2016年10月~12月に放送され、“恋ダンス”が流行するなど人気を集めたドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)。今年1月にファン待望の続編が放送され、5月には共演した新垣結衣と星野源が結婚を発表、大きな話題となった。

  • 「逃げ恥スペース presented by TBS」-私とみくりと平匡と-

この夏には主人公みくりと平匡が暮らす部屋を再現したレンタルスペースが登場。2人の結婚の影響もあり、予約が殺到して大人気という。“幸せの象徴”となった「津崎家のリビング」。ドラマの美術プロデューサーである船山和歌子氏に話を聞き、『逃げ恥』の空間はどのようにして作り上げられたのか、裏話を聞いた。

――まず、2016年に放送された連ドラ版『逃げ恥』でのこだわりを教えてください。

平匡さんの部屋は「男の一人暮らし」という設定。原作でも簡素なマンションでした。でも、当時のプロデューサーの強いこだわりがあり、「一人で住んでいるというリアルさは必要ない。みくりと平匡が一緒に住みはじめたときの温かさを重視した部屋を作ってほしい」というオーダーがありました。男の一人暮らしというと黒や白を中心としてモノトーンの部屋を想像することが多いですが、「温かさ」を重視したので、平匡さんの部屋は壁紙を真っ白じゃなく少し黄色味を入れたり、小物もモノトーンではなくナチュラルテイストのものをあえて取り入れたり、柔らかい印象づけを心がけた。でも、あんまりリアリティがなさすぎるものダメなので、温かさとリアリティ、その塩梅を探りながら作りました。

――それを美術セットで表すのは難しそうです。

難しかったですね。壁紙を選ぶのに10日間くらいかかってしまって、何十枚もサンプルを並べて選んだ記憶があります。吐きそうになりながら(笑)

――壁紙に10日も!

セットが目立ちすぎて役者さんの演技に目がいかなくなってしまうのは美術セットとしてダメ。そのキャラクターが選びそうな、住んでいそうな家の壁紙の色を見つけるのはすごく難しかったです。最終的にはクリーム色と言われないくらいの黄色に落ち着きました。

――その色になった決め手はあったのですか?

プロデューサーが「黄色は幸せの象徴だ。黄色、黄色がいい!」とずっとおっしゃっていて(笑)。すごく黄色を推してきたんです。そこから、目に入って優しい気持ちになる、でも演技の邪魔にならない色を黄色の中から選びました。あと、エンディング曲の星野さんが歌う「恋」のPVも黄色とモノトーンが登場するので、そこに繋げたという背景もあります。

――黄色というと、ドラマのエンディングで出演者の方が恋ダンスを踊っているセットに黄色の飾りが散りばめられていますね。

実はエンディングには“お友達を呼んでホームパーティーをしている”という設定があります。2人が暮らす温かい部屋で、さらに楽しいパーティー感を出したかった。当時パーティーグッズを調べたらペーパーファンというアイテムがあることを知りました。いまは当たり前に売っていますが、当時は海外から輸入されはじめた頃。『こんなのあるんだ』と思い、視聴者の方が気軽に真似できてお家が華やかになるものとして採用しました。