台湾の文化やコンテンツを紹介する期間限定イベント『脳内トラベル台湾』が、東京・日本橋「誠品生活 日本橋」などの書店で開催されている。本イベントの開催初日となる8月16日には「誠品生活日本橋」にて記者会見が実施され、スペシャルゲストとして台湾のデジタル担当相オードリー・タン氏がオンラインで登場。自身に影響を与えた台湾の文化やコンテンツなどについてトークした。

台湾発、最新の注目書籍が勢揃い

『脳内トラベル台湾』では台湾発のブランド「誠品生活」が日本初進出したカルチャー体験型店舗「誠品生活 日本橋」のほか、東京・下北沢の「本屋 B&B」、埼玉・所沢にあるKADOKAWA直営の書店「ダヴィンチストア」に特設コーナーを設置している。

「複眼人」「返校 影集小説」(ともにKADOKAWA)、「台北プライベートアイ」(文藝春秋)など、今年翻訳された台湾作品をはじめ、50作以上の台湾関連書籍を取り揃え、10以上の台湾発の生活雑貨ブランド商品を取り扱う。

主催は台湾発の文化的コンテンツを支援し、その普及とビジネスの活性化を目的に活動している独立行政法人「台湾クリエイティブ‧コンテンツ‧エイジェンシー(Taiwan Creative Content Agency)」(以下TAICCA、読みは"タイカ")。

「コロナ禍で自由を奪われた日常から抜け出す」をコンセプトとする本イベントは、日本の文科省に相当する文化部のもとで2019年に創設されたTAICCAが、日本で初めて単独で主催する一般の人たちを対象としたプロジェクトだ。

旅行や外出がままならない昨今、「実際に台湾へ旅立つことができなくても本を読んだり、雑貨に触れたりすることで、台湾を巡って人々と交流をしたかのような気分を味わってもらいたい」といった願いが込められているという。

オードリー・タンが若い頃にハマった音楽

2016年に35歳で蔡英文政権に入閣し、デジタル担当相として日本でも大きな注目を浴びてきたタン氏は、本会見で台湾人作家・陳耀昌氏の小説『フォルモサに咲く花』(東方書店)を紹介。「今回のイベントのテーマである、台湾への脳内旅行を楽しんでください」と『脳内トラベル台湾』への期待を語った。

台湾本国では『フォルモサに咲く花』の実写ドラマ化作品である『斯卡羅(seqalu、スカロ)』も、大きな人気を集めているという。

「私のTwitterアカウントで『スカロ』に関するツイートをしたところ、日本のみなさんからも、『このドラマはいつから観られますか?』といったコメントが多く寄せられました。さまざまな台湾コンテンツを海外に向けて発信するプラットフォーム『TAIWAN+(台湾プラス)』で、今月末にはご覧いただける予定です。今後、コロナ禍が落ち着いて規制が緩和されていったときには、実際にフェイス・トゥ・フェイスでこういった小説やドラマなどで描かれているシーンについて、お話できる機会があるといいなと思っています」

  • 会見後、タン氏は一般来場者向けのトークイベントに参加した

『フォルモサに咲く花』は19世紀後半における台湾原住民と外国勢力との間に発生した「ローバー号事件」を題材に、台湾らしい多様性や歴史、風土が描かれている作品とのこと。会見後の質疑応答で、台湾コンテンツの独自性について訊かれたタン氏は、次のように見解を述べた。

「異文化を決して排除するのではなく、融和の中にあるということが台湾の特徴かと思います。台湾では多様な文化やアイデンティティが融和して溶け込んでいて、世界の中でも独特の位置付けにある。そのことが新しいコンテンツやイノベーションが生まれる背景にもなっています」

また、自身が影響を受けた台湾の作品コンテンツを聞かれた際は、「非常に影響を受けた作品がたくさんあって、何を選ぶのか難しい」と前置き、若い頃の印象深い思い出を明かした。

「私は幼い頃から言葉に興味を持ち、音楽にもたくさん触れてきました。特に音楽ではルオ・ダーヨウ(羅大佑)という歌手の『未来の主人公』といった楽曲や、そのライブなどに非常に興味を持つようになり、よく聴いていましたね。もともとは詩として歌詞の世界を味わっていましたが、だんだん音楽としても楽しむようになっていきました」

台湾文化コンテンツの産業化・国際化の促進のため、民間と共同でイベントへの出展などを通じ、台湾のドラマ、映画、音楽、出版などの台湾文化コンテンツの海外発信に注力してきたTAICCA。本イベントは9月15日までの開催期間中に、台湾に縁のあるゲストを招いたトークイベントを実施する予定だ。情報は随時更新されるので、特設サイト「脳内トラベル台湾」などをチェックしてほしい。