【赤字転落から3年で再浮上】RIZAPグループ・瀬戸健の「人は変われる」経営哲学

大赤字を出した後は、社員が僕の発言よりメディアを通じた情報を受け取っていたという感じがあった。上手くいっているときはこれで正しいと思えるが、悪くなると、やることなすこと間違えて見えるので、リーダーシップを発揮できず、一時的な混乱もありました」──。こう語るのはRIZAPグループ社長の瀬戸健氏。2018年度の最終赤字から、2期ぶりに営業黒字を達成。瀬戸氏の今、そして今後に向けた思いとは──。

「やっとスタートラインに」

「コロナ禍の影響で『RIZAP』も一時期、売上高が9割減、小売店も7割休業するなど、非常に厳しい状況に向き合わなければいけなかった。ただ、だからこそできることがあった」

 こう語るのはRIZAPグループ社長の瀬戸健(たけし)氏。

 RIZAPグループは2003年創業、06年5月札幌アンビシャス市場に上場。「結果を出すダイエットジム」として注目を集めた。

 2016〜17年には50社近い企業を買収し、M&Aで急成長したが、赤字企業の買収が多く、”負ののれん”計上で利益を稼ぐ経営が行き詰まり、18年度は売上高2225億円、営業赤字94億円、194億円の最終赤字に転落。そこから2年、21年3月期は売上高1696億円、営業利益12億円とコロナ禍の中、営業黒字を達成した。

 瀬戸氏は「やっとスタートラインに立ったところ。改善点は山ほどあるが、その意味では伸びしろがある。やるべきことは明確なので、そこにシフトしていく」と語る。

 黒字化の達成は、地道な取り組みの積み重ねによるものだ。

 主力の『RIZAP』事業では、いち早くトレーナーにPCR検査を実施するなどコロナ対応を徹底した他、体力や筋力増強、健康寿命の延伸を目的とするシニア層を開拓。

 小売事業でも「お客様が妥当と思われる価格にして、在庫は早い段階で売却していった」。

 また、戸建て住宅・リフォーム事業、フリーペーパー『ぱど』、出版社「日本文芸社」、アパレル「三鈴」など、グループシナジーを見込めない事業を売却。

 一方で、カジュアルウエアの「ジーンズメイト」、ゲームソフト販売などを手掛ける「ワンダーコーポレーション」、インテリア雑貨の「HAPiNS(ハピンズ)」の3社を束ねる共同持ち株会社「REXT」を今年4月に設立。リアルだけでなく、ECなど「バーチャルで訪れるお客様に万全の対応ができるよう」オンライン店舗にも力を入れる。

 そして、「断捨離。優先順位を決め、限られた予算の中でメリハリを付け、身の丈に合ったお金の使い方をしていった」。

 その結果、20年度の販管費は前年度比116億円削減。そこからできた資金を「未来のための投資の原資」にまわしている。

 例えば、非対面化の推進。「沖縄の人が”パーソナライズ化”で自分に合った北海道のトレーナーのレッスンを受けたり、優秀で人気のあるトレーナーが30人まとめてライブセッションをしたり、顔認証で無人店舗に入店し、店舗の大型モニターを見ながらパーソナライズ化したサービスを受けられるようにするなど、オンラインならではの最適化でお客様の満足度向上につなげていく」方針だ。

「進むべき方向の意思決定をしなければいけなかったが、正直1年くらい遅れてしまった。18年からの1〜2年はM&Aの推進でいろんなカルチャーを持った幹部がいて、方向性を共有できずバラバラになってしまった」

「赤字を出した後はさらにバラバラになった。もともと統制がとれていない中で赤字を出し、方向感を失ったところがあった」

 その中で「われわれのカルチャーや方向感を出していき、合う合わないということで、正直、辞める方もたくさんいました。ただ、1〜2年経つと徐々に価値観の共有ができ、方向性も統一できてきた」と話す。

 RIZAPグループの事業は多岐にわたる。

 事業セグメントは『RIZAP』や補正用下着、美容・健康食品関連などの「ヘルスケア・美容」。エンタメ商品の小売り、リユース事業の店舗運営、インテリアやアパレルの企画開発製造などを行う「ライフスタイル」。そして、投資事業や再建を要する事業を管理する「インベストメント」の3つ。

 幅広い事業を手掛けるのには、創業者・瀬戸氏の思いが反映している。瀬戸氏は、大学生に彼女をとられた経験から日雇い労働の生活から一念発起して明治大学に入学。また大学時代のバイトで「教養がない」と言われると、苦手だった読書を克服するなど「人は変われる」という原体験を持っている。

 RIZAPグループも「提供するのは必需品ではない。でも、あることで自分の人生に意味を見出せたり、自分を好きになれたりする。そんな”自己実現”の領域を成長させていきたい。自己実現はダイエットだったり、仕事だったり、ゴルフだったり、カードゲームだったり」と多様。そこに対応するための多角化だ。

 グループシナジーの創出は”クロスセル”がわかりやすい例だが、「業績の厳しい会社をグループに入れている。ブランドや商品が支持されていない状態でRIZAPの店舗にジーンズメイトの商品を置いても『売りつけられた』となってしまう。商品開発やブランド開発にかなりの予算を付けている。まず魅力的な商品が必要であって、その順番を守らなければいけない」と商品力の強化を重視。

 急成長から再建と会社の状況は変化したが、一貫するのは「企業理念である『人は変われる』を証明すること。自分を愛せて、自分の人生に意味を持てるような商品、サービスを提供したい。だからこそ、あらゆる事業も結果にコミットしなければいけない。プロフェッショナルとして、社会の変化に対応し、お客様が求めているものを提供しなければいけない」と語る。

 この数年を振り返っての瀬戸氏の思いは「いろいろあったけれど、楽しいなと」前を向く。

 RIZAPのユニークさは、効率化を求めて事業の絞り込みを進める企業が多い中、多様な価値を提供しようとしている点といえる。これは瀬戸氏が目指す世界観の表われでもある。グループで価値観を共有し、自力で成長する企業として、RIZAPの第二の創業が進む。

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