宅に、いつまで住み続けられるかは難しい問題です。

年をとれば戸建住宅を売却し、高齢者施設への入居や駅近の便利なエリアの手ごろなサイズの中古マンションを購入するといった風潮の時代です。親の住まいの資産価値が高ければ、売却して老後の資金にできるかもしれませんが、そうでなければ、老後の対策は別途立てておかなければなりません。

若い時は老後の生活をイメージするのは、なかなか難しいようですが、どんな状況になっても可能な限り、望み通りの生活ができるように、先々のことまで想定しておきましょう。


一般的に「ゆくゆくは実家を引き継ぐから今は賃貸派」が成立するのは、まだ若い時期に実家を引き継ぐケースではないかと思います。定年前後で引き継くのであれば、それまでの長い期間を賃貸生活ということになり、「ゆくゆくは実家を引き継ぐから」ではなく、賃貸生活自体にメリットを見出し、デメリットへの対策がなければなりません。

実家を引き継ぐまでに相応の年数があるのであれば、「ゆくゆくは実家を引き継ぐけど持家派」も成立するはずです。「持ち家は子供に相続」「持ち家は売却して、その資金で実家をリノベーション」など、いろいろ考えられます。

あくまで住居は、その方が考えている生活スタイルを実現するための器であり、場であり、大切な資産です。現在の賃貸生活も、引き継ぐ予定の実家も、生涯計画の線上になければなりません。