三井住友ファイナンス&リースは、リース契約の請求・支払関連業務における取引先向け帳票の電子化サービスを今年の7月から開始した。取材をした8月下旬時点では、利用している企業は70社ほどだが、今後は徐々に拡大していくという。

リース契約では、まず、顧客とリース契約を結ぶ。同社ではこちらも一部電子化しているが、紙で実施することが多いという。その後、契約したリース物件を発注し、契約者に納入された段階で、物件受領書を発行してもらう。物件受領書を受け取ったら、リース物件の購入代金の支払い処理となり、物件の購入先にいつ、いくら支払うかを知らせる「お支払通知書」を送付する。その後、実際の支払が行われる。同社では今回、毎月約8000通を発送している「お支払通知書」の電子化に取り組んだ。

きっかけは、コロナ禍での在宅勤務の増加だ。

  • リース契約の仕組み

三井住友ファイナンス&リース 事務企画部 部長代理 織田智恵氏

社員は請求書などの対外帳票を郵送するために出社する必要があり、お客様も帳票を受け取るために出社する必要があるということで、働き方改革の観点で改善する必要があると考えていたときに、新型コロナウィルスが発生し、急ピッチで電子での書類のやり取りに移行できないか検討を始めました」と、同社 事務企画部 部長代理 織田智恵氏は、電子化の背景を説明する。

同社ではコロナ禍の2020年の5月、社内に「在宅勤務推進プロジェクト」を発足させた。今回の電子化は、このプロジェクトで推進された。

具体的には、ウイングアーク1stの電子取引サービス「invoiceAgent TransPrint」を導入し、これまではリース契約の請求・支払関連業務における取引先向けシステム上で保存していた「お支払通知書」を、PDF化して「invoiceAgent TransPrint」上で保存するシステムを構築した。

三井住友ファイナンス&リース システム開発部 部長補佐 丸山綾子氏

「システム部として帳票の電子化が提案できるように情報を集めていました。そんな中、ウイングアーク1stさんのイベントに参加し、他の金融機関で『invoiceAgent TransPrint』を利用していることを知り、事務企画部と相談しながら導入を進めました。当初は請求書の電子化が話に出ていましたが、法定帳票ということでハードルが高いので、自動発送しているリース物件代金の支払い内容を記述しているお支払通知書を、まずやってみようということになりました」と、システム開発部 部長補佐 丸山綾子氏は、「invoiceAgent TransPrint」を選択した理由について語った。

業務面としては、これまで顧客に発送している帳票の形態を変えることなくPDFとして利用でき、操作性もシンプルだったというのも採用の理由だという。帳票の形態を変えることなく使えるというのは、システムを構築する際の開発が少なくて済むというメリットもあったという。

新システムにより、これまで郵送していたものが、「invoiceAgent TransPrint」内に帳票がアップロードされ、顧客にはメールでアップロードが通知される。そして、顧客はシステムにログイン後、帳票を閲覧/ダウンロード/印刷できる。

  • 「invoiceAgent TransPrint」の概要

郵送の代わりにメールで送付するという方法もあると思うが、これについて織田氏は、「毎月8,000程度という件数を考えると、担当者がメールで送付するというのは現実的ではありません」と述べる。

もともと発送業務はBPOで外部委託していたため、今回の電子化が在宅勤務の増加に直接結びついているわけではないが、顧客側は在宅でも受け取れるという効果があるほか、発送側はBPO費用の削減につながっている。

システムは6月から30社ほどで試験的に使い、軌道に乗った7月中旬から本格稼働した。利用開始には、顧客側の登録作業が必要なため、毎日少しずつ増えているという。

一気に利用を拡大することに慎重な理由について織田氏は、「利用してもらうためには、お客様に説明して了承してもらった上で導入する必要があるので、どういう風にお客様にアナウンスして、送信先のメールアドレスをどういう風に収集するか、どの帳票から始めるかの議論を重ねました。一斉にスタートするのはこちらが対応できるかという不安もありましたので、お客様を絞ってスタートしようということになりました。電子化のメリットとして、郵送より早く受け取ることができ、受け取り場所を選ばないということで、お客様の関心も高く、ご利用数も順調に伸びています」と語る。

「送付した帳票もどれくらい保存するかという設定もカスマイズでき、メールだと紛失する可能性もありますが、このシステムだと、過去に遡って見られるのも便利だと思います」(丸山氏)

利用拡大に向けては、営業にも協力をお願いしている。

「お客様に登録いただけなければ、使っていただけないので、いかに(顧客に)アナウンスし、周知して、利用いただけるかだと思います。そのため、営業部隊でも協力してもらい、アナウンスしてもらっています」(織田氏) 同社はユーザーニースが高い請求書もデータ化していく計画で、今後は電子化の適用領域を徐々に広げていく予定だ。