東北大学は9月8日、これまで詳しい調査が行われてこなかったという、魚の骨が口や喉に刺さってしまう疾患である「魚骨異物」について、東北大学病院における咽頭・食道の魚骨異物患者の調査を行い、その臨床的特徴を明らかにしたと発表した。

また、魚骨異物は特に4歳以下の幼児に多いこと、カレイやヒラメの骨は下咽頭や食道に刺さることが多く、内視鏡下摘出術や全身麻酔下での手術が必要になることが多いことなどが明らかになったことも併せて発表された。

同成果は、東北大大学院 医学系研究科 耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野の宍戸雅悠医員、同・鈴木淳講師、同・香取幸夫教授らの研究チームによるもの。詳細は、米オンライン科学誌「PLoS ONE」に掲載された。

魚骨異物は魚消費量が多い国において一般的な疾患として知られており、中でも日本を含むアジア圏では咽頭・食道に刺さった・詰まった異物の約50~90%を占めるとされている。しかし、ありふれた疾患であることが理由なのか、これまで詳しい調査はあまり行われてこなかったとのことで、どの程度、魚の種類によって骨の刺さり方や頻度が変わるかといったことは、よくわかっていなかったという。

そこで研究チームは今回、魚骨異物疑いで東北大病院を受診した患者の詳しい調査を実施。2015年10月から2020年5月までの期間に魚骨異物の疑いで受診した患者368人のうち、医師が異物を確認した270例(74.3%)を対象として調査を行ったという。

その結果、患者の年齢は乳幼児が最も多く、0~4歳が全体の25.9%を占めていたことが判明。骨が刺さっていた部分は口蓋垂(いわゆる「のどちんこ」)から、舌根舌の付け根の部分にかけての中咽頭領域が87.4%と大多数を占め、中でも口蓋扁桃(いわゆる「扁桃腺」)に刺さっている症例が多いという結果だったという。

また、刺さっていた魚の骨の種類を調べたところ、割合は以下の通りとなったという。

  • 1位:14.4%、ウナギの仲間(ウナギ34例・アナゴ3例・ハモ2例)
  • 2位:12.2%、サーモン(33例)
  • 2位:12.2%、サバ(33例)
  • 4位:11.1%、アジ(30例)
  • 4位:11.1%、カレイの仲間(カレイ28例、ヒラメ2例)

ウナギを除いては家庭での生鮮魚介消費量の多い魚があることが示されたとする。

  • 魚骨異物

    魚骨異物症例の年齢分布。小児と中高年に2相性のピークがあり、特に4歳以下の幼児症例が多いことが確認された (出所:東北大プレスリリースPDF)

また、魚骨異物が確認された270例のうち、12.2%(30例)で、診察中に骨が自然に脱落したことも確認されたほか、残りの240例で摘出手術が行われたことも確認。手術内容としては、54.6%(131例)が口腔からの直接摘出、42.9%(103例)が内視鏡下での摘出手術、2.5%(6例)が全身麻酔下の手術であったという。

  • 魚骨異物

    魚種ごとの魚骨異物の摘出方法。魚骨異物はウナギ・サバで多かったが、カレイ・ヒラメでは、内視鏡下摘出術や手術を要する割合がほかの魚と比較して高かいことが判明した (出所:東北大プレスリリースPDF)

なお、12歳以下の小児例は139例で、中咽頭領域に骨が刺さっていた症例が99.3%(138例)を占め、内視鏡下摘出術を要した症例は22.3%(31例)であったとするほか、さまざまな魚の中で、カレイ・ヒラメの骨は、下咽頭や食道に骨が刺さる頻度が高く(30%)、自然に脱落することが少なく(9.1%)、内視鏡下摘出術や全身麻酔下での手術が必要になる症例が多い(65.5%)ことが明らかになったともしている。

こうした今回の成果について研究チームでは、咽頭・食道の魚骨異物に関する特徴が明らかとなったことから、今後の診療に活かされることが期待されるとしている。