cinemas PLUS


■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT

自民党総裁選挙や衆議院選挙など、日本もこの秋は選挙の話題で持ち切りで、特に今回は混迷するこの国の未来を示唆する上でも投票できるものには積極的に参加していただきたいものですが、この作品はアメリカ大統領選挙における“小さくも大きな、ある一角”の戦いを描いたものです。



タイトルの“SWING STATE(揺れる州)”とは“激戦州”、即ち共和党と民主党の二大政党制を敷くアメリカ大統領選挙で双方の支持率が拮抗し、勝利政党がそのつど変動する州のこと。

つまり接戦であればあるほど、激戦州が勝敗のカギを握っていくというわけです。

本作は米国のハートランドとも呼ばれる中西部ウィスコンシン州にある架空の町を舞台にしたフィクションではありますが、2017年の「米史上もっとも高額な議会選」とまで揶揄されたジョージア州下院選にヒントを得て作られており、そのストーリーは多くの政界関係者などが「実際にあり得る話である」とのお墨付きをいただくほどにリアルなものとして構築されています。

小さな田舎町の町長選が、民主党VS共和党それぞれの選挙参謀が送り込まれていく中で、いつしか次の大統領選を占う上での“仁義なき代理戦争”と化していく狂乱は、当事者からすると命がけの真剣勝負ながらも、そのなりふり構わぬやりとりは、はたから見ればシニカルなコメディにしか映らなくてもやむなしでしょう。



本作はその狂乱をあくまでもブラック・コメディとしての姿勢を崩すことなく、見事に描き得ている社会派エンタテインメントの痛快なる作品です。

選挙がいかに人を巻き込んでは巨額のカネが動きまくり、また今の時代はTVのみならずSNSの力が大きくものをいう、そういったメディアの力をどこまで見通しながら、人の心という複雑怪奇なものを動かしていけばよいのか?



普通の選挙映画は候補者を主人公に据えた人間ドラマに仕立てることが多いのですが、今回はその取り巻きたちの暗躍を描くことで、候補者そのものは祭りの神輿でしかなくなっていくシビアな現実も巧みに描かれています。

さらには選挙にしても政治にしても、いつしかその在り方が民衆の声やら政策やらを二の次にした金食い虫の陣取りゲームと化してしまっている現実(この点はアメリカも日本も同じですね)を、本作は見事に訴えているのでした。

アメリカのお話ではあれ、日本も決して他人事ではないこの映画、衆院選などの前にぜひ見ておいていただきたいと切に願います。

(見たら絶対選挙に行きたくなります!)



(文:増當竜也)

『スイング・ステート』作品情報

【あらすじ】
大敗した民主党ヒラリー陣営の選挙参謀ゲイリー・ジマー(スティーヴ・カレル)。ある日、ウィスコンシン州の小さな町役場で、不法移民のために立ち上がる退役軍人ジャック・ヘイスティングス大佐(クリス・クーパー)のYouTube動画にゲイリーは目を奪われる。そのリベラルな演説で人々の胸を打つ彼こそが、中西部で民主党の票を取り戻す起死回生の秘策だと確信したゲイリーは、スイング・ステート(激戦州)のウィスコンシンを足掛かりに地盤を広げるべきだと党を説得。単身アポなしで田舎の寂れた町ディアラーケンへと赴き、大佐に民主党からの町長選出馬を要請する。ゲイリー自身が指揮を取ることを条件に、大佐は出馬を了承。大佐の娘ダイアナ(マッケンジー・デイヴィス)や、住民ボランティアと共に地道な選挙活動をスタートさせるのだった。ところが、対立候補の現役町長ブラウンの元に、共和党がトランプの選挙参謀フェイス・ブルースター(ローズ・バーン)を送り込んでくる。その日から、ディアラーケン町長選をめぐるゲイリーVSフェイスの戦い、否、民主党VS共和党の巨額を投じた“仁義なき代理戦争”が始まった……。 

【予告編】


【基本情報】
出演:スティーヴ・カレル/クリス・クーパー/マッケンジー・デイヴィス/トファー・グレイス/ナターシャ・リオン/ローズ・バーン

監督:ジョン・スチュワート

脚本:ジョン・スチュワート

上映時間:102分

製作国:アメリカ