「プロレスには人生を変える力がある」元アイドル、師弟2人が顔面ビンタで紡ぐ執念のドラマ

「私の顔面、変形してませんか?」7月4日、女子プロレス団体スターダムの横浜武道館、愛弟子・上谷沙弥との試合を終えてバックステージに戻ってきた中野たむはそう言って笑った。共に“元アイドル”の2人がこの日のリング上で見せたのは、感情むき出し、師弟関係を超えた顔面ビンタの応酬だった。7月31日に横浜武道館で開幕するシングルリーグ戦「5 STAR GP 2021」では再び2人の公式戦が用意されている。対戦を前に2人に緊急インタビュー。それぞれの本音に迫った。(前後編の後編)

【前編はこちら】スターダム・中野たむが後輩上谷沙弥へ愛の喝!「プロレスは技の綺麗さだけじゃなく“感情”と“命”」

【写真】“宇宙一カワイイアイドルレスラー”中野たむ、“元バイトAKB”上谷沙弥

7月4日、横浜武道館。初夏を彩るビッグマッチのセミファイナルで組まれた中野たむvs上谷沙弥のワンダー・オブ・スターダム選手権。元アイドル同士、しかも師弟関係にある2人のタイトルマッチ。そこはもう清く正しく美しい闘いが大正義なのかもしれないが、中野たむは上谷が痛めているアバラのあたりを徹底的に攻め続けた。上谷の動きが完全に止まってしまうほど、激しく、ねちっこく。それはすべて上谷の感情を引き出すための戦略であった。

「私の顔面、変形してませんか?」

「ただ、私もここで負けるわけにはいかないんですよ。このベルトを巻いて、まだまだやりたいことがたくさんあるので。上谷に私を超えさせるわけにはいかなかった。別に私が上谷の新境地を引き出したわけじゃないと思います。ああやって感情的になって向かってきて、私を圧倒してみせたのも、もともと彼女が持っていたものだし、まだまだ奥底にはいろんなものが隠れていると思う。そういうものが開眼したら、きっと私を追い越すときがやってくる。まだまだ私たちの『執念のドラマ』は終わりませんよ」

「私はいま進んでいる道は間違っていない、と確信している。あそこで握手をしてしまったら、それを否定することになるじゃないですか? 私が決めた道が正しいと証明するには、たむさんから白いベルトを奪って、もっともっと先に進むしかないんですよ。もう師匠と弟子みたいな関係性じゃなくて、次は1人のプロレスラーとして闘って勝ちたい!」

 

あのままアイドルを続けていたら、上谷沙弥は「絶対的センター」の中野たむを一生、追い抜くことができなかった。それが闘いの場をリングに移したことで、あと一歩で追い抜けそうなところまで到達することができた。壮大な大河ドラマ。中野たむは「プロレスには人生を変える不思議な力がある」と語り、上谷沙弥も「あの試合では技も感情も私の『内から出るすべて』を見せられた。新たな自分だと思うし、こういう上谷沙弥もいるんだ、とみなさんにも知ってほしい」と振り返った。そう、上谷沙弥の人生はもう変わりかけている。

 

普通であれば再戦にはそれなりの時間がかかるものだが、意外な展開が待っていた。

 

7月31日と8月1日の横浜武道館2連戦で幕を開ける、真夏のシングル最強女王決定戦『5★STAR GP』(ファイブスター・グランプリ)。ふたつのブロックに分かれてリーグ戦を繰り広げるのだが、中野たむと上谷沙弥は同じブルースターズにエントリーされた。2人の公式戦が組まれたのは8月8日(日)エディオンアリーナ大阪第2競技場。東京でオリンピックの閉会式が行なわれるその日、大阪で新しい運命が幕を開けるかもしれない闘いのゴングが打ち鳴らされる。