【伊藤忠商事】新社長・石井敬太の商社進化論「商社には無限の可能性がある」

マーケットインに最適な組織をつくっていく

 新型コロナウイルス感染症の影響は今も継続中で、前期はファミリーマートなどリテール関連が大きな打撃を受けた。飲食やアパレルは今も完全には戻っていないし、消費者関連での影響は大きい。

 一方、いち早くコロナ危機を脱したと言われる米国や中国は比較的好調で、海外ビジネスは順調だ。今年はちょっと資源バブルになっていて、原油にしろ、鉄鉱石にしろ、いろいろな価格が高止まりしている。資源に強い他商社はかなりプラスになっているのではないだろうか。

 米中対立の行方は注意深く見守っていく必要がある。しかし、もはや世界のサプライチェーン(供給網)は多国籍で、中国はほとんどそれに含まれる。これは直接的、間接的に米国にもきいてくることなので、お互いに無茶はできないだろう。

 実際、人権問題もあって、半導体、情報産業などは規制がかかっていて貿易は減少傾向だが、コロナからの回復が早い中国では旺盛な需要を満たす日用品だとか消費関連、一部の部材は量的にも金額的にもかなり復活している。これら生活消費関連は当社が得意とする分野でもあり、それほど大きなインパクトは出ていない。

 世の中はものすごいスピードで変わりつつあり、モノを動かすだけでなく、コトや時間もサービスの中に加えていかないと、生き残ることができないのではないか。商社は無限の可能性を持っており、異業種を結びつけて新しいサービスを生むのが得意。特にわれわれは生活・消費関連が得意なので、消費者目線で変わりつつある時代や価値観にあった仕事をどんどん見つけ出し、自ら変わっていくことが大事だと思う。

 もともと商社は、メーカーのつくったものを世界で売りまくるのが使命だったので、プロダクトアウトが最適だった。しかし、今はモノがあふれ、消費者の価値観が変わっている中で、消費者側から物事を見ないと社会の変化に対応できない。

 マーケットインに最適な組織はモノ型ではない。であるならば、社会のニーズ、お客様のニーズを満足できるのに最適な組織をつくっていくことがわたしの役割となる。

 今は自動車業界の方が蓄電池やスマートシティに興味を持つようになったり、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)に代表されるIT企業がいつの間にか、いろいろな業種・分野に入ってくる時代になった。

 それを可能にするのはデジタルの力。デジタルの力で異業種が協業することが可能になったということで、今まで自分たちが守ってきた縦の業界以外のことを寄せ付けないような会社は大きくなれない。もしくは限界がくるということ。

 他の商社も同じようにいろいろ考えていると思うが、当社は早くからマーケットインの発想を大事にしようと第8カンパニーをつくり、非資源と消費者型のビジネスを強化してきた。この辺は当社の強みになっているし、資源系の商社とは今後、生きる道が分かれてくるはずだ。

伊藤忠次期社長に石井専務 チームワーク重視のラガーマン