The Floorが語る、作曲者脱退の危機を乗り越えて完成させたミニアルバム

The Floorが2021年7月7日に4thミニアルバム『CLOCK TOWN』をリリースした。2019年には作曲を主に担当していたメンバーが脱退、その後コロナ禍に突入し、ワンマンライブやツアーの延期など、様々な困難を乗り越えてきたThe Floor。今作『CLOCK TOWN』に込めた想いや、コロナ禍中のバンド活動に対する気持ちの変化について語ってもらった。

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ー2019年のギタリスト永田涼司さんの脱退、その後にコロナの流行があり、大変な状況だったと思うのですが、最近コロナ禍ではどうお過ごしでしょうか?

ササキハヤト(以下、ササキ):ギターの永田が抜けてからは荒波の連続でした。試行錯誤をしてようやく前作『nest』が出せたんですけど、今作『CLOCK TOWN』を引っさげてツアーをするタイミングでコロナの流行が始まったんです。延期を重ねて、ようやく前作のツアーにはなんとか終止符を打って、今は3人体制になってからの2、3歩目が踏み出せる状態にはなってきました。

ミヤシタヨウジ(以下、ミヤシタ):2020年3〜4月のコロナで自粛ムードになっていた時、最初は各々家で作業をしたり、曲を作っていました。でも、3人で集まらないといけないという危機感を持って、スタジオに入るようになったんです。最初はワンマンが延期になったりして落ち込んではいたんですけど、みんなで集まって曲を作ったり、ライブの準備をしていくうちに、どんどん楽しさを取り戻しました。

ーコロナ禍で活動休止や解散を選ぶバンドも多い中、The Floorがバンドを続けるモチベーションはどのような部分にありましたか?

ミヤシタ:3ピースになった時点で、3人とも目の前が真っ暗でどうしたらいいか分からなくなりました。とりあえずやってみようという感じで、3人で始めたら新しい発見もあるし、前作の『nest』を出したことが自信に繋がりました。バンドのターニングポイントはコロナより、3人になった瞬間の方が強いです。コロナでライブができなくなって悩んだけど、音楽を辞める選択肢はありませんでした。

コウタロウ:僕も3人になったタイミングが1番ターニングポイントだと思っています。永田が抜けるタイミングで、曲を作る人が抜けるわけだし、「解散かな」とも思っていたんです。3人で話していくうちに、「せっかくだし挑戦してみようよ」ってなって。曲作りに関しても、どんどんできることが増えていく感覚があったのが、1個のモチベーションになっていました。

ササキ:コロナ禍になってから音楽を続けるモチベーションはみんなすごく落ちたと思います。目先の目標も一旦白紙になってしまって、どうなっていくかも分からない。本当に曲を作る意味があるのかという問いから始まった日もあって、大変でした。そういう時に僕らの音楽を聴いてくれる人のことを考えたり、少しでも活動できるように動いてくださっているスタッフさん。そういった人たちの働きかけが1番のモチベーションでした。

コウタロウ:コロナ禍で各々曲を作っていたんですけど、全然やる気になれない時に他のメンバーがデモを上げてくると、「俺もやらなきゃ」と思って。メンバーに対するライバル心でやる気が出てくることがあったので、メンバーの存在はモチベーションになりましたね。

ー今作のアルバム『CLOCK TOWN』はいつ頃から制作されたんですか?

ミヤシタ:制作自体はずっと継続して各々が行っていました。「アルバムを作ろう」という意向で作ったより、メンバーがコツコツ作っていたものが集まったイメージですね。最初は特にコンセプトがなく、本当に僕らが聴いてほしい曲を集めたという印象が強いです。

コウタロウ:歌詞を書いて、ようやくアルバム全体の輪郭が見え始める。みんなが思っていることを照らし合わせていくと、僕とヨウジは特にコロナ禍の現状について思ったことを歌詞にするんです。コロナ禍での距離や時間というテーマが歌詞の中にいっぱい盛り込まれていました。アルバムのタイトルについて考えていて、前作のタイトルが『nest』、巣という意味なんです。「巣からどんどん成長していって、1個の大きな街になったらいい」というイメージがありました。なので、「TOWN」って言葉を使いたいと、メンバーに共有したんです。話し合っていくうちに、ヨウジが「『CLOCK TOWN』っていいんじゃない?」と言ってくれて。時間や繰り返すことのイメージに、揃った曲もすごくハマりました。

ー3人体制で活動する中で新しい工夫やライブで再現しやすいアプローチも意識しましたか?

ササキ:3人で演奏しやすい曲を作ろうと思って、作った曲はないんじゃないかな。

ミヤシタ:たしかに。ライブだと、わりとでかい音で演奏しているので、音量と熱量でカバーします(笑)。ギターのリフを弾く時はどうしてもコードのバッキングがなくなってしまうので、さみしくならないように工夫してやっています。

コウタロウ:音源は音源として1番いいアレンジで作り上げて、ライブはライブの時に演奏方法を考えています。

ー3ピースになったからこそ、逆に考えが解放された部分はありますか?

ササキ:ギターは僕が無理やりコードを弾かないことによって、2人のプレイがすごく際立って聴こえました。4人時代はバッキングを弾いて、音を埋めることばかりを考えていたんです。どうしても音を詰め込んでしまう節があるので、そういった考えが少し取っ払われました。

ーアルバムを制作する際に影響を受けた音楽はありましたか?

ミヤシタ:僕は制作の時期にthe band apartをめっちゃ聴いてました。

ササキ:僕は特定のものを聴いてはいなかったです。前作『nest』もそうなんですけど、特定の曲を参考に作ろうと思うことがあまりなくて。車に乗っていて、なんとなく口ずさんだメロディにギターのリフを乗せてみて、2人にデモを投げる方法で制作をしています。

ミヤシタ:今作はその分、ハヤトの作った曲からすごくハヤトらしさを感じるんです。誰々っぽいというより、「ハヤトっぽいね」となることはいいことだなと思います。

コウタロウ:僕は今作でアルバムのミックスに挑戦してみたんです。その時はCOINという海外のアーティストの音源を聴いていたんですけど、ミックスがかっこよくて。参考にしようと思ったんですけど、難しすぎて全然できなくてへこんでました。歌声がすごく近くに聴こえるし、個々の楽器の音もパキッと出ているのに、ちゃんと音源に奥行きもあって。どうやっているのか、まじで分からなかったです。

ミヤシタ:聴いて、へこんで、ミックスしての繰り返しだったよね。海外の音楽は同時に鳴っている音が少ない印象があって。

コウタロウ:そうなんだよね。俺たちが作った音源は音を飽和させたかったタイミングもあって、音数が多くなったりしたんです。

ミヤシタ:「とりあえず歪ませろ」みたいな(笑)。

ー海外では音数を減らした楽曲が増えてきていますが、今作『CLOCK TOWN』はギターの音を何本か重ねていますよね。

ミヤシタ:かなり時代と逆行する感じになってしまいました。でも、うるさいのが好きだったんです。

ササキ:ちょうど俺たちが、音を重ねたいマインドでした。

ーササキさんはもともと自分の感情や実体験を歌詞にするタイプなんですか?

ササキ:人や事象に対して、思ったことを歌詞にすることが多いですね。ヨウジとコウタロウは現状のことを歌詞にするんですけど、今回の僕は人に対して思ったことが色濃く歌詞に出たなと思ってます。

ー2曲目「Talking is Hard」も、人との関わりについて思ったことを書かれたんですか?

ササキ:コロナで暇になって、暇になった人間って結局SNSを見るじゃないですか。Twitterでみんなのリツイートで回ってきたバズツイートが目についてしまって、リプ欄まで見ちゃうんです。そのリプ欄が本当に治外法権みたいな状態で、ネットの地獄なんですよ(笑)。めちゃめちゃ嫌いだけど、見ちゃうんですよね。

ミヤシタ:SNSに向いてないよね(笑)。今回のハヤトの作詞は今までより素直ですね。かなりストレートな言い回しが多くて、より伝わりやすくなりました。

ササキ:「Talking is Hard」はクソリプに対して、「なんでお前はこんなことを言ってしまうんだ」という思いが始まりでした。でも、冷静になって自分に置き換えてみたら、自分の感情が高ぶって「君のことを思って言っているんだよ」と言ってしまうことも、その人にとってむしろ邪魔な場合がすごく多いなと思ったんです。口をついて出てしまう言葉の愚かさや難しさについて、歌詞にしたくて書いた曲です。

ーササキさんの作詞曲だと5曲目の「雨中」はいかがでしょう?

ササキ:ほぼ実体験そのままなんです。恥ずかしいので、聴いている人には僕を思い浮かべてほしくないんですけど(笑)。自分がもう一緒にいれなくなった人と過ごした日々を思い返して、印象に残っている風景がAメロになっていて。それ以外のところは「なんでこんなことをしてしまったのか」、「もっとこうしていればよかったのにな」という想いをそのまま書いた歌詞です。例えば、別れた女性のことを忘れるのはどうか? という問題があって。完全に忘れてしまった方がいい派と過去があるから自分という人間がいる派の人間がいて。

ミヤシタ:パソコンに置き換えて考えると、上書き保存か、名前をつけて保存みたいな感じだよね。

ササキ:そうそう。僕は名前をつけてガチ保存して、フォルダにめちゃめちゃ分けているタイプで、しっかりバックアップをとっているので(笑)。だからこそ、忘れたくないし、忘れられないので、歌詞にしたんです。今まで変に言葉を繕ってしまうタイプの人間だったので、「伝えたいことが伝わってないのでは?」と自分で思ったんです。どういう言葉が伝わるのかなと思って、いろいろな音楽を聴いていた時に、結局ストレートな言葉が1番だと気づいた。曲で何が言いたいのか、しっかり伝わる歌詞にすることが、今回のテーマの1つになっています。だから、「雨中」も一聴していただければ失恋の曲と分かるぐらい、素直に自分のことを書きたかった。「僕はこういうことを思いましたよ、あなたはどうですか?」という投げかけでありたい。その上で聴いてくれた人は曲のどこかに自分を投影して、1つの物語として聴いてほしいと思っています。

ー7曲目「24」は駅の名前なんですか?

ササキ:札幌に地下鉄南北線があって、僕の地元の近くに北24条という駅があるんです。この曲はコロナになってから歌詞を書きました。その時、ちょうどコロナが若干落ち着いていた時で。東京に出ていた友だちが仕事で一旦札幌に戻ってきていて、「飲みに行こうぜ」という連絡があったので、北24条駅の焼き鳥屋で2人で飲みました。高校からの友だちに会って、2人で飲むこと自体がコロナ禍でほぼなかったので、友達が帰るってなった時にすごくさみしくなって。今までは僕らもライブで東京に行ったり、友だちも度々帰ってきていたので何ヶ月に一度は会えていた。でも、コロナの状況だったら、本当にいつ会えるか分からないので喪失感に襲われちゃって。それをそのまま歌詞にしたのが「24」です。地元では北24条駅を略して「24」(ニーヨン)って言うんです。大切な人とまた会えるように願った1曲を書きたかった。

ー他の収録曲は同じ方が作詞作曲を手がけていると思うんですけど、「24」については作曲がミヤシタさんということで、どうして2人で分担することになったんですか?

ミヤシタ:暗黙の了解で作曲者が作詞者を決める決定権を持っているんです。「自分で作った曲は、イメージがあるから書くわ」って感じにいつもなるんですけど、「24」に関しては全く歌詞のイメージが湧かなくて。曲の特徴でもある2ビートも、今までやったことないんです。そういう意味でおもしろくていいメロディが書けたと思ったので、一旦ハヤトに書いてもらおうと単純に思いました。そしたら、ハヤトのまっすぐな詞が乗ったので、エモい感じの曲になりましたね。個人的にはみんなに聴かせたら、これウケるだろうなって感じもあったんです。最初、2ビートでドラムのリズムが急に入ってくるから、笑ってもらえるかなって、作曲ギャグでしたね(笑)。でも、自分で弾き語りをして曲を作ったんですけど、気持ちいいメロディだなとは感じていました。

ーササキさんは作詞を任されて、地元の駅をテーマにすることはすぐに思いついたんですか?

ササキ:僕は歌詞を書くのに時間がかかるんですよ。曲をもらった時は全然思いついてなくて。でも、曲のイメージ的にエモーショナルなものを書こうとは思っていたんですよね。その中で友だちと久しぶりに会えたイベントがあったので、「これだ!」と思って、そのまま当てはめました。

ーミヤシタさんの作詞作曲だと、まず4曲目「Faraway」があって。歌詞の中でもコロナ禍での分断、人との距離感を感じました。

ミヤシタ:まさにその通りで、2020年って時間やフィジカル、メンタル的な距離ができた1年だったと思うんです。僕らもワンマンが再延期になったり、届きそうで届かないことが多くて。でも、最終的にはまた旅に出て、ライブに来てくれる人たちと笑い合いたいい気持ちを歌詞に込めました。ライブの情景をイメージして作った曲ではありますね。

ーコウタロウさんが作詞作曲した3曲目「Coffee Cup City」はどのような想いで作られた楽曲なんですか?

コウタロウ:コロナ禍で世の中が何回も同じことを繰り返していて。自分がどれだけ抗おうとしても、結局はその流れの中に自分が組み込まれていることに気づいたんです。それを比喩表現で言葉にしたいなと思った時に、遊園地のコーヒーカップが浮かんで。自分の力で回すけど、結局はその遊具の中でしか動けない状態が、今の自分の状態に似ているなと思いました。歌詞には出してないのですが、タイトルに持ってきた形です。せめて歌詞の中だけは望んだ世界に行けるようになれたらいいなという望みを込めて、最終的に抜け出すという想いを込めました。

ー6曲目「slow motion」も作詞がコウタロウさんですよね。

コウタロウ:最初、ヨウジがデモを持ってきたんです。コロナ禍でライブもできない状態で、バンドで何かしらアクションを起こしたいなと思って、「見放題」のコンピレーションアルバムに入れました。レコーディングもしづらい状態だったので、「打ち込みで作れる曲にしよう」と作った曲です。コロナにぶち当たっていた時に、それでもバンドはちょっとずつでもいいから歩みを止めずに進めたらいいなと思って、タイトルは「slow motion」にして歌詞を書きました。自分に対する応援歌でもあります。

ー「slow motion」のベースはシンセベースの音ですよね。生の音ではないので驚きました。

ミヤシタ:ベースは打ち込みですね。ライブでは弾いているんですけど曲が良くなるのであれば、デジタルなシンセベースに任せることが結構あります。

コウタロウ:ドラムも生音ではあるんですけど、生音をサンプリングして、打ち込みでビートを組んだ曲なんです。打ち込みの方が「slow motion」の雰囲気にあったビートになると思いました。「ギターは弾いた方がいいよね」とメンバー間で話していたので、生音です。

ー8曲目「Night Walker」も作詞作曲がコウタロウさんですよね。

コウタロウ:コロナ禍で自分の部屋にこもる機会が増えて、眠くなるまでずっと起きて作業をしていたんです。夜中にずっとポツポツ作業をしている状態で書いた歌詞なので、「Night Walker」というタイトルになったんです。自分の作詞曲なんですけど、ミックスしているタイミングですごく自分に刺さりました(笑)。ハヤトが歌うのもあるんですけど、グッと来たんですよね。個人的にすごく好きです。自分が歌詞を書く時に意識しているのが、ある程度聴く側に解釈の余地をもたせたい。自分を前面に出しすぎないようにしているんです。歌うハヤトの解釈があってもいいし、この曲を聴いて、その人なりの解釈をしてもらえれば、それはそれで1つの正解だと思います。その人にとって、大切な曲になってくれたらいいなということを意識しています。

ー3人体制でツアーを回ったり、前作に続いて今作『CLOCK TOWN』を3人で制作された中で、バンドとして変わったことはありますか?

ササキ:コロナによってライブができなくなって、音楽を届けることが難しくなってしまったことが1番変わったことですね。だから、自分たちの音楽をより伝えたい気持ちになった変化は感じています。いろいろな想いをずっと溜め込んでいたけど、それを押し付けるのではなく共有して、ライブに来てくれる方と一緒に空間を作りたいです。

ー現在ツアー「How Are U ?」の札幌公演を終えたばかり(取材当時)ですが、ツアーをやってみていかがでしたか?

コウタロウ:足りないものを愛せるようになった感覚があります。完璧なものより、何か欠けているものの方がおもしろいんです。我々も4人だったのが3人になって、言い方を選ばなければ、足りない状態になった。そこから悩んで、完璧な状態に持っていこうとはしていたんですけど、CDを2枚出して、自分たちが持っている武器になる部分をどんどん尖らせていけたらいいなと思いました。

ミヤシタ:お客さんの顔を久しぶりに見られて、エネルギーももらえて楽しかったです。でも、反省するべきところも多くて。もっとバンドを良くするためにも、がっつりミーティングをしました。今後がすごく楽しみです。

The Floor

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