ランドローバーの人気SUV「ディフェンダー」は、価格の幅が大きいクルマだ。最も安いグレードが551万円であるのに対し、最上級グレードは1,171万円ともはや別のクルマの観がある。価格差は走りの差として感じられるのか。新登場の最上級モデルを箱根ターンパイクで走らせてみた。

  • ランドローバー「ディフェンダー」

    人気SUV「ディフェンダー」の最上級モデルに試乗!

待望のディーゼルエンジン車が日本上陸!

ランドローバーの本格SUVモデル「ディフェンダー」は日本での発売当初、ロングホイールベースの「110」に2リッター直列4気筒ガソリンターボエンジンを搭載した「P300」モデルのみのラインアップだったが、少し遅れてショートホイールベース「90」の「P300」が追加となり、さらに「110」には、6気筒ディーゼルエンジン+48Vマイルドハイブリッドシステム(MHEV)の「D300」が登場した。待望のディーゼルエンジン搭載モデルに先日、ようやく試乗することができた。

試乗したのは、2021年モデルでは最上位グレードとなる「ディフェンダー110 X D300」だ。7人乗りの3列シート仕様(5人乗り仕様もある)で、車両本体は1,171万円というなかなかのプライスタグをつけている。

  • ランドローバー「ディフェンダー」
  • ランドローバー「ディフェンダー」
  • ランドローバー「ディフェンダー」
  • 「ディフェンダー110 X D300」のエクステリア

用意された個体は、ボディを傷から守るラッピングのサテンプロテクティブフィルム(53.8万円)、3列シート選択時に同時装着できる装備を満載したファミリーパックプラス(47.3万円)、コールドクライメートパック(10.9万円)、コンフォートコンビニエンスパック(8.1万円)などのパック類、リアリカバリーフック(6.1万円)、データプラン付きWi-Fi接続(3.6万円)など、計146.7万円相当のオプションを装備していて、総額は1,317.7万円となっていた。

  • ランドローバー「ディフェンダー」

    総額1,317.7万円の「ディフェンダー」

英国テイストあふれる車内

全長4,945mm、全幅1,995mm、全高1,970mm、ホイールベース3,020mmの大柄な4ドアボディを持つ「110 X D300」の試乗車は、ゴンドワナストーンという名前のサテンカラーにボンネットやルーフをブラックに塗ったシックな2トーンカラーを採用。フロンドア下部に最上位モデルである「DEFENDER X」のグレード名が小さく書かれているのが、控えめでおしゃれだ。

  • ランドローバー「ディフェンダー」

    最上位モデルの証となる「DEFENDER X」のロゴ

インテリアはビンテージタン/エボニーのウィンザーレザーとプレミアムテキスタイルを表皮とするシートに、同色のダッシュボード、アームコンソールなどを組み合わせる。英国車好きにはたまらない出来栄えだ。センターコンソールのウッド部分やドアパネルは、取り付けた鋲の頭の部分がむき出しになっていて、アウトドアモデルであることを主張している。

  • ランドローバー「ディフェンダー」
  • ランドローバー「ディフェンダー」
  • ランドローバー「ディフェンダー」
  • 英国車らしさあふれるインテリア

  • ランドローバー「ディフェンダー」
  • ランドローバー「ディフェンダー」
  • 高級車でありながらアウトドアモデルであることを主張する細部のこだわり

ラゲッジルームに格納する3列目シートはブラックの表皮で、引き出してみるとエマージェンシーとまではいえないけれど、さすがに小ぶりなサイズだ。それを格納して2列目シートを前いっぱいまでスライドさせると(7人乗り仕様は完全なフルフラットにはならない)、ギザギザの床面の視覚効果もあって、まるで軍用車の内部を思わせるハードで広大な荷室が出現する。こちらのルックスも、好きな人には“刺さる”はずだ。

  • ランドローバー「ディフェンダー」

    3列目シートはこんな感じ

  • ランドローバー「ディフェンダー」

    3列目を格納して2列目を前方にいっぱいまでスライドさせるとこうなる

肝心のパワートレーンは、最高出力221kW(300PS)/4,000rpm、最大トルク650Nm/1,500~2,500rpmを発生する排気量2,993ccの直列6気筒ターボディーゼルエンジンに、最高出力18kW(25PS)/10,000rpm、最大トルク55Nm/1,500rpmの電気モーターという組み合わせだ。ベルト駆動のオルタネーター/ジェネレーターモーターが減速エネルギーを回収するとともに、エンジン始動時やスタート時にパワーを補助する48VのMHEVシステムである。

  • ランドローバー「ディフェンダー」

    「110 X D300」のボンネットを開けたところ

通常であれば場所を取るはずの縦置き6気筒ディーゼルエンジンやMHEVシステムが、ボンネット内のスペースに余裕があるおかげで、意外とコンパクトに収まっているように見えるのが面白い。この6気筒ディーゼルは「レンジローバースポーツ」やマイチェン後の「ディスカバリー」も採用していて、いずれも高評価を受けているという。同社の新規開発の内燃機関としては、これが最新で最後のものになるかもしれない(ジャガー・ランドローバー・ジャパン広報による)とのことだが、どんな走りを見せてくれるのだろうか。待ちきれないので、さっそく動かしてみよう。

  • ランドローバー「ディフェンダー」

    「ディフェンダー」の最上級グレードを箱根ターンパイクで走らせた

静かで滑らか! 回せば直6の高音質が響くエンジン

まず、エンジンをスタートしても、「あれっ」と拍子抜けするほど静かだ。さすがにボンネットを開けるとディーゼルらしい音が聞こえてくるけれども、たっぷりと使用した防音材と構造により、外部への遮音性はとても高い。室内も同様で、アイドリングの透過音量は低い。ディーゼルエンジン搭載モデルであることは、タコメーターのレッドゾーンがガソリンモデルよりも低い4,500rpm~であることによってのみ確かめることができる、といっていいほどだ。

  • ランドローバー「ディフェンダー」
  • ランドローバー「ディフェンダー」
  • 「110 X D300」のメーター

走り出すと、ディーゼルエンジンが低回転域から発生する大トルクにモーターパワーの補助が相まって、2.5トン近い巨体が軽々と、しかも静かでスムーズに加速していく感覚にちょっと感動してしまう。軽くアクセルを踏んでクルマに任せたまま走り続けると、8速ATはほとんどシフトショックを伝えることなく(ここでも48Vシステムが効いているのかもしれない)ポンポンとシフトアップしていき、2,000rpm以下の領域だけで結構なスピードまで持っていってくれる。

  • ランドローバー「ディフェンダー」
  • ランドローバー「ディフェンダー」
  • 2.5トン近い巨体が軽やかに走る

タイヤは255/60R20サイズのグッドイヤー製「WRANGLER」(ラングラー)というオールテレイン(全地形タイヤ)タイプだけれども、乗り心地が良くてロードノイズが抑えられているので、まるで高級セダンに乗っているような感覚まで味わえる。

  • ランドローバー「ディフェンダー」

    255/60R20サイズのグッドイヤー製「WRANGLER」を装着

せっかく箱根ターンパイクに乗り入れたので、登りでシフトレバーを左に倒し、スポーツモードを試してみた。するとこのディーゼルエンジン、レッドゾーンまで淀みなく回って、しかも直6エンジン特有の「クォォーンッ」という快音まで聞かせてくれるではないか。これは気持ちいい!

直進性は良好だし、コーナリングではストロークが大きいはずのサスペンションなのに姿勢が崩れることなく、中速コーナーを綺麗に曲がっていく。5スプリットスポークからのぞくレッドキャリパーのブレーキはペダルコントロールがしやすく、今度はまるで背の高いスポーツカーの気分だ。当然、オフロードでの性能はいわずもがな。「110」のディーゼルは、どんな使い方にも対応できる、本当にマルチな才能を持っているクルマだと確信できた。

  • ランドローバー「ディフェンダー」

    オフロード性能も侮れない「110 X D300」。こちらのボディカラーはカルパチアングレイだ

手に入るのは来年?

ジャガー・ランドローバー・ジャパンの藤井崇史マーケティング・広報部プロダクトマネージャーに聞くと、ディフェンダーの販売状況は今、ガソリンとディーゼルが半々だという。ということは、「110」のディーゼルが売れ行きの半分を占めているということで、その人気ぶりがわかる。

ただし現在は、コロナ禍と半導体不足のWパンチにより、日本への割り当て台数が少ない状況が続いているとのことで、今すぐ注文しても納車は年明けになるそう。どのグレードを選んでも、状況はほとんど変わらないようだ。

ディフェンダーが欲しいと思っても、今はカタログをじっくり眺め、膨大なオプションから最適なものを選び、決まったらオーダーを入れてじっくりと待つほかない。ただ、納車を待つ時間がこんなに楽しいクルマは、そうあるものではないと思う。