アイドルからレスラーへ…中野たむ&上谷沙弥が語る「美しさではない、プロレスの凄み」

女子プロレス団体・スターダムに所属する中野たむと上谷沙弥。ともに元アイドルであり、師弟関係にある2人は、7月4日に横浜武道館で白いベルトことワンダー・オブ・スターダム王座をかけて激突。師・中野たむが愛弟子・上谷沙弥を破り、2度目の防衛に成功した。そして、7月31日からシングルリーグ戦「5 STAR GP 2021」が横浜武道館で開幕。そこで2人の公式戦が再び実現する。公式戦前に2人に緊急インタビュー。それぞれの本音に迫った。(前後編の前編)

【写真】“宇宙一カワイイアイドルレスラー”中野たむ、“元バイトAKB”上谷沙弥

3月3日に女子プロレス団体・スターダムが日本武道館大会を開催するときに注目選手のインタビューを基にした記事を書かせていただいた。そのときに今回の主役である中野たむと上谷沙弥の2人人もピックアップしているのだが、別々の試合に参加するため、2人の関係性については触れずにいた。

中野たむは「元・地下アイドル」である。そして上谷沙弥は「元・バイトAKB」という経歴を持つ。かつて中野たむがプロレスとアイドルを融合させたプロジェクトを立ち上げた際、上谷は「どうしてもアイドル活動を続けたくて」参加した。当時の上谷にとって、アイドル・中野たむは「雲の上の存在」だった、という。

「もうすべてにおいて圧倒的でした。パフォーマンスもそうだし、売店での物販列もいつまでも途絶えない。絶対に追いつくことなんてできない存在だと思っていました」

筆者はアイドルの取材を長く続けてきたので上谷の一言には重みしか感じない。物販での行列の長さは人気度をダイレクトに表すバロメーター。本人だけでなく、観客にまでリアルな人気がひと目でわかってしまうある種、残酷なシステムだ。

「すごく特別な存在なんですよ、上谷は。プロレスの世界に引き入れてしまった責任というものも私は感じているし、プロレスラーとしてスターになってほしい、とも心から思っています。ただ、私の目からはまだ『本当のプロレスラー』になれていないんじゃないか、と映る部分があるんですよね。たとえば日本武道館での試合。上谷はすごくビクついていたんですよ。あっ、いろいろ怖いんだろうな、と。大観衆に注目されることが怖い。ひょっとしたら自分が勝ってしまってベルトを巻くことすら怖がっているのかもしれない。対戦相手じゃなくて、まず自分に負けちゃっているんじゃないかなって」

日本武道館での髪切りマッチに勝利して手に入れた白いベルト(ワンダー・オブ・スターダム選手権)はいまだ中野たむの腰に巻かれている。その王座を奪取することでアイドル時代には「雲の上の存在」だった恩師を超えてみせる、と上谷は誓ったのだ。

「プロレスラーになっても、たむさんは私にとって『超人』でした。実力、キャリア、経験値……どれをとっても敵わない。場数が違いすぎました。でも、2年弱ですけど、私もキャリアを重ねてきたし、トーナメントに優勝したりして経験値も積んできた。早急にたむさんに追いつきたいし、ここで止まっているわけにはいかない」

「たしかに上谷の動きや飛び技はすごいですよ。でも、試合中に技を綺麗に決めようという部分に気持ちが向きすぎちゃっているんじゃないかな? 技の綺麗さ、正確さを競うんだったら、別にプロレスじゃなくてもいいじゃんって私は思うんですよ。別に上谷のような動きや飛び技をできないから僻んでいるわけじゃないですよ(笑)。動きの美しさを見たかったらシルク・ド・ソレイユとかに行けばいい。プロレスはなにが違うかって『感情』ですよ。人と人の心の葛藤、人と人とが魂を、そして命を燃やして闘うところ。それが私の考えるプロレスの魅力。それが技に乗っかることで見え方は全然、違ってくる。

(後編へ続く)

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